【雑記】高校生だらけのドラフト 2018
高校野球が甲子園だけだと思ったら大間違いです。第100回全国高校野球選手権大会閉幕後も国民体育大会高等学校野球競技やBFA U18 アジア選手権が開催されますし、後にはドラフト会議が待っています。そこでドラフト会議に備えて、注目している三年生の選手をあげていこうと思います。プロで通用するか、おなじポジションに上まわる逸材がいるのではないか、色々疑問に思われそうですが、専門的な見解と記事は球団関係者とドラフトレポートに任せて、本項では好きなスタイルの選手を推させていただきます。独断と偏見だらけの素人流寸評です。ちなみに脳筋である小生は「打者」「本塁打」を偏重しているため全体的にパワーの香りをただよわせています。ご了承ください。また、関係者が当記事を発見されるという青天の霹靂が生じた場合を想定し、あらかじめ「好き勝手なことを書いてごめんね」と謝っておきます。
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投手
※投手と外野手は三人紹介します。あいうえお順です。
市川悠太(高知・明徳義塾)
*身長184cm体重75kg/右投右打
*球速MAX149km
*全国高等学校野球選手権大会
【地方大会】3勝1敗/防御率3.77/奪三振率8.71
高知大会決勝戦で高知商業相手に10失点したのは予想外でしたが、市川悠太投手に対する評価は変わりません。柔軟性のある体を使ったスリークォーター気味のサイドスロー(あるいはサイドスロー気味のスリークォーター)から繰りだす150km近い速球は鋭く、制球力と体力を生かして淡々と投げ込むすがたは目を引きます。投球フォームを改良するなど切磋琢磨しており、その成果は今後現れてくるものと想像しています。不安の種は新チーム結成後の公式戦すべてを投げ抜いていることで、腕にダメージが蓄積していないか気にかかります。将来のある高校生ですし、怪我に注意しながら成長して欲しいですね。
吉田輝星(秋田・金足農業)
*身長176cm体重81kg/右投右打
*球速MAX150km
*全国高等学校野球選手権大会成績
【地方大会】5勝0敗/防御率1.05/奪三振率11.93
【甲子園】5勝1敗/防御率2.52/奪三振率11.16
今大会もっとも注目を集めた選手かも知れません。もはや説明不要の秋田の星です。甲子園決勝戦まで全試合完投、投球数は1517球を数えます(高校野球における投球数に関しては批判的な姿勢をとっておりますが、当記事のテーマは注目選手を紹介することにあるためその話は別の機会に)。金足農業が秋田県代表校として103年ぶりに決勝戦進出したこともかさなり、甲子園だけで62個の三振を奪ったみちのくのドクターKは一躍有名人となりました。まぶしい笑顔もチャームポイントですね。身長は176cmと小柄な部類です。投手も身長は高い方が有利なのはメジャーリーグで活躍する選手を見れば明らかですけれども、大柄でなければだめということはありません。プロの世界で伝説を作るためにも、まずは充分に静養して身体のケアに努めていただきたいです。
渡邉勇太朗(南埼玉・浦和)
*身長190cm体重90kg/右投右打
*球速MAX149km
*全国高等学校野球選手権大会成績
【地方大会】2勝0敗/防御率4.15/奪三振率7.27
【甲子園】2勝1敗/防御率2.11/奪三振率9.28
渡邉勇太朗選手の第一印象は「投球フォームが大谷翔平選手(現ロサンゼルス・エンゼルス)そっくり」でした。実際大谷選手の投球を参考にされているようで、セットポジションで構えているとグラブの位置から足をあげる動作まで見事に再現されており、大柄な体格を駆使した柔らかなオーバースローも”Ohotani-san”そのものです。そこまでコピーしなくてもよいのではないかとも思いましたが、参考にするには最適の大投手ですし、模倣と試行錯誤を継続しながら最良の型を構築してくれることを期待します。持ち味は伸びのある直球と切れ味鋭いスライダー。まだ走者がいると制球が乱れたり、春先の肘痛の影響なのか投球数が限られていたりする点は気になりますね。それでも着実に実力を伸ばしている逸材に変わりはなく、プロ入り後の成長が楽しみです。
捕手
石橋康太(東東京・関東第一)
*身長180cm体重84kg/右投右打
*高校通算57本塁打
*全国高等学校野球選手権大会成績
【地方大会】17打数4安打/打率2割3分5厘/1本塁打/3打点
