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前庭神経炎で正しいのはどれか。
a. 再発することが多い。
b. 垂直性の眼振を認める。
c. 頭痛をともなう。
d. 難聴をともなう。
e. 吐き気をともなう。

第118回医師国家試験

正解:e

解説

前庭神経炎は、前庭神経の炎症により生じる疾患である。回転性めまい、悪心・嘔吐、平衡障害を主症状とし、難聴や頭痛は通常伴わない。
いわゆる「急性発症」の「単発性」の「めまい」である。
対になる症候としては、「急性発症の反復性のめまい」もしくは、「慢性経過の反復性のめまい」となる。

急性発症の反復性のめまいとして、代表的な疾患は、良性発作性頭位眩暈症であり、さらに聴力障害などを伴う場合は、メニエル病などの耳鼻科疾患を考える。

急性発症の単発性のめまいには、「前庭神経炎」と「脳幹・小脳の血管障害」が鑑別にあがる。

診察では、患側向きの水平回旋性眼振を認める。Head impulse test(頭振り眼振検査)では、患側への頭部回転で catch-up saccade(補正性眼球運動)を認める。温度刺激検査では、患側の半規管機能低下を示す。
治療は、めまいに対する対症療法が中心となる。抗めまい薬(ジフェンヒドラミン、ジメンヒドリナートなど)や制吐薬(プロクロルペラジンなど)を用いる。ステロイド薬の効果は限定的である。発症早期からの前庭リハビリテーションが、代償機能の獲得と予後の改善に重要である。
予後は一般的に良好であり、数週間から数ヶ月で症状は改善する。ただし、高齢者では代償機能の獲得が不十分なことがあり、平衡障害が遷延する場合がある。

前庭神経炎とは
前庭神経炎は、突発的かつ強い回転性めまいを主症状とする末梢性(耳性)めまいの一種です。難聴や耳鳴などの蝸牛症状を伴わないのが特徴です。めまい発作は通常1回のみで、24~72時間程度持続し、強い嘔気・嘔吐を伴います。
多くの場合、発症の7~10日前に上気道感染や感冒が先行することから、前庭神経および前庭神経節細胞のウイルス炎症が原因と考えられています。
40~50歳代の男性にやや多く見られます。

厚生太郎まとめ

a. 再発することが多い
前庭神経炎は一般的に一過性の疾患であり、再発は多くない。

b. 垂直性の眼振を認める
前庭神経炎では、患側向きの水平回旋性眼振を認める。垂直性眼振は中枢性病変を示唆する所見である。

c. 頭痛をともなう
前庭神経炎では頭痛は典型的ではない。頭痛を伴う場合は、他の疾患(片頭痛関連めまいなど)を考慮する必要がある。

d. 難聴をともなう
前庭神経炎では内耳障害を伴わないため、難聴は生じない。難聴を伴う場合は、前庭神経炎ではなく、内耳障害(突発性難聴、メニエール病など)を考慮する。

e. 吐き気をともなう
前庭神経炎では、前庭障害による悪心・嘔吐を高頻度に認める。

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考察

意外なことに、前庭神経炎の臨床問題は、出題されたことがない。はず。

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