見出し画像

母が鯛を買った理由

一番気になっている会社から、採用の連絡が来た。
来月の中旬から新しい仕事のスタートが決まった。
季節の変わり目で体調を崩し、熱でフワフワしている頭に「こちらとしてはぜひ一緒に働きたいと思い…」という声が届いた。
鼻声で精一杯よろしくお願いします!と言った。
嬉しい3月のおわり。

一次面接から最終試験までずっと横で見守ってくださった採用担当の方から電話で連絡が来て、それも嬉しかった。おせっかいはしないが、さりげなく何気ない優しさが染みる方だったから。
あなたの声で言われると嬉しい。
そういう人に私もなりたい。

自分はこの仕事が合っていると思い続けてきた仕事で頭痛が止まらなくなり、辞めてから少しかじったバイトで「どんな仕事をやってもいいんだよな」と固定概念を壊せた。
一度入ろうと決めた会社の大問題が発覚して断念したり、今までやったことのない仕事へ応募したら3回断られたり、「あなたの経験を活かす職種なら良い条件を出すから来てほしい」と言われてグラついたりした数ヶ月だった。今月Twitterで投稿した転職活動の日記を読み返す。

-- -- -- -- --

一番気になっている会社の面接が終わった。建物の入り口がわからなくて聞いたら優しく教えてくれた倉庫の方。見学も説明もさらっとしたラフさがありつつも丁寧にしていただいて、挨拶が当たり前に飛び交っていた。小さな会社だけど、ますます行きたくなった。こういう会社にご縁がある人間になりたい。



今日、一番気になっている会社の一次面接が通ったと連絡があった。車の信号待ちでガッツポーズをした。二次面接に行けるありがたさをかみしめて車の中でくるりのハイウェイを歌った。
4月から旦那さんの転勤で東京に引っ越す友人と最後のご飯をした。同じ職場で苦労を共にした戦友が、新たな地でとにかく心身無事で暮らしてほしいと思った。
鯛と桜エビの柚子胡椒パスタがびっくりする程おいしかった。
就活だ。別れだ。出会いだ。桜エビだ。春だ。



今週、気になっている会社の二次面接と試験が終わった。
英語と数学がちんぷんかんぷんだったけれど、専務面接で漫談風に話してひとウケしたので、悔いはない。
行きは緊張して気づかなかった桜が、帰り道はたくさん見えた。

-- -- -- -- -- 

居間でテレビを見ていた母に、採用の連絡がきたよーと報告した。えっ!?えっ!?と言いながらこちらを向いて、突然「だからか〜!私今日なぜか鯛を買ってきたのよ。違う魚買おうと思ったのに鯛がおいしそうでさ!」と言われた。

わかるようでよくわからない話をする母だけど、祝ってくれているのはわかる。
鯛はとてもおいしかった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?