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【シナリオ】大学四年、ダンス部引退前夜の話。

〇莉子の家
明日はダンスサークル引退前の最後のステージ。
莉子の家に泊まりに来ている、栞と琴。
栞はパソコンで血眼になってレポートを書き、琴はスマホでダンス動画を確認している。
お風呂上がりの莉子、部屋に入ってくる。

莉子「終わった?」
栞「あと1000字。」
莉子「お、いける!」
栞「いけねーよ!ここからが鬼なんだよ。あー。出てこねー。文字が降ってこねー。」
莉子「文字は降ってこないよ。生み出すもんだよ。」
栞「正論言うな。」
莉子「こっちゃんは?」
琴「…。」

動画に夢中になっている琴。
顔を見合わせる莉子と栞。

栞「おい琴ー。」
琴「…。」

莉子、自分のスマホを手に取り、ある曲を流す。
すると琴、ムクっと立ち上がり踊り出す。

栞「病気か!」

莉子、音を止める。

琴「はっ!」
栞「はっ!じゃねーよ。こえーよ。脳みそダンス占めすぎ。」
琴「いや、だってー。」
栞「逆によくそこまで緊張できるよなー。」
莉子「わかる。私もまだ全然実感湧いてない。」
琴「緊張してないよ。ただ、焦ってるだけ。」
莉子「あれ、今朝ご飯食べて気持ち悪くなってたの誰だっけ。」
琴「うっ。」
栞「それで遅刻してきたのは誰だっけ。」
琴「うぅっ…。」
莉子「二日酔いで遅刻してきたのは誰だっけ。」
栞「申し訳ございませんでした!!!」
莉子「(パソコン指して)はよやれ。」
栞「はいいい!!」

栞、再びパソコンでレポートを書き出す。

琴「いや、私だって実感湧いてないんだよ。明日本番で、明日でダンス部卒業するとか、正直全然…。身体が勝手に、緊張してるだけ。」
莉子「面白いね、こっちゃん。」
琴「なにが!はぁ、もーほんと、りこぴはいつも普通な顔してるよね。」
莉子「普通な顔?」
琴「どんな時も平常心っていうか、悲しい時でも泣いたりあんましないじゃん?」
莉子「あー。」
栞「酒入ったら泣くよこいつ。」
莉子「確かに酒入らないと泣かないかも。」
栞「明日莉子に酒入れさせようぜ。絶対泣かせたい。」
莉子「なぜ。」
栞「俺も、こっちゃんも、色音も凪も、まぁ泣くのは安易に想像出来んだけど、お前だけ泣きそうにないじゃん。なんか納得いかない。」
莉子「いいよ私は、みんなが泣いてる時にヨシヨシする係で。」
栞「つまらん!」
琴「いや、それはそれでありかも。」
栞「は?」
琴「莉子ぴにヨシヨシはされたい。普通に。高身長姉御美人にヨシヨシは、私の何かに刺さる。」
栞「素直に性癖と言え。あと私もわかった。されたい。でもさ、泣いてる莉子が、強がって泣くの堪えながら、俺らのことヨシヨシしてるほうが萌えない?」
琴「確かに、萌える!!!」
莉子「絶対泣かないしヨシヨシもしないからね。」
栞「えーなんでよおおー!」
莉子「(パソコン指して)やれ。」
栞「はい!!」

栞、パソコンでレポートを書き出す。

琴「いかなる時も酒入らないと泣かないの?」
莉子「いかなる時(笑) んー、まぁ、、中高の卒業式も泣いたこと無かったしなぁ。」
琴「へー。」
莉子「こっちゃんはガン泣きしそうだよね。」
琴「うん。ガン泣きだった。目腫れた。」
莉子「冷めてんだよ私。きっと。中高に思い入れなんてなんもなくて、なんだろ、なんとなーく、日々を送ってきたといいますか。」
琴「うん。」

莉子、立ち上がり冷蔵庫から氷結をとる。

莉子「飲む?」
琴「まじ??明日本番だよ?」
莉子「1本だけ。」
琴「強いね。」
栞「俺も!」
莉子「(パソコン指して)ん。」
栞「はい。」

莉子、琴の隣に座り直し、缶を開ける。

莉子「部活もやってなくてさ。ほんと、なんとなーく過ごしてきたからさ。」
琴「なんか、勝手な偏見言っていい?」
莉子「うん。」
琴「怒られるかもしれないけど…。莉子ぴって、あんまり物事にのめり込まないというか、1歩引いてるイメージがあるんだよね。友達とはすっごい仲良いんだけど、なんか、なにかにすごい熱中してるイメージがないというか。」
莉子「言うね。」
琴「ごめん。」
莉子「そんな人間がね、」
琴「あ、合ってた?」
莉子「うん(笑)」
琴「あっ、(笑)」
莉子「そんな人間が、初めてマジになったものだったの。」
琴「何が?」
莉子「ここ(笑)」

琴、莉子の部屋を見渡す。

莉子「ダンスだよ!!(笑)」
琴「…あー!!!」
栞「こっちゃんってマジ変なとこ馬鹿だよね。」
琴「シオに言われたくないよ。」
莉子「この4年間は、宝物のような日々だったんだよ。…臭いね。」
琴「臭い。ビックリしてる。りこぴからそんな言葉聞けるなんて。」
莉子「もう酔ったかな。」
琴「早くない?」
莉子「ね。…だから明日、どうなっちゃうんだろう。」
琴「二日酔い?」
莉子「…まじこっちゃん。まじこっちゃん!!」
琴「え???」
栞「汲み取ってやれよ(笑)」
琴「えええ??」
莉子「明日、引退を前にして!!!今まで卒業で泣かなかった私が!!!」
琴「…泣く!?!?」
莉子「そうだよバカ!!!」
琴「ごめん!!!」
莉子「普通すぐわかるから!!!」
琴「ごめん!!!」
栞「現代文3点みたいな解答したよな(笑)」
琴「レポート終わってない人に言われたくない。てか明日引退ステージで今レポートやってんのほんと考えらんない!!普通もっと、やる事あるでしょ!!」
栞「しょーがないだろ練習漬けだったんだからー。」
琴「みんな一緒だわ。な?」
莉子「な。」
栞「あー、明日莉子が泣くの楽しみだなー!」
莉子「レポート終わらないで泣くシオが楽しみだなー。」
栞「キー!!!」

莉子、氷結をグビっと飲む。

莉子「はー。楽しみだね、明日。」
琴「…うん!」


おしまい

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