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小説 桜ノ宮

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大人の「探偵」物語。 時々マガジンに入れ忘れていたため、順番がおかしくなっています。
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#夫婦

小説 桜ノ宮 ㉙

小説 桜ノ宮 ㉙

暦の上ではもうすぐGWであるというのに、今年はその気配すら感じられない。
どこへ行っても営業が自粛されたり、短時間しか活動できなくなったりしているからだ。
繁華街から人は消えたが、住宅地では増えた。
企業がテレワークを推進し、子供たちは目下休校中の身である。
朝早くから遅くまでエネルギーを持て余した子供たちの声を聞くと、広季は一人娘の可南を想い、涙を流していたのだった。
しかし、そんな毎日も昨日で

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小説 桜ノ宮 ㉗

広季は部屋のインターホンが鳴ったと同時にドアを開けた。
姿が見えないよう、ドアに身を隠す。
「さあ、入って。振り向いては駄目ですよ。まっすぐ歩いて」
「はい」
美里の肩を抱いて紗雪が入ってくる。
「さ、ベッドに腰掛けて」
二人は広季に背を向けてセミダブルベッドにゆっくりと座った。
紗雪は美里の背中を撫で、耳に髪の毛までかけてやっていた。
「大丈夫、大丈夫」
耳元で囁くと、美里は肩の力を抜き、深く息

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小説 桜ノ宮 ㉔

小説 桜ノ宮 ㉔

タクシーは5分もしない間にやってきた。
スマホをいじっていた紗雪を先に乗せ、広季はあとに続いた。
「桜ノ宮のホテルブルームまで」
「はい」
金髪をひっつめにした初老の女性運転手は、紗雪の注文に甲高い声で答えた。
少し無邪気で幼女のような明るい声だった。
車は静かに動き出した。
「お客さん、ちょっと寒いかもしれませんけど、コロナ対策でちょっと窓開けさしてもらってますんで」
広季は車内の窓を一つ一つ見

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小説 桜ノ宮 ⑯

小説 桜ノ宮 ⑯

広季は朝からずっと泣いていた。
ネットフリックスで話題の韓国ドラマを観ているうちに、感情移入しすぎて気がつけば涙を垂れ流していた。
「お前、ほんまによう泣くなあ」
同じソファに腰掛けているスリムが呆れかえっている。
「年取ったら涙腺ゆるうなんねん」
「そうですか。あ、電話や」
テーブルの上で光るスマホをスリムが指さした。
広季はティッシュペーパーで鼻水を拭きつつ、スマホを取り上げた。
画面には、妻

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