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横綱のノーサイド

 今日の おやつの時間、
こざるちゃんは、りこちゃんと 横綱 稀勢の里の引退会見を見ました。

 りこちゃんと同じ世代の人たちは、相撲が好きな人が多いのです。
昔は、今のように様々な娯楽がなかったので、
ほとんどの人は 相撲と野球が好きです。

「玉子焼きも好きなんだよ。」
こざるちゃんは「巨人、大鵬、玉子焼き」という言葉を知っています。

 昨日も、りこちゃんと こざる達はみんなでテレビの前で
稀勢の里を応援しました。
でも、負けてしまいました。
その後、みんな、しょんぼりしてしまいましたが、
ちゃんと最後まで静かに 稀勢の里を見ていました。

 引退会見を見ながら、こざるちゃんは りこちゃんに 言います。
「稀勢の里は、かっこいいね。」
「うん、かっこいいわね。」
稀勢の里は、静かに しっかりと まっすぐに 話をしています。

「とっても やさしい人のような感じがするよ。」
「そうね、お相撲さんは、気は優しくて力持ちなんだよ。」
「だから人気があるんだね。」

「引退して、今度は若いお相撲さんを育てるんだね。」
「そうだね。」
「また ひとつひとつ、頑張っていくんだね。」
「うん。ひとつ、ひとつだね。」

 この《ひとつ、ひとつ、頑張っていく》という言葉は、
年とって、いろいろとできないことが増えてきた りこちゃんと、
こざる達の おまじないのような言葉です。

 よく できないことを数えるのではなく、
できることに注目すると言いますが、
ひとつずつ、ゆっくりゆっくり 焦らずにやっていけば、
いつの間にか またできるようになっていたりするのです。
一歩一歩進めば、いつの間にか 随分と進んでいるものなのです。

 会見が終わって、りこちゃんは 少し眠そうです。
こざるちゃんは、膝掛けを りこちゃんにかけて、テレビを消します。

 窓の外を見ると、だんだんと雲が広がってきていて、
「あれ? 雨が降るのかな?」

 こざるちゃんは、ラジオをつけます。
りこちゃんは、賑やかなのが好きなので、夜、寝る時は別ですが、
昼間はシーンとしているよりも、ラジオの音や、
生活の音が聞こえている方がいいのです。

 ラジオからは、静かに曲が流れてきます。
松任谷由実の『ノーサイド』です。

 西の空の雲が 少しオレンジ色に染まっているのが 見えます。
「曇っていても、いつだって夕焼けはあって、
あの雲の向こうにお日さまがいるんだ。」
こざるちゃんは、うんうんと頷いています。

また今日も、みんなで相撲を見ようと こざるちゃんは思いました。

読んで下さって、どうもありがとうございます。
出世にとても時間がかかった横綱でしたから、
きっと素晴らしい指導者になることと思います。
よい毎日でありますように (^_^)


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