強打の捕手にはロマンがありますが、年々稀少化しており、今では下位打線を任されている光景があたり前になりました。そのため終盤で代打を送られる場面が多く、正捕手として出場し続けること自体稀です。また前年東京ヤクルトスワローズにドラフト1位で入団した村上宗隆選手のように、打撃力を買われている捕手はコンバートされることもあります。守備の専門化が進行しているのか、あるいは球界全体の価値観が変化しているのか。可能性は色々考えられますが、いずれにしても攻守で活躍する捕手が見られないのはさびしいので、新風を吹き込む捕手の登場を願うばかりです。今年の希望の星は石橋康太選手です。身長180cm体重84kgという立派な体格。二塁送球1.9秒の強肩。高校通算57本塁打が物語るパンチ力。若干送球は不安定でも伸びしろは充分で大きな期待を寄せています。東東京大会ではあまり目立った成績を残せず、決勝戦敗退で甲子園行きを逃しました。けれども堂々たる立ち振る舞いには「打てる捕手」の雰囲気があり、さらなる成長を期待できるのではないでしょうか。なお高校通算68本塁打を放ち、おなじく強打の捕手として注目を集めていた野村大樹選手(早稲田実業)は打撃に専念するため三塁手に転向しています。
一塁手
松下壮悟(南神奈川・星槎国際湘南)
*身長180cm体重90kg/右投左打
*高校通算47本塁打
*全国高等学校野球選手権大会成績
【地方大会】23打数9安打/打率3割9分1厘/1本塁打/9打点
誠に失礼ながら、清宮幸太郎(現北海道日本ハムファイターズ)という圧倒的な存在がいた2017年とは違い、2018年は一塁手が目立たない印象を受けていました。最終的に高校通算75本塁打を記録する山下航汰選手(群馬・健大高崎)の外野手転向で主役候補の一塁手がいなくなり、どこかに面白い選手はいないかと探していたとき、目にとまったのが星槎国際湘南の主砲松下壮悟選手でした。同校野球部の監督は土屋恵三郎氏。2013年夏まで桐蔭学園の監督を務め、高橋由伸(現読売ジャイアンツ監督)を始めたくさんのプロ野球選手を育成してきた名伯楽です。その土屋監督が「由伸2世」と睨んで入学を勧めた人こそ、当時中学三年生だった松下選手なのです。一年生の春から4番に据えられた松下選手は着実に打撃を磨きあげていき、高校通算50本塁打の大台が見えるところまで成績を伸ばしました。星槎国際湘南は南神奈川大会決勝戦で横浜に破れて惜しくも甲子園行きの切符をとり損ねましたが、松下選手は第1打席でバックスクリーン横の外野席に大きな1発を叩き込み、存在感を示しました。主役候補がいないのではなくて、私が見付けられなかっただけでした。左打者で一塁到達4秒37(2年夏のデータ)はものたりないかも知れません。ただ長打が売りの打者ですから許容範囲でしょう。現在進路は不明。ロマンを感じさせる選手なので気になります。
二塁手
齊藤大輝(南神奈川・横浜)
*身長178cm体重74kg/右投右打
*高校通算本塁打数未確認
*全国高等学校野球選手権大会成績
【地方大会】25打数14安打/打率5割6分0厘/0本塁打/9打点
【甲子園】13打数5安打/打率3割8分5厘/1本塁打/4打点
【合計】38打数19安打/打率5割0分0厘/1本塁打/11打点
走攻守すべてにおいて高度な技術を見せる選手です。状況次第で進塁打や本塁打に切り替える器用さ、逆境と好機に結果をだす勝負強さ、広角に打てるバットコントロールのよさ、横浜高校の主将にふさわしい技量は打率と打点数にも認められます。初めて注目したのは二年生の夏。個性的なフォームに惹かれたのが契機となりました。バットを高めに立ててゆったりと構え、テイクバックからトップに入るときヘッドを投手側に寝かせ、左足を内にねじるようにあげる動作が特徴的です。齊藤大輝選手は打撃だけではなく、あるいは打撃以上に守備が評価されています。二塁手に必要な敏捷性は言わずもがな、判断力と安定感のある捕球・送球は高校生のものとは思えないほどで、愛産大三河戦では併殺を呼ぶグラブトスで球場をわかせました。総合能力が持ち味の選手は頼もしい半面、器用貧乏になるリスクを抱えているためプロで即通用するかわかりませんが、プロ志望届を提出するにしても大学に進学するにしても、彼の名前は覚えておきたいですね。
遊撃手
松田憲之朗(京都・龍谷大平安)
*身長182cm体重84kg/右投右打
*高校通算58本塁打
*全国高等学校野球選手権大会成績
【地方大会】14打数8安打/打率5割7分1厘/1本塁打/14打点
【甲子園】10打数4安打/打率4割0分0厘/0本塁打/1打点
