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ウイルス発見以後、アフリカ各地で流行が繰り返されてきた。感染者の体液に触れるとウイルスが傷口や粘膜から体内に入り感染する。発熱、倦怠感、頭痛、筋肉痛と咽頭痛などに続いて嘔吐や下痢が出現する。病状回復後も精液内にウイルスが残存することがある。過去の流行における平均の致死率は約50%である。
このウイルスはどれか。
a. エボラウイルス
b. ジカウイルス
c. 新型コロナウイルス
d. デングウイルス
e. ポリオウイルス

第118回医師国家試験

正解:a

解説

問題文は、エボラウイルス病の特徴を述べている。エボラウイルス病は、エボラウイルスによる急性の熱性出血性疾患である。
エボラウイルスは、1976年にスーダンとコンゴ民主共和国(当時のザイール)で発生した流行で初めて発見された。以後、アフリカ各地で散発的な流行が繰り返されている。2014年から2016年にかけては、西アフリカで大規模な流行が発生し、多数の感染者と死亡者を出した。
エボラウイルスは、感染者の体液(血液、唾液、汗、涙、母乳、精液など)に直接触れることで感染する。感染力が非常に強く、ウイルスが傷口や粘膜から体内に侵入すると感染が成立する。潜伏期は2日から21日である。
初期症状は、発熱、倦怠感、筋肉痛、頭痛などの非特異的な症状である。その後、嘔吐、下痢、腹痛などの消化器症状が出現する。出血症状(皮下出血、吐血、下血など)を呈することもある。致死率は25%から90%と非常に高い。
エボラウイルス病には特異的な治療法はなく、対症療法が中心となる。また、ワクチンの開発が進められているが、まだ実用化には至っていない。流行地では、感染対策と疫学調査が重要である。
その他のウイルスについては以下の通りである。
b. ジカウイルス:蚊媒介性のフラビウイルスであり、先天性小頭症との関連が指摘されている。致死率は高くない。
c. 新型コロナウイルス:2019年末に中国武漢市で発生した新興感染症の原因ウイルス。
d. デングウイルス:蚊媒介性のフラビウイルスであり、デング熱の原因となる。致死率は1%程度である。
e. ポリオウイルス:急性灰白髄炎(ポリオ)の原因ウイルスであり、麻痺や呼吸筋麻痺をきたす。
以上より、問題文で述べられているウイルスはエボラウイルスである。

考察

エボラウイルス病は、国際的な脅威となる感染症の一つである。高い致死率と強い感染力から、パンデミックのリスクが懸念されている。流行が発生した場合は、迅速な対応と国際協力が不可欠である。
エボラウイルス病の診断には、RT-PCR法や抗原検出法が用いられる。治療は、輸液や電解質補正などの支持療法が中心となる。また、回復者の血清を用いた免疫療法の有効性も報告されている。
感染予防には、標準予防策に加えて接触予防策と飛沫予防策が必要である。医療従事者は、適切な個人防護具(PPE)の着用と、厳重な感染管理を行う必要がある。また、一般市民に対する啓発活動も重要である。
エボラウイルス病は、医療体制の脆弱な地域で流行が発生しやすい。流行の制圧には、現地の医療体制の強化と、国際的な支援が不可欠である。また、ワクチンや治療薬の開発も急務である。
新興・再興感染症は、人類に対する重大な脅威の一つである。エボラウイルス病をはじめとする致死性の高い感染症に対しては、日頃からの備えと、発生時の迅速な対応が求められる。医療者は、最新の知見を学び、適切な診断と治療を行う能力を身につけておく必要がある。また、国際的な連携と協力の下、感染症対策を推進していくことが重要である。感染症との闘いは、人類共通の課題である。一人一人が感染症に対する理解を深め、その克服に向けて取り組んでいくことが求められている。

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