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急性呼吸窮迫症候群〈ARDS〉の病態で正しいのはどれか。
a. 気道抵抗低下
b. 肺血管抵抗低下
c. 肺内シャント減少
d. 肺コンプライアンス増加
e. 肺サーファクタント減少

第118回医師国家試験

正解:e

解説

急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は、様々な原因により生じる急性の非心原性肺水腫である。肺胞上皮と毛細血管内皮の傷害により、肺水腫と肺胞虚脱をきたし、重篤な呼吸不全を引き起こす。ARDSの病態として正しい記述は、「肺サーファクタント減少」である。
a. 気道抵抗低下:ARDSでは、肺水腫や炎症により気道抵抗は上昇する。
b. 肺血管抵抗低下:ARDSでは、低酸素性肺血管収縮や微小血栓により肺血管抵抗は上昇する。
c. 肺内シャント減少:ARDSでは、肺胞虚脱や無気肺により換気血流不均等が生じ、肺内シャントが増加する。
d. 肺コンプライアンス増加:ARDSでは、肺水腫や肺胞虚脱により肺コンプライアンスは低下する。
e. 肺サーファクタント減少:ARDSでは、肺胞上皮傷害により肺サーファクタントの産生と機能が障害され、肺サーファクタントは減少する。
以上より、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の病態で正しいのは、「肺サーファクタント減少」である。

考察

ARDSは、重篤な呼吸不全を引き起こす症候群である。原因は多岐にわたり、敗血症、肺炎、誤嚥、外傷、膵炎などが知られている。病態の中心は、肺胞上皮と毛細血管内皮の傷害であり、肺水腫と炎症反応が生じる。

ARDSの臨床症状は、急性発症の呼吸困難、低酸素血症、両側肺野の浸潤影などである。診断には、ベルリン定義が広く用いられている。ベルリン定義では、重症度を軽症、中等症、重症の3段階に分類する。

ARDSの治療は、原因疾患の治療と呼吸管理が中心となる。呼吸管理では、肺保護換気戦略が重要である。低一回換気量、高PEEP、許容性低酸素血症などの戦略により、人工呼吸器関連肺傷害を最小限に抑える。また、腹臥位療法や一酸化窒素吸入療法、体外式膜型人工肺(ECMO)などの補助療法も考慮される。
ARDSの予後は、原因疾患や重症度により異なるが、死亡率は高い。早期の診断と適切な呼吸管理が、予後の改善に重要である。また、合併症の予防と全身管理も不可欠である。
ARDSの病態には、肺サーファクタントの減少が深く関与している。肺サーファクタントは、肺胞の表面張力を低下させ、肺胞の虚脱を防ぐ作用がある。ARDSでは、肺胞上皮の傷害により、肺サーファクタントの産生と機能が障害される。その結果、無気肺や低酸素血症が助長される。
肺サーファクタント補充療法は、ARDSの新たな治療戦略として期待されている。動物実験では有望な成績が報告されているが、臨床試験では明確な効果は示されていない。投与方法や投与量、対象患者の選択など、解決すべき課題は多い。
ARDSの診療には、集中治療医、呼吸器内科医、呼吸療法士など多職種のチームアプローチが不可欠である。病態の正確な評価と、患者の全身状態を考慮した適切な治療戦略の立案が求められる。また、予防可能なARDSのリスク因子の管理にも注意を払う必要がある。

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