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我が国において、血液透析に比較して腹膜透析で正しいのはどれか。
a. 患者数は少ない。
b. 食事制限は厳しい。
c. 自宅での施行は困難である。
d. 動静脈シャント造設を要する。
e. 不均衡症候群を起こしやすい。

第118回医師国家試験

正解:a

解説

我が国では、末期腎不全患者に対する腎代替療法として、血液透析と腹膜透析が行われている。血液透析と腹膜透析を比較した場合、腹膜透析で正しい記述は「患者数は少ない」である。
a. 患者数は少ない:我が国の透析患者の約97%は血液透析であり、腹膜透析の患者数は約3%と少ない。
b. 食事制限は厳しい:腹膜透析では、血液透析に比べて食事制限は緩やかである。残存腎機能が保たれやすく、除水が持続的に行われるため、水分・塩分制限は比較的緩い。
c. 自宅での施行は困難である:腹膜透析は、自宅で行う在宅療法が基本である。自己管理が可能であり、医療機関への通院負担が少ない。
d. 動静脈シャント造設を要する:腹膜透析では、腹腔内にカテーテルを留置するが、動静脈シャントは不要である。動静脈シャント造設は血液透析に特有の手技である。
e. 不均衡症候群を起こしやすい:不均衡症候群は、血液透析の合併症の一つであり、急激な溶質除去により生じる。腹膜透析では、緩徐な溶質除去が行われるため、不均衡症候群は起こりにくい。
以上より、我が国において、血液透析に比較して腹膜透析で正しいのは、「患者数は少ない」である。

考察

腹膜透析は、腹膜を半透膜として利用する透析療法である。腹腔内に透析液を注入し、血液と透析液の濃度勾配により、溶質除去と除水を行う。血液透析に比べて、生理的で持続的な透析が可能である。
腹膜透析の利点としては、在宅療法が可能、食事制限が緩い、残存腎機能が保たれやすい、血行動態が安定している、などが挙げられる。一方、欠点としては、腹膜炎のリスク、カテーテルトラブル、腹膜の劣化による除水能の低下、などがある。
我が国では、欧米諸国に比べて、腹膜透析の普及率が低い。その理由としては、医療スタッフの不足、患者教育の困難さ、介護力の不足、腹膜透析の診療報酬の低さなどが指摘されている。
近年、我が国でも腹膜透析の推進に向けた取り組みが行われている。腹膜透析は、患者のQOLの向上や医療費の削減に寄与する可能性がある。特に、高齢者や心血管系の合併症を有する患者では、腹膜透析が有利な場合がある。
腹膜透析の適応判断には、患者の全身状態、生活環境、本人の希望などを総合的に評価する必要がある。また、腹膜透析の管理には、腎臓内科医、腹膜透析看護師、臨床工学技士など多職種のチームアプローチが不可欠である。
医療者は、腹膜透析の特徴と管理方法を理解し、患者の状態に応じた適切な透析療法を提供する必要がある。また、患者教育を通じて、自己管理の重要性を啓発し、治療へのアドヒアランスを高めることも重要である。
末期腎不全患者のQOLの向上と予後の改善のために、血液透析と腹膜透析のそれぞれの特徴を生かした、最適な腎代替療法の選択と管理が求められる。医療者一人一人が、透析療法に関する知識と技術を深め、患者の尊厳と自己決定を尊重しながら、最善の医療を提供していくことが肝要である。

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