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【不定期更新!】文芸コンテストニュース2024/7/26版


文学賞発表情報

毎月第2・第4金曜更新「文芸公募ニュース」の7.26分更新です。
全国的に猛暑、酷暑が続いています。皆さん、暑中お見舞い申し上げます。
暑い日はエアコンを効かせて文芸三昧ですね。応募先の目安として、下記のようなリストも用意してあります。ぜひ、ご活用ください。

第15回創元SF短編賞

応募総数521編。飛浩隆先、宮澤伊織の両選考委員に、東京創元社・小浜徹也氏を加えて最終選考をした結果、下記のように決まった。

受賞作
「廃番の涙」稲田一声

受賞作story 

誰もが脳の一部を機械化し、自己増殖型ナノマシンによって身体を管理し健やかに生きている時代。新たな身嗜みとして、人工の感情を身に纏うコスメティック〈オーデモシオン〉が普及していた。
 新人感情調合師のミナモト・コズは、かつて一世を風靡した感情調合師のセクワ・ジュンに憧れ、セクワの立ち上げた化粧品メーカーに入社するが……。

(東京創元社ホームページより)

第7回田畑実戯曲賞

応募総数71編。その中から以下のように入選作品が決まった。

入選作
『G線上のいもうと。』堤千尋

受賞者は、なんと17歳の高校生。これには選考委員もびっくりだったとか。若い世代の台頭、喜ばしいですね。

koubo文学研究室

学生に向けた菊池寛と芥川龍之介の助言

 夏休み真っ盛りということで、若い人に向けた文豪の名言を紹介しよう。
まずは、文藝春秋を創業し、芥川賞・直木賞を創設した文豪、菊地寛から。

僕は先ず、「二十五歳未満の者、小説を書くべからず」という規則を拵こしらえたい。全く、十七、十八乃至ないし二十歳で、小説を書いたって、しようがないと思う。
 とにかく、小説を書くには、文章だとか、技巧だとか、そんなものよりも、ある程度に、生活を知るということと、ある程度に、人生に対する考え、いわゆる人生観というべきものを、きちんと持つということが必要である。
 とにかく、どんなものでも、自分自身、独特の哲学といったものを持つことが必要だと思う。それが出来るまでは、小説を書いたって、ただの遊戯に過ぎないと思う。

(菊池寛「小説家たらんとする青年に与う」)

 これは本気でプロを目指す人の話。趣味派なら、〈尤も、遊戯として、文芸に親しむ人や、或は又、趣味として、これを愛する人達は、よし十七八で小説を書こうが、二十歳で創作をしようが、それはその人の勝手である。〉そうだ。
 しかし、文芸家たらんとするなら、〈つぶさに人生の辛酸を嘗ななめることが大切である。〉と記している。

 戦国武将の山中鹿之介は「願わくは我に艱難辛苦を与えたまえ」と言った。若いときの苦労は買ってでもしろとも言う。
 でも、一つだけ補足しよう。
 これは「作家になるには苦労する必要がある」と言っているのであり、「苦労すれば作家になれる」と言っているわけではない。
 これ、数学で習った必要条件でしたかね?

 数学つながりで言うと、芥川龍之介はこう書いている。
 なお、文中の中学生は旧制中学(現在の高校生)のことだろう。

 文芸家たらんとする中学生は、須すべからく数学を学ぶ事勤勉なるべし。然らずんばその頭脳常に理路を辿る事迂うにして、到底一人前の文芸家にならざるものと覚悟せよ。
 文芸家たらんとする中学生は、須らく体操を学ぶ事勤勉なるべし。然らずんばその体格常に薄弱にして、到底生涯の大業を成就せざるものと覚悟せよ。
 文芸家たらんとする中学生は、須らく国語作文等を学ぶに冷淡なるべし。これらの課目に冷淡にして、しかもこれらの課目に通暁し得る人物にあらずんば、到底半人前の文芸家にさへならざるものと覚悟せよ。

(芥川龍之介「文芸家たらんとする諸君に与ふ」)

 よく「数学は実社会では使わないから勉強しても意味がない」と言う人がいるが(論理的思考という意味では必要だと思うが、それは置いておくとして)、文章を組み立てるためには数学は絶対的に必須だ。もしも数学を学んでいなければ「理路を辿る事迂」、つまり、論旨があっちに行ったりこっちに行ったりして目的に辿りつかず、「話に筋道が通ってないよ」と言わるだろう。

 数学とともに必要なのが体育だそうだ。これは体力と言い換えてもいい。
ただ、いわゆる体力ではなく、書く体力だろう。肉体的には弱く持久力のない人でも、十時間ぶっ通しで書くことができる人は「書く体力」はある。
 で、国語はというと、学ぶことには冷淡でいいと言う。それでもなぜか国語の成績はよく、作文もうまい人でないと半人前の小説家にすらなれないと。それぐらいの本好き、読書家であれということだろう。

 芥川はそう言っているが、これは自身の反省の弁でもあり、〈予よ亦然またしかく中学時代を有效ゆうこうに経過せざりしを悲しみつつあるものなり。〉とも記している。芥川自身は数学が苦手で、体操も嫌いだったのだ。

文芸トレンド

第171回芥川賞・直木賞発表

今週の7/17(水)、第171回芥川賞・直木賞の発表があった。
芥川賞は、朝比奈秋「サンショウウオの四十九日」と松永K三蔵「バリ山行」に、直木賞は一穂ミチ「ツミデミック」に決まった。

 朝比奈秋さんは、2021年、「塩の道」で第7回林芙美子文学賞を受賞。2023年、『植物少女』で第36回三島由紀夫賞を受賞。同年、『あなたの燃える左手で』で第51回泉鏡花文学賞、第45回野間文芸新人賞を受賞。

編集部独り言 
地方文芸がキャリアのスタートというのはプロには珍しい経歴。応募者からすると、そういうルートもあるのかと勇気づけられる。同様の例には坊っちゃん文学賞を受賞してデビューした瀬尾まいこがいる。

松永K三蔵さんは、関西学院大学文学部卒、2021年、「カメオ」で群像新人文学賞優秀作を受賞。

編集部独り言 
群像新人文学賞の優秀作受賞者。優秀作は野球で言うと育成枠みたいな感じ。粗はあるが、一点突き抜けたものがある。そのままいなくなってしまう人も多いが、大化けする人もいる。同賞の優秀作から大化けした作家には島本理生と村田沙耶香がいる。

一穂ミチさんは、関西大学社会学部卒。BL小説『雪よ林檎の香のごとく』でデビュー。『イエスかノーか半分か』はアニメ映画化。2021年『スモールワールズ』で一般小説に転身し、同作で第43回吉川英治文学新人賞を受賞。

編集部独り言
BL小説の同人誌からBL小説のプロになり、さらに一般文芸に転身。濡れ場を書くのは小説のトレーニングに最適と言うが、そういうことなのかなあ。同様の経歴を持つ作家には凪良ゆうがいる。今後はBLもプロの登竜門になるかもしれない。

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