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生命は物理法則に反している?

前回、「エルゴード」という、語感も好きな物理用語を紹介しました。

あらためて、エルゴード的とは「ある閉じられた場所の中で、時間がたつと物理量(温度・エネルギーなど)はならされていく」というもので、何となく直観的に得心がいくものです。

で、上記記事では特定の原子をある回転域で非エルゴード的になり、今後の材料開発に応用できるかも?という話でした。

通常は我々の宇宙(大げさ?)ではエルゴード的なふるまいをみせるわけですが、ただ少々突っ込みセンサーを高めるとそうでもない事象があります。

「我々の生命活動を担う分子」については、エルゴード的でない、とも見立てられます。

「担う分子」と大層な書き方をしましたが、その大半を担う「タンパク質」といったほうが分かりやすいかもしれません。

今時点で(人工的に生成可能なもの含めて)100個以上の元素が見つかっています。

その元素(または原子)を組み合わせたものが分子ですが、もしエルゴード的であるなら、元素の存在比率に応じた分子の個数が存在しそうです。

が、実際にはそれを構成するたった20種類のアミノ酸の組み合わせから調合され、上記の解説記事によればたった10万種類のタンパク質しか存在しません。

勿論まだ未発見のタンパク質があるのかもしれませんが、にしてももっともっと多様であったほうが「エルゴード的」です。

このあたりは、生命とは何か?、に絡んでくる話でなかなか複雑な事情がありそうです。

エルゴード的であることをある程度踏まえて、今の物理法則は受け入れられています。

一番それを感じさせるのが、意味合いが近い「エントロピー」という乱雑さを表す物理量です。

熱力学でいえば、時間がたつと温度差がなくなってならされていく(例えば風呂場の熱湯を放置すると風呂場全体の温度に近づく)現象で、まさにエルゴード的な現象です。

このエントロピーという言葉を使って生命を定義した、歴史的に有名な言葉があります。

「生命は負のエントロピーを食べて生きている。」

これは物理学者シュレディンガーが下記の書籍内(かそれ以前の公の場)で唱えたものです。

関連する説明サイトをみつけたので引用しておきます。

負のエントロピーというのは物理的には存在しないようですが、ただ我々含む生命が営んでいるのは結果として物理法則(エントロピー増大則)にあらがっています。

つまり、生命活動がエルゴード的でない、というミステリーを解くことは、生命とは何か?を探ることにもつながってくるかもしれません。

我々が身近すぎて気づかない「生命現象」は、じつは数百年にもわたって磨いてきた(または前提としてきた)物理法則に抗っているかもしれません。

この偉大なる矛盾(?)が生命の探究によっていつかは紐解かれていくと信じています。

<参考リソース>

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