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コロナがもたらした「問を立てる」というグレートリセット

こんにちは。Gotoキャンペーン、沸きに沸いてますね。

ことの一部始終を見ていて感じているのは「なぜやるの?」の説明が足りないなーという点。

「なぜやるのか?」がわかれば行く判断も付きやすいし、地元の観光産業、交通インフラなどめちゃくちゃ貢献したいし、そもそも旅行したいと思ってます。ですが、行ったら背後から石投げられない?地元住民の人優しくしてくる?と思っちゃうんですよね。

そうしているうちにGotoキャンペーンへの批判をかわすためあれこれ条件が付き、処理を加えていったらもうわけわからない作品に仕上がりました。

「なぜこのキャンペーンはあるべきなのか?」生活者は問いを立ててるのに説明不明のままだから、余計に「ノイズを修正してできたキャンペーン」にしか見えなくなってきた感じです。本来はみんなが楽しみにしていたキャンペーンなんですけどね。

|人々に芽生えた「問いを立てる」意識

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ただこうした「なぜ」を問う意識が国民に起こるのは当然かなと思います。国への不満とか、金融緩和のツケは誰が払うの?とかそういうことではありません。

それは「不要不急」を徹底的に叩き込まれた結果、生活者は今あらゆるモノコトの存在意義を問いただす意識が生まれている、と思っているからです

マスクしてる世界に化粧する意味は?
ズーム会議、下を履く必要は?
出かけない今、ファッションって?
外食しないとこんなにもお金が余るの?

それは社会に必要か?未来にあるべきモノなのか?在宅期間中に不要不急の問答修行を余儀なくされ、一億総WHY時代に突入したのではないかと思うくらい全国民が「なぜ」を原体験。

人々の興味はモノから離れ、当たり前のようにしていた消費に「意味を求める」考えてもみなかったパラダイムシフトが同時多発的に起きました。

そして人々の意識はアップデートされたことで、企業は一つの任務を授かりました。「なぜ私(企業)はこれを届けたいのか」という説明を用意することです。

そうとも気づかずこれまで通りのお作法では説明にならず人々を説得できません。もし「問いを立てる意識」に答えられなかったら上からタライが落ちてきます。

その第一号が見事Gotoキャンペーンという作品でした。

|コロナ危機がもたらすグレートリセット

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さらに生活者に起きた「問いを立てる意識」は今、資本主義経済そのものにまで及んでいます。

経済合理性で考えられるスケールメリット、四半期決算経営の短期的利益主義、はたまた株主ファーストといった経営の当たり前だったことが「なぜ我々はいつの時代の思考を今もまだ続けてるんだ?」という話に発展しているのです。

2020年06月03日、コロナ禍において決まった「経済社会秩序の幅広い根本的な変革」を意味する2021年のダボス会議のテーマ「グレートリセット」はそう思わざるを得ない気迫を感じました。

これまでの常識だった経営概念に問いを立てるこの圧倒的推進力には、一瞬「ほんとに?」とたじろいでしまいます。

ただこの株主ファーストが変革されるという発想は、実はそんなに驚くことではないかもしれません。

遡ること2019年8月19日、アメリカで「株主至上主義から大きく舵取りを変える」取り組みが始ました。その内容がこちら

1:「株主至上主義」から大きく舵取りを変える
2:すべてのアメリカ人に貢献する経済を目指す
3:大株主優先の原則を改め企業の目的を再定義する
4:投資家、従業員、取引先、地域社会、顧客等の利害関係者に貢献する

経済合理性の根幹となる資本主義経済、その象徴として株主はいます。なぜこんなことを行ったのか?米国の株主至上主義の路線変更の背景にあるのはなんでしょうか?

・四半期決算の業績を釣り上げる経営が短期的利益主義に結び付く
・リーマンショックのような世界的経済破綻を招く
・米国内の深刻な貧富の格差が社会不安を呼ぶ
・価値観が変容し資本主義が若者に夢を与えられていない

この大いなる資本主義経済の変革に対して「Apple」「Amazon」「JPモルガン・チェース」「ジョンソン・アンド・ジョンソン」など米国を代表する企業181社のCEOが署名しています。

「21世紀に入り資本の増殖、GDPの成長を旗印にしてきた資本主義が低成長を余儀なくされているのは、経済が物質から離れ始めたからだ」という見解もあるように、資本主義の成功体験はすでにリセットされなければ行けなかったと気づかれます。

