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ナノスケールでもチューリングが出現

以前に、チューリングの生物学における成果について触れました。

ようは、
生物が持つ模様パターンを数学的な攪拌モデルで表現した、
という話です。

これは「チューリングパターン」とも呼ばれ、よく取り上げられるのが熱帯魚やヒョウの縞模様です。

マクロな現象での研究でしたが、最近の研究でなんと原子レベルのサイズでもこのパターンが確認されました。

ようは、
半導体製造で必要な微細な線状のパターンに成功し、チューリングパターンと類似の現象だった、
という話です。自然や生物が拡散していく様子が原子レベルでも再現出来た、ともいえます。

人工的に設計した機械の中で最も重要な1つが、コンピュータの演算素子にあたる半導体です。

その半導体では高密度競争が進み、次世代半導体に求められているのは、数nmという超微細な回路幅です。(現在普及しているのは7nm程度)

過去の関連記事を引用しておきます。

そんな半導体開発にも貢献できる超微細加工技術に関する発表です。

なんと、1nm(10のマイナス9乗)幅での数μm(10のマイナス6乗)の直線を描くことに成功します。

出所:プレスリリース内の図

通常の回路幅を設計する方法を、電子ビーム・リソグラフィと呼び、ざっくりいえば、ビームをあてて削る技術です。

ただ、これだと分子サイズのナノメートルまで細かくすることが難しかったのですが、今回は逆にボトムアップ方式です。

今回の手法は、パルスレーザー堆積法と呼びます。

レーザー光を、ターゲット物質(今回は塩化ルテニウム(RuCl3 ))に短時間で繰り返し照射することで、その物質を基板に蒸着する方法です。

出所:プレスリリース内の図

超微細加工技術もすごいですが、それをここまの解像度でみれてしまう計測技術にも驚きです。

これは「走査型トンネル顕微鏡 (STM)」と呼ばれる技術です。

探針を試料直上 1 ナノメートルほどまで近づけると流れる電流(トンネル電流)を測定し、原子サイズの分解能まで観察できます。

この結果を見ると、単に直線状だけでなく、渦巻き状といった曲線も描いているようで、半導体の幅を刻む以外にも応用が期待出来そうです。

プレスリリースの最後には、基礎研究への発展への期待も触れています。

もしかしたらこの状態は、「朝永・ラッティンジャー液体」なのではないか、との期待もされています。

ようは電子とスピンとが分離した状態とのことで、素粒子間の力の働き方の特徴で面白いことが出来そうです。
なかなか歯ごたえがある内容なので、すぐに応用が思い描きにくいですが、実用化だけでなく、基礎研究まで広げるというのは素直にすごいです。

チューリングもまさかここまで自身最後の生物の研究がミクロスケールまで広がるとは思ってなかったかもしれません。

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