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兄を憐れむ妹の歌 仁徳天皇十八 神話は今も生きている ことの葉綴り六九五

初地蔵・亀戸天神「鷽替え神事」

おはようございます。寒さ厳しき折、皆さん、体調お変りありませんか?
一月二十四日(月)は、今年初めての、子どもを守ってくださるお地蔵さまの初のご縁日。手を合わせたいですね。
また明日の一月二十五日(月)は、初の天神さまのご縁日で、菅原道真公をお祀りする全国の天満宮さんで、特殊神事「鷽替え神事」が執り行われます。
天神さまに縁のある鳥「うそ」の木彫りを毎年取り替えることで、「これまでの悪しきしないことを“うそ”として、すべての吉にとり替える」もの。
今年は、東京の亀戸天神さんでは、混雑を避けるために、二十三日(日)~二十五日(火)の三日間おこなわれています。

暦は、六曜は「先負せんぶ」で午後が吉。急用や勝負事は避けて、万事に控えめ、平静が吉。
十二直は「たつ」で、万物を建て生じる日。物事をスタートするのにいい日。神仏の祭祀、婚礼、開店、衣服の着始めに吉。
二十八宿は「あやぶ」で、修理・工事、壁塗りに吉。
そして、ご神事にかんする吉日「神吉日」です。
お近くの天神さまで「鷽替え」神事があれば、ぜひ、お参りを。“悪しき”ものを、吉に転換する力を、鳥のうそさんにあやかりいただきましょう!!

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さて、神話の物語に入ります。
<ことの葉綴り>全体のご案内
「ことの葉綴り」は、神話の物語を、神代から神さまごとに20の「マガジン」に分けて、すべて読めるようになっています。



最新は「神話20 八幡大神さまこと応神天皇さまの物語 」です。

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心を閉ざす皇后

第十六代、仁徳にんとく天皇さまは、宮中を出て、山代の国の奴理能美ぬりのみの屋敷に身を寄せている皇后の石之日売命いわのひめのみことさまに、「戻ってきてほしい」と、御歌を詠み家臣を使者として使わせました。

皇后は、御歌を奏上しにきた丸邇臣の口子わにのくちこが、屋敷の表口にくると、裏側へと周り、裏側へ廻って平伏すると、今後は表に周りと、八つ当たりのように顔を合わせないようにしていました。
ところが、その日は豪雨! 疲れ果てて庭にしゃがみこんでしまった口子の腰まで雨に浸かっています。そして紅い紐の色も雨で流れだし、藍染めの衣が紅く染まってしまうほどでした。

それでも丸邇臣の口子わにのくちこは、激しい雨の中、腰まで雨水につかりながら、黙って座り皇后がお出ましになるのを待ち続けました。

そんな丸邇臣の口子わにのくちこの姿を、屋敷からじっと心配そうに見つめる女官がおりました。

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兄を憐れむ妹、口比賣くちひめ

兄上……なんと……

そう、この女官は、丸邇臣の口子わにのくちこの妹で、皇后にお仕えしている口比賣くちひめだったのです。

妹は、その兄を憐れみ、涙ながらに歌を詠みます。

山代の 
筒木つつきの宮に 
物申ものまお
の君は
涙ぐましも

山代の
筒木つつきのお宮で
天皇からの御歌を奏上するために
物を申し上げる
私の兄君を見ていますと
涙がとまりません

皇后の石之日売命いわのひめのみことさまは、涙を拭う女官をご覧になり、「そなた、どうして泣いているのです?」と、お尋ねになられました。

女官の口比賣くちひめ、は、「雨の中、表で平伏しておりますのは……私の兄、口子の臣でございます」と、答えました。

それを聞かれた皇后は、八つ当たりをおやめになります。
ようやく、丸邇臣の口子わにのくちこは、仁徳にんとく天皇さまの御歌を、皇后さまに奏上することが叶いました。

山また山、山代の女が
木の鍬を持って、育てあげ、そして打ちおこした大根
この大根の根の白さのような、白き腕を
私が手枕にしたことがないというのか
知らぬ仲では、ないものを……

天皇の御歌をお聞きになられても、それでもまだ、皇后さまの心が開き、宮中に戻ろうとは決してされなかったのです。

まあまあ困ったものですね~
業を煮やし困り果てたのは、お仕えするものと、お屋敷の主も同じでした。
さあ、どうなることでしょう。

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