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シンギュラリティな話(その1):言葉の歴史

chatGPTブームの流れで、シンギュラリティ(特異点)が当初予想よりも早く到来するのでは?という意見を聞くようになりました。

シンギュラリティは元々数学の用語で、それと区別するために「技術的特異点(technological singularity)」と呼ばれることもあります。

伝道師として有名なのが、現在はGoogleで脳の研究から知性を解明しようとするレイ・カーツワイルです。

2005年に出版した”Singularity Is Near"(和訳版タイトル「ポスト・ヒューマンン誕生」「シンギュラリティは近い」)で、特異点の到来を2045年に置き、それに至る過程を予測しています。

今から10年以上前にこの本を初めて読んだときは、SFなのか疑似科学なのか咀嚼するのに混乱したのを覚えていますが、カーツワイルは多大な業績を残す研究者であり発明者です。

有名なものを1つ挙げると、OCR(要は書いた文字を認識する機械)も彼が初めて実用的な製品を発明しました。

今回は個別の意見でなく、数学上の「シンギュラリティ」という当初の定義について、現実世界との接点について触れておきます。

元々数学用語と書きましたが、ざっくりいうと「あってはならない状態のこと」を指します。(数学なのであまりざっくりは危険なのですが・・・)

よく説明時に例示されるのが「数字をゼロを割った状態」です。

そして現実世界で直面したのが、「宇宙物理」で、アインシュタインの「一般相対性理論」で宇宙を描画しようとしたときでした。
この理論は、時間も空間も重力の影響で相対的に歪むとしており、その歪みをリーマン幾何学という特殊な数学を使って表現しています。

以前に、この理論の厳密解を早々に提出したシュバルツシルトの話をしました。その中で浮上したのが先ほど触れた特異な解です。

当初はアインシュタイン含めてあくまで理想化した非現実的なモデル、とくくりました。つまり現実世界には存在しない、ということです。

その議論に一石を投じたのが、以前紹介した数理学者ペンローズです。

ようは、
どのようなモデル(物理的存在)であっても、特異点は一般的に発生するということを数学的にで証明した、
ということです。

この数学は微分幾何学(トポロジー)という、斬新な手法です。
さらにこの発想を宇宙全体に広げてスティーブン・ホーキングという強力な後輩と共に、宇宙初期にも特異点が存在する可能性を示します。

一旦今回は、数学と物理の世界としてのシンギュラリティの話としてここまでにとどめておきます

ちなみに、冒頭に紹介したカーツワイルは、2024年に"Singularity Is Nearer"を出版する予定です。
今のカーツワイルがどう考えているのか、将来予測をして今から楽しみたいと思います。


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