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成人の鼠径ヘルニアで正しいのはどれか。
a. 高齢女性に多い。
b. 外ヘルニアである。
c. 内鼠径ヘルニアの頻度が高い。
d. 腹膜鞘状突起の閉鎖不全が原因である。
e. 開腹手術の既往はリスクファクターである。

第118回医師国家試験

正解:b

解説

成人の鼠径ヘルニアは、鼠径部の脆弱部位から腹腔内容物が脱出する疾患である。鼠径部のヘルニアは、解剖学的位置により、内鼠径ヘルニアと外鼠径ヘルニアに分類される。このうち、成人で最も多いのは外鼠径ヘルニアである。

鼠径ヘルニアは、日常診療でしばしば遭遇する疾患である。腹圧の上昇により、鼠径部の脆弱部位から腹腔内容物(腸管、大網など)が脱出する。症状としては、鼠径部の膨隆と疼痛が特徴的である。

外鼠径ヘルニアは、腹横筋腱弓と鼠径靭帯で形成される鼠径管の外側から脱出するヘルニアである。腹壁の先天的な脆弱性や、加齢による組織の脆弱化が原因と考えられている。

内鼠径ヘルニアは、鼠径管の内側、すなわち腹直筋の外縁から脱出するヘルニアである。ヘッセルバッハ三角の後壁の脆弱化が原因と考えられている。

鼠径ヘルニアの診断は、理学的所見が基本である。立位や怒責時に鼠径部の膨隆を認めることが多い。超音波検査やCT検査が診断の補助となる。
治療は、ヘルニア嚢を切除し、ヘルニア門を閉鎖する手術が原則である。従来の前方アプローチに加えて、腹腔鏡下ヘルニア修復術が広く行われるようになっている。手術では、ヘルニア門の単純閉鎖やメッシュを用いた修復が行われる。
鼠径ヘルニアは、日常生活の質を大きく損ねる疾患である。疼痛や違和感により、活動制限を余儀なくされることが少なくない。また、ヘルニアの嵌頓や絞扼は、腸管壊死や腹膜炎を引き起こす重篤な合併症である。
鼠径ヘルニアの予防には、肥満の是正、慢性的な咳嗽の治療、便秘の改善など、腹圧を上昇させる要因をコントロールすることが重要である。また、早期の外科的治療により、合併症のリスクを軽減することができる。

a. 高齢女性に多い
鼠径ヘルニアは男性に多く、男女比は約9:1である。高齢女性に多いのは、大腿ヘルニアが有名である。

b. 外ヘルニアである
鼠径ヘルニアは触知可能な外ヘルニアである。

c. 内鼠径ヘルニアの頻度が高い
成人では外鼠径ヘルニアの頻度が高く、内鼠径ヘルニアは少ない。内鼠径ヘルニア自体は、中高年の肥満男性に多い。

d. 腹膜鞘状突起の閉鎖不全が原因である
腹膜鞘状突起の閉鎖不全は、外鼠径ヘルニアの原因である。
しかし、「小児」の鼠径ヘルニアの原因となるため、本問では不適切となる。

e. 開腹手術の既往はリスクファクターである
開腹手術の既往は腹壁瘢痕ヘルニアのリスク因子であるが、鼠径ヘルニアとの関連は乏しい。

考察

「鼠径ヘルニア」は頻出事項であるが、意外なことに、

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