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雨音を聴きながら

昨夜から今朝は雨がかなり降りましたが、
予報のような暴風雨にはならずに、
朝の通勤時間帯には、雨は止みました。

「大変にならずに済んで よかったね。」
皆、うんうん頷きます。

こざる達は、いつものように 賑やかにお喋りしながら、
朝ごはんの仕度をしています。

「それでも夜中は結構降っていたよね。」
「そうなんだー、ぼく、ぐっすり寝ていて、ちっとも気がつかなかったよ。」
そう一人が言って、皆で笑います。

「ぼくは、夜中に少しウトウトしていて、
夢なのか、現実なのか、ちょっと混同しちゃって….。
ちょうど、今、読んでいる本の情景が頭の中に記憶されているからなんだと思うんだ。」
そう、こざるちゃんは言うと、一冊の本を持ってきました。

「これなんだ。」
「どれどれ。」
「梨木香歩さんの『家守綺譚』って言うんだ。」
皆、覗きます。

「ちょっと読むね。」
そう、言って、こざるちゃんが一節を読みます。

「(略)やがて次第に風雨は収まり、それと同時にまたキイキイという音が戻ってきた。
硝子戸からとばかり思っていたが、気づくと床の間の掛け軸の方から聞こえてくる。(略)
布団から頭だけそろりと出して、床の間を見ると、掛け軸の中のサギが慌てて脇へ逃げ出す様子、
いつの間にか掛け軸の中の風景は雨、その向こうからボートが一艘近づいてくる。
漕ぎ手はまだ若い…..高堂であった。近づいてきた。」

「えっ? 掛け軸の中から出てきたの?」
「オバケ?」
「違うんだ、うんとオバケなのかもしれないんだけど、ちっとも怖くないんだ。
ちょっと幻想的なんだよ。」

高堂は、主人公の友人で、既に亡くなっていますが、
こうして、たまに掛け軸の中から会いにやって来るのです。

「なに、雨に紛れて漕いできたのだ。」
こざるちゃんが、ちょっとすまして読みます。

「へー、なんだか洒落ているね。」
皆、うんうん頷きます。

「確かに雨音を聴いていると、ちょっと異空間とつながるような
そんな気がすることがあるよね。」
そうですね、特に夜だと いっそう強くそう感じる気がします。

「そういえば、トトロだって、雨の夜のバス停で出会ったよ!」
皆、うんうん頷きます。

「雨もそうだけど、水は異空間の入り口だよね、きっと。」
「水? 海とか、川とか?」
「境界線みたいなものかな?」
「そうかもしれないね。亡くなると、川を渡っていくんだよね。」
そう言われていますね。

「『千と千尋の神隠し』も、大海原に囲まれているし、
ハクは川の神様だよ。」
「ディズニーランドも、違うテーマのエリアとの境目には、
滝がある場所もあって、水の音が聞こえるようになっているよね。」

皆、なるほどー、と、うんうん頷きます。

朝ごはんの仕度が出来たようです。

「りこちゃん、呼んでくるねー。」
こざるちゃんが鼻歌を歌いながら、りこちゃんの部屋へ向かいます。

「りこちゃーん、朝ごはん、出来たよ。
今日は、ふわふわの玉子焼き作ったよ! 皆で 一緒に食べよう!」

こざるカフェは、今日も ゆっくり始まって
のんびり 穏やかに時間が流れていきます。

読んで下さって、どうもありがとうございます。
止まない雨はない、そう言いますよね。
よい毎日でありますように (^_^)



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