また「ダボス会議」を開催する世界経済フォーラム(WEF)の創設者クラウス・シュワブ会長はこの状況をこう捉えています。「多くの人が誤解しているが、企業は短期ではなく、長期的な利益を追い求めるべき存在だ。長期の成長は幅広い利害関係者すべてに恩恵をもたらすのだから、株主重視と矛盾はしない」。

その根底にあるのは、人々がモノそのものよりも、モノがもたらす豊かさ未来、セレンディピティ、そしてビジョンなど非物質的要素に関心を向ける、まさに生活者がモノの意味に「問いを立てる」という流れです。どうにもこれまで仕掛けていたマーケティングは変わって当たり前です。

署名を結んだこれらの企業はこの社会経済システムの転機に問いを立てる「グレートリセット」の必要性を早くから感じていたということになります。

そして既にそのリセットは始まっています。例えばESG(環境・社会・統治)を重視する投資が個人にも広がっているという見方が増えています。

環境(E)、社会(S)、企業統治(G)の取り組みを踏まえながら持続的に成長できる企業へ投資しようとの考えが、新型コロナウイルスを機に高まっている。(日経

またオランダの大手ファッションEC「Zalando」が「2023年からサステイナブルなブランドしか販売しない」と宣言しました。

かなりグレートですが、これはもう自社だけでなく、利益関係者に対しても求められる原理原則になり、ステークスホルダーはその変化を受け入れなければいけない社会だということです。

このような目に見えない価値を重要視する動きは、モノをモノとして売って利益を得るという視野だけでは到底たどり着きません。「ESG?それって売れるの?」と言ってる場合ではないということです。

|あらゆることに問が立つ今、ビジョンはより不可欠になる**

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このような社会経済システムが考え直される中で、今後変革を目指すにはどのようなことがポイントなのでしょうか?大きく3つあると考えます。

一つ目として、グレートリセットに向かうためにはニューノーマルを受け入れていく必要が高いと思います。

二つ目は、「問を立てる」生活者に「なぜ私(企業)はこれを届けたいのか」実現したい社会を具体的に説明し、徹底的に価値にこだわろうという覚悟が透けて見えるビジョンセットではないでしょうか。

三つ目は、その価値観に関わりを持ちたいと思うヒトたちを集める関係人口の集団構築、そしてその集団を自社でマス代わりに繋がり続ける自社マスの構築を始めてゆくことだと思っています。

ただニューノーマルとは新しいなにかに切り替えるAからBへという二元論的な発想ではありません。

機械を回しながら頭を回し、モノを持たない時代にモノに価値をセットする。資本主義を抑えながら、人生において価値が高いという生涯主義に変えてゆく。これまでとこれからを並行しながら変化を受け入れ新しい耐性構築する行為自体が「ニューノーマル」だと思います。

そしてビジョンはその根幹を担います。Appleの創始者スティーブ・ジョブスはビジョンの必要性をこのように伝えています

ミッションステートメントなど捨ててしまおう。時間の無駄だ。その代わり、ビジョンを用意しよう。そのほうが、みんな、やる気になる。
ビジョンとは、提供する製品やサービスで可能となるよりよい世界のイメージだ。魅力的なビジョンは投資家、社員、顧客に刺激を与えるだけでなく、そのような関係者をエバンジェリストに変えてくれる。魅力的なビジョンには、共通する3つの特徴がある。具体的、完結、徹底的だ。(スティーブ・ジョブズ 驚異のイノベーション

正直今、今後経済合理性を疑い、四半期ごとの短期利益主義からのグレートリセットに署名を起こす人がどれだけ周りにいるかわかりません。

それでも平成の間にモノは当然品質になり、その分地球は荒んでいき、国内に目を向ければヒトはぐんぐんと減っている。もはやスケールは臨界点が近く、むしろ持続可能な生涯消費にしてもらう考えに移行をすべきときになっています。

それには一定のリスクを選択する必要があります。そして自分や組織をなじませて共犯者をつくってゆく時間が必要です。この選択に取り組むことで様々なリセットが漸次的におこり、グレートリセットにたどり着くのだと思います。

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patagonia

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BLUE BOTTLE COFFEE

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GAFAMはもちろんですが、西友に関してはビジョンそのものがコミュニケーションメッセージにもなっていて、生活者におなじみです。(AdobeはビジョンではなくAdobe Summit 2017での「変革への移行」についての発言です)







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SDGsへの向き合い方

ビジョンコミュニケーション。元新聞配達員。元舞台役者。元コピーライター。C1グランプリ優秀賞。宣伝会議講師。キャンプ好き。2M(メディア)なPRプランより生活者目線で理念を打ち出すブランディングを実施。三茶散歩コミュニティマネージャー。好きな言葉は「和して同ぜず」