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小児のチック症で正しいのはどれか。
a. 男性に多い。
b. 思春期に好発する。
c. 緩徐な運動症状が多い。
d. 症状は睡眠時に多くみられる。
e. 生涯にわたり症状が続くことが多い。

第118回医師国家試験

正解:a

解説

チック症は、突発的で素早い運動や発声を反復する神経精神疾患である。小児期に発症することが多く、男児に多いことが知られている。チック症の特徴について検討する。
a. 男性に多い:チック症は男児に多く、男女比は約4:1である。
b. 思春期に好発する:チック症の発症ピークは4~6歳であり、思春期発症は少ない。
c. 緩徐な運動症状が多い:チック症の運動症状は、突発的で素早い運動が特徴的である。緩徐な運動症状は非典型的である。
d. 症状は睡眠時に多くみられる:チックは覚醒時に出現し、睡眠時には消失する。
e. 生涯にわたり症状が続くことが多い:多くのチック症は、年齢とともに軽快する。成人期まで症状が持続することは少ない。
以上より、小児のチック症で正しい記述は「男性に多い」である。

考察

チック症は、運動チックと音声チックに大別される。運動チックは、眼瞼の瞬き、顔面の表情、肩のすくめ、頭部の動きなどの突発的な運動である。音声チックは、咳払い、鼻すすり、奇声などの発声である。
チック症は、症状の持続期間により、一過性チック症(1年未満)、慢性チック症(1年以上)、トゥレット症候群(運動チックと音声チックの両方が1年以上持続)に分類される。小児期に発症するチックの多くは一過性であり、思春期までに自然に軽快することが多い。
チック症の原因は完全には解明されていないが、遺伝的要因と環境的要因の関与が示唆されている。脳内の神経伝達物質(ドパミン、セロトニン、ノルアドレナリンなど)の機能異常や、大脳基底核を中心とした神経回路の機能障害が関与していると考えられている。
チック症の診断は、臨床症状に基づいて行われる。鑑別診断としては、常同運動、ジスキネジア、ミオクローヌスなどの不随意運動疾患や、強迫症、てんかんなどが挙げられる。
治療は、教育・指導、環境調整、行動療法、薬物療法を組み合わせて行う。軽症例では、症状の説明と安心感の提供が重要である。中等症以上の症例では、抗精神病薬(ハロペリドール、ピモジドなど)や αアドレナリン作動薬(クロニジン)などが用いられる。行動療法としては、習慣逆転法などが有効である。
チック症は、子どもの心理社会的発達に大きな影響を与える疾患である。家族や学校関係者の理解と支援が不可欠である。医療者は、チック症の病態を正しく理解し、適切な診断と治療を行うとともに、子どもと家族の心理的サポートにも努める必要がある。
チック症の子どもたちが、その特性を生かしながら、自己肯定感を持って成長していけるような社会の理解と支援が望まれる。医療者は、チック症に対する正しい知識の普及と、包括的な支援体制の構築に向けて、リーダーシップを発揮していくことが求められる。

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