【合計】24打数12安打/打率5割0分0厘/1本塁打/15打点
本年の三年生には将来有望の遊撃手が多いです。根尾昂(大阪桐蔭)、小園海斗(報徳学園)、日置航(日大三)、奈良間大己(常葉大菊川)、太田椋(天理)、増田陸(明秀日立)、中神拓都(市岐阜商)。あげればキリがありません。彼らには打撃力を備えているという共通点があり、球団関係者たちは相当嗅覚を研ぎ澄ませているものと推察します。その中で小生が目を付けたのは松田憲之朗選手です。身長182cm体重84kg。高校通算58本塁打。長打力が武器の大型遊撃手です。二年生の冬にはオーストラリア遠征を経験し、木製バットながら4本塁打を記録するなど大活躍しました。精悍な顔立ちと広い肩幅はひときわ目を引き、バットをやや高めに構えるスタイルに大物の気配があります。京都大会と甲子園では1本塁打に終わりましたが、臨機応変な打撃と軽快な守備、そしてリーダーシップを見せてくれました。まだボールを追いかけて体勢を崩される場面は見られるものの、長打力のある遊撃手はめずらしいだけに将来が楽しみです。高校卒業後は大学に進むようですね。即プロ行きとはなりませんでしたが、大学野球界を賑わす存在に成長するように願っています。ちなみに従兄には炭谷銀仁朗選手(現埼玉西武ライオンズ)がいます。
三塁手
野村佑希(北埼玉・花咲徳栄)
*身長185cm体重90kg/右投右打
*高校通算58本塁打
*全国高等学校野球選手権大会成績
【地方大会】25打数7安打/打率2割8分0厘/0本塁打/1打点
【甲子園】10打数4安打/打率4割0分0厘/2本塁打/6打点
【合計】35打数11安打/打率3割1分4厘/2本塁打/7打点
ミレニアム世代最高のホームランバッターとして期待している選手です。しかし今大会のプレイは複雑な気持ちで見ていました。野村佑希選手は秋季春季を通じて本塁打を量産していましたが、通称「野村育成計画」(あくまでも『Sponichi Annex』の記事に書かれているだけで正式名称かはわかりません)により内外野手から投手に事実上のコンバート、流行の言葉を用いれば二刀流を任されて以来持ち前の打撃力が影を潜め、北埼玉大会ではまさかの打率2割8分0厘0本塁打1打点に終わりました。素人目ながら野村選手の場合は打者としての資質に恵まれているように映りますし、守備力を強化する意味でも野手に専念させていただきたかったというのが本音です。監督がどこまで「プロ」を見据えた上でご判断されたのかは不勉強な小生にはわかり兼ねるので、いい加減な推論は避けます。けれども今夏の結果には一抹の不安を抱かせられました。素晴らしいパンチ力の持ち主だけにポジションともども動向に注目したいですね。
外野手
湯浅麗斗(徳島・生光学園)
*身長187cm体重88kg/右投右打
*高校通算44本塁打
*全国高等学校野球選手権大会成績
【地方大会】16打数12安打/打率7割5分0厘/1本塁打/12打点
厚みのある体格はすでにプロのようで、体の前でバットを立て、神主打法を彷彿させるフォームで打席に立つ姿には威圧感がただよっています。スイングが大きく、頭部の後ろからバットの先端が覗くほどのフォロースルーが特徴的です。二年生の秋季大会で見せたバックスクリーン直撃の特大本塁打は衝撃的でした。粗削りながら高校生離れした飛距離に加え、50m5秒8で駆ける俊足も備えているのは魅力ですね。一見打撃力に特化した一塁手という印象を受けますが、実際は走攻守のバランスに優れた万能型であり、高い身体能力を感じさせます。外野手ではもっとも期待しているパワーヒッターです。生光学園は徳島大会決勝戦で敗れて甲子園行きは叶いませんでしたが、湯浅選手は合計16打数11安打12打点、打率6割8分8厘という見事な成績を残しました。メディアには『高校野球ドットコム』や『デイリースポーツ』にとりあげられたことはありますが、その後の情報は不足していて現在進路は明らかにされていません。個人的には是非プロの世界で見たい存在です。
万波中正(南神奈川・横浜)
*身長190cm体重90kg/右投右打
*高校通算40本塁打
*全国高等学校野球選手権大会成績
【地方大会】24打数13安打/打率5割4分2厘/2本塁打/12打点
【甲子園】14打数2安打/1割4分3厘/0本塁打/0打点
【合計】38打数15安打/3割9分5厘/2本塁打/12打点
