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第118回医師国家試験 D問題 各論 2日目

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#医師国家試験

118D1

正解:e解説 前庭神経炎は、前庭神経の炎症により生じる疾患である。回転性めまい、悪心・嘔吐、平衡障害を主症状とし、難聴や頭痛は通常伴わない。 いわゆる「急性発症」の「単発性」の「めまい」である。 対になる症候としては、「急性発症の反復性のめまい」もしくは、「慢性経過の反復性のめまい」となる。 急性発症の反復性のめまいとして、代表的な疾患は、良性発作性頭位眩暈症であり、さらに聴力障害などを伴う場合は、メニエル病などの耳鼻科疾患を考える。 急性発症の単発性のめまいには、「前

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118D2

正解:a解説 問題文は、エボラウイルス病の特徴を述べている。エボラウイルス病は、エボラウイルスによる急性の熱性出血性疾患である。 エボラウイルスは、1976年にスーダンとコンゴ民主共和国(当時のザイール)で発生した流行で初めて発見された。以後、アフリカ各地で散発的な流行が繰り返されている。2014年から2016年にかけては、西アフリカで大規模な流行が発生し、多数の感染者と死亡者を出した。 エボラウイルスは、感染者の体液(血液、唾液、汗、涙、母乳、精液など)に直接触れることで

118D3

正解:c解説 電気ショックが直ちに必要な心電図所見は、無脈性心室頻拍(VT)である。無脈性VTは、心室の電気的活動は維持されているが、有効な心拍出がない状態である。早期の除細動が救命のカギとなる。 a. 心静止:心静止では電気的活動が消失しているため、電気ショックの適応はない。 b. 心房細動:心房細動は不整脈の一種であるが、致死的な不整脈ではない。電気ショックの適応はない。 c. 無脈性心室頻拍:無脈性VTは、致死的な不整脈の一つである。早期の除細動が救命のカギとなる。

118D4

正解:a解説 チック症は、突発的で素早い運動や発声を反復する神経精神疾患である。小児期に発症することが多く、男児に多いことが知られている。チック症の特徴について検討する。 a. 男性に多い:チック症は男児に多く、男女比は約4:1である。 b. 思春期に好発する:チック症の発症ピークは4~6歳であり、思春期発症は少ない。 c. 緩徐な運動症状が多い:チック症の運動症状は、突発的で素早い運動が特徴的である。緩徐な運動症状は非典型的である。 d. 症状は睡眠時に多くみられる:チッ

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正解:b解説 成人の鼠径ヘルニアは、鼠径部の脆弱部位から腹腔内容物が脱出する疾患である。鼠径部のヘルニアは、解剖学的位置により、内鼠径ヘルニアと外鼠径ヘルニアに分類される。このうち、成人で最も多いのは外鼠径ヘルニアである。 鼠径ヘルニアは、日常診療でしばしば遭遇する疾患である。腹圧の上昇により、鼠径部の脆弱部位から腹腔内容物(腸管、大網など)が脱出する。症状としては、鼠径部の膨隆と疼痛が特徴的である。 外鼠径ヘルニアは、腹横筋腱弓と鼠径靭帯で形成される鼠径管の外側から脱

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118D6

正解:e解説 急性腎盂腎炎は、腎盂と腎実質の急性炎症性疾患である。尿路感染症の一型であり、発熱、腰背部痛、膿尿などを特徴とする。成人男性の急性腎盂腎炎の原因として最も頻度が高いのは、尿管嵌頓結石である。 急性腎盂腎炎は、尿路感染症の中でも重症度の高い疾患である。適切な診断と迅速な治療介入が、重篤な合併症の予防と予後の改善につながる。 急性腎盂腎炎の診断は、臨床症状と検査所見に基づいて行う。発熱、腰背部痛、膿尿などの症状に加えて、血液検査での炎症反応の上昇、尿検査での膿尿や細

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118D7

正解:a解説 我が国では、末期腎不全患者に対する腎代替療法として、血液透析と腹膜透析が行われている。血液透析と腹膜透析を比較した場合、腹膜透析で正しい記述は「患者数は少ない」である。 a. 患者数は少ない:我が国の透析患者の約97%は血液透析であり、腹膜透析の患者数は約3%と少ない。 b. 食事制限は厳しい:腹膜透析では、血液透析に比べて食事制限は緩やかである。残存腎機能が保たれやすく、除水が持続的に行われるため、水分・塩分制限は比較的緩い。 c. 自宅での施行は困難である

