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こみこみこ
2020年9月16日 17:44
暦の上ではもうすぐGWであるというのに、今年はその気配すら感じられない。どこへ行っても営業が自粛されたり、短時間しか活動できなくなったりしているからだ。繁華街から人は消えたが、住宅地では増えた。企業がテレワークを推進し、子供たちは目下休校中の身である。朝早くから遅くまでエネルギーを持て余した子供たちの声を聞くと、広季は一人娘の可南を想い、涙を流していたのだった。しかし、そんな毎日も昨日で
2020年9月11日 14:20
広季は部屋のインターホンが鳴ったと同時にドアを開けた。姿が見えないよう、ドアに身を隠す。「さあ、入って。振り向いては駄目ですよ。まっすぐ歩いて」「はい」美里の肩を抱いて紗雪が入ってくる。「さ、ベッドに腰掛けて」二人は広季に背を向けてセミダブルベッドにゆっくりと座った。紗雪は美里の背中を撫で、耳に髪の毛までかけてやっていた。「大丈夫、大丈夫」耳元で囁くと、美里は肩の力を抜き、深く息
2020年9月6日 15:31
タクシーは5分もしない間にやってきた。スマホをいじっていた紗雪を先に乗せ、広季はあとに続いた。「桜ノ宮のホテルブルームまで」「はい」金髪をひっつめにした初老の女性運転手は、紗雪の注文に甲高い声で答えた。少し無邪気で幼女のような明るい声だった。車は静かに動き出した。「お客さん、ちょっと寒いかもしれませんけど、コロナ対策でちょっと窓開けさしてもらってますんで」広季は車内の窓を一つ一つ見
2020年8月18日 23:23
広季は朝からずっと泣いていた。ネットフリックスで話題の韓国ドラマを観ているうちに、感情移入しすぎて気がつけば涙を垂れ流していた。「お前、ほんまによう泣くなあ」同じソファに腰掛けているスリムが呆れかえっている。「年取ったら涙腺ゆるうなんねん」「そうですか。あ、電話や」テーブルの上で光るスマホをスリムが指さした。広季はティッシュペーパーで鼻水を拭きつつ、スマホを取り上げた。画面には、妻