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原発性硬化性胆管炎に合併することが多いのはどれか。
a. 虚血性腸炎
b. 偽膜性腸炎
c. 大腸憩室炎
d. 潰瘍性大腸炎
e. 過敏性腸症候群

第118回医師国家試験

正解:d

解説

原発性硬化性胆管炎(PSC)は、肝外胆管および肝内胆管の慢性的な炎症と線維化を特徴とする疾患である。病因は不明であるが、自己免疫機序の関与が示唆されている。PSCに合併することが多い疾患は、潰瘍性大腸炎(UC)である。
PSCとUCの合併は高頻度に認められ、PSC患者の約60~80%にUCを合併する。逆に、UC患者の約5%にPSCを合併する。PSCとUCの合併には、何らかの共通の免疫学的機序の関与が推測されている。
a. 虚血性腸炎:主に高齢者に生じる大腸の虚血性傷害であり、PSCとの関連は乏しい。
b. 偽膜性腸炎:Clostridioides difficile感染による大腸炎であり、PSCとの特異的な関連は明らかではない。
c. 大腸憩室炎:大腸憩室の炎症性疾患であり、PSCとの特異的な関連は明らかではない。
d. 潰瘍性大腸炎:大腸の粘膜を主座とする原因不明の炎症性腸疾患であり、PSCとの合併が高率に認められる。
e. 過敏性腸症候群:腸管の運動異常や知覚過敏を特徴とする機能性疾患であり、PSCとの特異的な関連は明らかではない。
以上より、原発性硬化性胆管炎に合併することが多いのは、潰瘍性大腸炎である。

考察

原発性硬化性胆管炎(PSC)は、希少疾患であるが、重要な肝胆道系疾患の一つである。病理学的には、胆管上皮の炎症と線維化により、胆管の不規則な狭窄と拡張をきたす。臨床症状としては、黄疸、掻痒感、発熱、右上腹部痛などを呈する。
PSCの診断には、胆道系の画像検査が重要である。磁気共鳴胆管膵管造影(MRCP)や内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)により、胆管の特徴的な狭窄と拡張所見(数珠状変化)を認める。肝生検では、胆管周囲の同心円状の線維化(onion-skin lesion)が特徴的である。
PSCの治療は、対症療法が中心となる。掻痒感に対しては、胆汁酸吸着薬や抗ヒスタミン薬を使用する。胆管狭窄による黄疸には、内視鏡的なステント留置や経皮経肝的な胆道ドレナージを行う。根本的な治療法はなく、肝移植が唯一の根治療法である。
PSCに合併する潰瘍性大腸炎(UC)は、しばしば非典型的な臨床経過をたどる。下痢や血便などのUC症状に乏しく、無症候性の大腸炎を呈することが多い。また、UCの活動性とPSCの重症度は必ずしも相関しない。
PSC合併UCでは、大腸癌のリスクが高いことが知られている。UCの罹病期間が長いほど、また、UCの罹患範囲が広いほど、大腸癌のリスクは高くなる。PSC合併UCでは、定期的な大腸内視鏡検査によるサーベイランスが推奨される。
PSCの患者では、UC以外にも様々な腸管外合併症を生じることがある。自己免疫性膵炎、関節炎、橋本病などの自己免疫疾患の合併が知られている。また、胆管癌や大腸癌のリスクも高い。
PSCの診療には、消化器内科、肝臓内科、消化器外科など多職種の連携が不可欠である。病態の正確な評価と、患者の全身状態を考慮した適切な治療方針の立案が求められる。また、UCを含む腸管外合併症のスクリーニングと管理にも注意を払う必要がある。
医療者は、PSCの病態を深く理解し、早期診断と適切な治療介入に努める必要がある。同時に、患者の苦痛を理解し、QOLの維持向上を目指した全人的なケアを心がけることが重要である。PSCの病態解明と新たな治療法の開発が進むことを期待したい。

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