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正解:e解説 急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は、様々な原因により生じる急性の非心原性肺水腫である。肺胞上皮と毛細血管内皮の傷害により、肺水腫と肺胞虚脱をきたし、重篤な呼吸不全を引き起こす。ARDSの病態として正しい記述は、「肺サーファクタント減少」である。 a. 気道抵抗低下:ARDSでは、肺水腫や炎症により気道抵抗は上昇する。 b. 肺血管抵抗低下:ARDSでは、低酸素性肺血管収縮や微小血栓により肺血管抵抗は上昇する。 c. 肺内シャント減少:ARDSでは、肺胞虚脱や無気

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正解:d解説 原発性硬化性胆管炎(PSC)は、肝外胆管および肝内胆管の慢性的な炎症と線維化を特徴とする疾患である。病因は不明であるが、自己免疫機序の関与が示唆されている。PSCに合併することが多い疾患は、潰瘍性大腸炎(UC)である。 PSCとUCの合併は高頻度に認められ、PSC患者の約60~80%にUCを合併する。逆に、UC患者の約5%にPSCを合併する。PSCとUCの合併には、何らかの共通の免疫学的機序の関与が推測されている。 a. 虚血性腸炎:主に高齢者に生じる大腸の虚

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正解:c解説 眼窩吹き抜け骨折は、眼窩内容物が骨折部から上顎洞内に脱出する骨折である。主に眼窩下壁や内側壁の骨折で生じる。外力が眼球を介して眼窩に伝わることで発生する。眼窩吹き抜け骨折で起こりにくい症状は、嗅覚障害である。 a. 複視:眼窩内容物(外眼筋や眼窩脂肪など)の陥頓により、眼球運動障害と複視を生じる。 b. 鼻出血:骨折部からの出血が鼻腔内に流れ込むことで、鼻出血を生じる。 c. 嗅覚障害:眼窩吹き抜け骨折では、嗅覚に関与する構造(嗅裂部、篩板など)の損傷は少ない

118D11

正解: e解説 重症複合免疫不全症(SCID)は、T細胞とB細胞の機能が高度に障害された先天性免疫不全症である。遺伝形式は常染色体劣性遺伝が大部分を占める。 a. 全身のリンパ組織は低形成となり、リンパ節腫大は認めない。 b. 細胞性免疫と液性免疫の両方が障害されるため、ウイルス感染に対する免疫は保たれない。 c. 常染色体劣性遺伝の形式をとることが多い。 d. 血清免疫グロブリンは低値を示す。 e. 生後数週から体重増加不良、慢性下痢、口腔内カンジダ症などの症状が出現する

118D12

正解: b, d解説 慢性腎臓病(CKD)の重症度分類は、原疾患、GFR区分、アルブミン尿区分の3項目で構成される。この中で、GFR(糸球体濾過量)の評価には性別と年齢が必要である。 GFRは年齢とともに低下し、また女性は男性に比べてGFRが低い。そのため、GFRの評価には年齢と性別を考慮する必要がある。日本腎臓学会のCKD診療ガイドラインでは、性別、年齢、血清クレアチニン値からGFRを推算する式が提唱されている。 a. 血圧: CKDの重要なリスク因子であるが、重症度分類

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正解:a,c,d解説 a. 心室中隔穿孔は、急性心筋梗塞後の機械的合併症の一つである。梗塞部位が心室中隔に及ぶと、心室中隔が脆弱化し穿孔を起こすことがある。 b. 左室流出路狭窄は、急性心筋梗塞後の機械的合併症ではない。 c. 心タンポナーデは、急性心筋梗塞後の機械的合併症の一つである。心筋の断裂などにより心嚢液が貯留し、心タンポナーデを引き起こすことがある。 d. 急性僧帽弁閉鎖不全症は、急性心筋梗塞後の機械的合併症の一つである。乳頭筋の断裂や機能不全により、僧帽弁の逆流

118D14

正解:a,b,d解説 a. 精巣摘除術は、前立腺癌に対するホルモン療法の一つである。精巣からのアンドロゲン供給を断つことで、前立腺癌の増殖を抑制する。 b. 放射線治療は、前立腺癌に対する局所療法の一つである。外照射や小線源療法などにより、前立腺癌細胞を死滅させる。 c. α1 遮断薬は、前立腺肥大症に対する薬物療法であり、前立腺癌の治療には用いられない。 d. 前立腺全摘除術は、前立腺癌に対する根治的手術療法である。前立腺を全て摘出することで、癌の完全な除去を目指す。 e