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成人男性の急性腎盂腎炎をきたす原因で最も頻度が高いのはどれか。
a. 性感染症
b. 過活動膀胱
c. 糖尿病腎症
d. 間質性膀胱炎
e. 尿管嵌頓結石

第118回医師国家試験

正解:e

解説

急性腎盂腎炎は、腎盂と腎実質の急性炎症性疾患である。尿路感染症の一型であり、発熱、腰背部痛、膿尿などを特徴とする。成人男性の急性腎盂腎炎の原因として最も頻度が高いのは、尿管嵌頓結石である。
急性腎盂腎炎は、尿路感染症の中でも重症度の高い疾患である。適切な診断と迅速な治療介入が、重篤な合併症の予防と予後の改善につながる。
急性腎盂腎炎の診断は、臨床症状と検査所見に基づいて行う。発熱、腰背部痛、膿尿などの症状に加えて、血液検査での炎症反応の上昇、尿検査での膿尿や細菌尿の存在が診断の根拠となる。画像検査(超音波検査、CT検査など)は、尿路の閉塞や膿瘍形成の評価に有用である。
治療の基本は、抗菌薬の投与である。原因菌の推定と、患者の重症度に基づいて、適切な抗菌薬を選択する。尿路の閉塞が疑われる場合は、尿管ステント留置や経皮的腎瘻造設などの尿路ドレナージが必要となる。
尿管嵌頓結石は、尿管結石が尿管壁に嵌頓し、尿流を閉塞する病態である。結石による尿流閉塞が、腎盂腎炎の原因となる。尿管嵌頓結石の治療には、経尿道的尿管結石除去術や体外衝撃波結石破砕術などの泌尿器科的介入が必要である。
成人男性の急性腎盂腎炎では、尿路の閉塞性病変の検索が重要である。尿管嵌頓結石だけでなく、前立腺肥大症や尿路腫瘍などの閉塞性疾患も鑑別に挙げる必要がある。
急性腎盂腎炎は、適切な治療が行われないと、敗血症や腎膿瘍などの重篤な合併症を引き起こす。特に、高齢者や免疫不全患者では、重症化のリスクが高い。早期診断と迅速な治療介入が、患者の予後を大きく左右する。

a. 性感染症
性感染症(淋菌、クラミジアなど)は、尿道炎や前立腺炎の原因となるが、急性腎盂腎炎の主因とはならない。

b. 過活動膀胱
過活動膀胱は、尿意切迫感、頻尿、尿失禁などを特徴とする症候群であり、急性腎盂腎炎の主因とはならない。

c. 糖尿病腎症
糖尿病腎症は、糖尿病の微小血管合併症の一つであり、蛋白尿、浮腫、腎機能低下などを呈する。尿路感染症のリスクを高めるが、急性腎盂腎炎の主因とはならない。

d. 間質性膀胱炎
間質性膀胱炎は、原因不明の慢性膀胱炎であり、膀胱の慢性炎症と疼痛を特徴とする。急性腎盂腎炎の主因とはならない。慢性間質性腎炎は、慢性腎盂腎炎、膀胱尿管逆流、鎮痛薬性腎症が原因となる、というのは既出(94B56)。

e. 尿管嵌頓結石
尿管結石が尿管に嵌頓し、尿流を閉塞することで、上部尿路の感染を引き起こす。成人男性の急性腎盂腎炎の最も頻度の高い原因である。

考察

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