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危機を知らせる正夢 垂仁天皇⑨神話は今も生きている ことの葉綴り。二八七

恋慕と情の悲しみ

こんにちは。週末いかがお過ごしですか? 私は西日を感じながらの「ことの葉綴り。」に向かいます。

第十一代垂仁天皇(すいにんてんのう)の皇后の沙本毘賣命(さほびめのみこと)は、兄の沙本毘古命(さほびめのみこと)への隠しきれない恋慕を抱えていました。

そして、「天皇を亡き者にして、私と一緒天下を取ろう。寝ているところをこれで斬るのだ」と、鋭い短刀を手渡されました。

その夜のことです。
天皇は、沙本毘賣命(さほびめのみこと)の膝を枕に眠りにつきました。

沙本毘賣命(さほびめのみこと)は、忍ばせた短刀を取り出すと
“その瞬間”をうかがいます

一度……
二度……
そして、三度……

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けれど、沙本毘賣命(さほびめのみこと)は、自分のことを愛おしみ大切にしてくれる夫に、天皇に、刃を向けて、命を奪うことはできまぜんでした

兄上……ごめんなさい。

兄への恋心と、夫婦となった夫への情から、「もし命を奪ったら……」という悲しみの狭間で、沙本毘賣命(さほびめのみこと)の心は張り裂けそうでした
気が付くと、大粒の涙を流していました。

温かな涙が、一滴、一滴、すやすやと眠る垂仁天皇(すいにんてんのう)の頬へと、落ちていきます

寝息を立てていた天皇が、その涙のぬくもりに反応し、頬をぴくぴくと動かしました

沙本毘賣命(さほびめのみこと)は、慌てて涙をぬぐいます。

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窮地を知らせる正夢

垂仁天皇は、瞬きを何度かすると、ゆっくりと目を開けました。
ぼう~っと夢から覚めたばかりのご様子で、何か一点を見据えて、います。

そしてやおら身を起こし、
沙本毘賣命(さほびめのみこと)を見ると、優しく微笑みながら、まだぼんやりとした様子で、こうつぶやきました

あ~皇后よ
なんであろう。とても不思議な夢を見ていたのだ。
沙本(さほ)、そなたの実家の、兄の沙本毘古(さおびこ)の屋敷のあたりから、にわかに、豪雨が降ってきたのだよ。
そして、私の頬を濡らしたのだ。
気がつくと、錦の文様のある小さな美しい蛇が、私の首に巻き付いてきて離れなくてね……

そういうと、首を手でなでてかしげながら、沙本毘賣命(さほびめのみこと)に向かい、こう問いかけました

いったい、この夢は、何の印、前兆なのであろうか?

……………………

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皇后沙本毘賣命(さほびめのみこと)の決心

沙本毘賣命(さほびめのみこと)は、天皇である夫が語った夢の中身に驚愕すると同時に、いっさいの疑いをもたずにいる夫へ、
もうこれ以上、だますことはできない。
うそはつけない……。
天皇と兄は争ってはいけない。諍いをおこしてもいけない。
隠していてはいけない……

そう、思い、ある決心をしたのです。
沙本毘賣命(さほびめのみこと)はあふれる涙に嗚咽しながら、夫である天皇に、頭を下げました

どうか、どうか、お許しくださいませ……。


皇后である沙本毘賣命(さほびめのみこと)は、
どんな決心をしたのでしょうか?

そして天皇のご覧になった夢は、
沙本で降った豪雨は、沙本毘古命(さほびこのみこと)の謀反を。
錦模様の小さな蛇は、美しい皇后である沙本毘賣命(さほびめのみこと)を、表す「正夢」だったのです。

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「夢」の力

垂仁天皇の父であった、崇神天皇(すじんてんのう)も、「神床」に入られて、夢で、神さまの御心をお知りになりましたね


初代神武天皇も、神倭伊波禮毘古(かむやまといわびこ)のころに、夢のお告げを受けられて、助けられています



私たちも、見た夢が現実なる「正夢「予知夢」を見ることもありますよね。
夢の中で思考する「明晰夢」という夢もあり、「夢」の不思議さ、思考と超えた“何か”は、物質社会であっても、見えない世界、人間の心理の無意識層、普遍的心理のつながり、魂の現れでもありますね。

劇場版鬼滅の刃 無限列車編』でも主人公の炭次郎をはじめ、皆が見る夢に、その人物の深層心理が、世界が現れていて。
炭次郎の心のなかは、本当に美しく温かで
したね。

そして神話も、「夢」が、その人の深層心理や、神さまの世界とつながっていることを教えてくれているのですね。

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―次回へ

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