コンゴ人の父と日本人の母を持つ大型外野手です。万波中正選手の名前をあげるのは度胸がいりました。ご存知の方ならおわかりいただけると思いますが、ポテンシャルは図抜けていても技量不足故に雑なところが目立ち、中学生時代TV番組『Going! Sports & News』で披露した身体能力の高さを生かせない日々が続きました。これだけの成績を残した選手に不完全燃焼の烙印を押すのは身勝手かも知れません。現に万波選手は挫折を味わい、高校生最後の夏を迎えて大きく成長しました。以前ほどボール球に釣られなくなりましたし、ステップを小さくしてコンパクトに振るといった工夫の成果は今大会の打率に現れています。電光掲示板や上段席に放り込む怪力はプロでも通用すると思います。素質は間違いなく一級品でしょう。ご飯を1日8合たいらげる食欲も才能の内です。ただ、あたり前ですけれどもプロの世界は技術の世界でもあり、現状では厳しいと言わざるを得ません。ドラフトで指名する球団に彼の能力を覚醒させられる人物がいればよいのですが、今の段階では指名される保証もないので悩ましいですね。眠れる獅子を目覚めさせる優秀なコーチに出会えることに期待します。
森下翔太(北神奈川・東海大相模)
*身長180cm体重77kg/右投右打
*高校通算57本塁打
*全国高等学校野球選手権大会成績
【地方大会】19打数10安打/5割2分6厘/2本塁打/5打点
森下翔太選手の素質は、名門東海大相模で一年生ながら4番打者に抜擢された経歴に現れています。三年生の北神奈川大会では決勝戦で慶應義塾に敗れましたが、高校通算57本塁打はOB大田泰示選手(現北海道日本ハムファイターズ)の65本塁打に迫る記録であり、スラッガーと呼ぶにふさわしい成績といえるでしょう。彼が東海大相模を選択する契機となったのは、中学生時代戸塚シニアのチームメイトだった齊藤大輝選手の進路でした。齊藤選手が横浜に進むことを知ると「齊藤大輝との対戦に勝利して甲子園にいきたい」と決意し、ライバル校である東海大相模を選んだそうです。少年漫画のような熱い展開ですね。身長180cmに対して体重80kg未満と大柄ではありませんが、全身を使った豪快なスイングで場外まで飛ばすパワフルな面を持っています。フォロースルーで左足を外にステップするところは山田哲人選手(現東京ヤクルトスワローズ)のようで、長打力と敏捷性を兼ね備えた選手に成長する予感を覚えますね。サヨナラ弾や同点弾が多く、勝負強いところも魅力的です。
ここまでお読みになり「何かたりなくね?」と怪訝に思われる方もいそうです。いるに決まっています。自分が読んでもそう思います。ご覧の通り第100回全国高等学校野球選手権大会の優勝校である大阪桐蔭の選手をあげていないのは、決して低評価をくだしているからではありません。むしろ逆です。投手と遊撃手を兼ねるオールラウンダー根尾昂選手、高校生屈指の総合能力を持っている藤原恭大選手を始め、最速151kmを投げるエース柿木蓮選手、190cmの長身から投げおろす直球と多彩な変化球を武器にする横川凱選手、全内野を経験している主将中川卓也選手、甲子園通算67打数27安打で打率4割0分3厘という安定感を見せた山田健太選手、捕手経験を生かした強肩と50m6秒1の俊足が魅力の宮崎仁斗選手。
大阪桐蔭は数多のプロを輩出していますが、今年の層の厚さは過去最高級といっても過言ではなく、甲子園でも圧倒的な強さを見せました。特に根尾昂・藤原恭大両選手はともに3本塁打を決め、抜群の投球・攻守で文句なしの輝きを放ちました。アジア選手権を経てますます注目度は高まると予想されます。なので詳細はほかの新聞やブログに任せて、ここではあえて大阪桐蔭以外の選手をとりあげてみました。とはいえ一言も触れないまま筆を置くのはやはり無理でした。
この記事を執筆している現在、進路が明らかにされている選手はわずかです。プロ志望届を提出するのか、大学に進むのか、社会人を希望するのか、球児たちにはさまざまな選択肢が用意されています。野球好きとしては注目選手を早くプロの世界で見たいですが、進路は人生に関わる大きなテーマです。後悔しないよう納得できる道を選んでいただきたいですね。球児たちのさらなる飛躍を願いましょう。
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※続編『ドラフト会議に向けて脳内会議 2018』を公開しました。プロ志望届を提出した選手から、注目の高校生と大学生を紹介しています。ぜひ読んでくださいネ。→『ドラフト会議に向けて脳内会議 2018』へ!
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