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#恋愛
『約3分のデート』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2022年5月10日オンエア分ラジオドラマ原稿)
女 「じゃあ、お互いせーので好きな人を言い合おうよ」
男NA 「彼女はそう言って、少し笑った。
大学に入って初めての夏休み、高校時代の同級生の女の子と、
僕はばったりももち浜で再会した。
僕らは高校3年生で同じクラスになって、
お互いとても気が合っていたように思う。
僕は彼女に好意を持っていたし、彼女も僕に好意を持っていた。
事実クラスで一番、
『春の風』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2022年5月3日オンエア分ラジオドラマ原稿)
春の風が吹いていて、今日はなんだか日がいいみたいだ。
僕はおみやげを持って彼女のところへ出かけた。
♪BGM:サニーデイサービス「おみやげを持って」
中華料理のバイトの休憩中に、いつもワイヤレスイヤホンをして彼女はコーヒーとドーナツを食べていた。
少し笑った気がして、僕は彼女に思い切って話しかけてみた。
男「いつも、何の曲を聴いてるんですか?」
女「え?」
彼女は片方のイヤホンを取って、笑
『夏の夜空』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2022年4月26日オンエア分ラジオドラマ原稿)
同僚に誘われて海辺のバーベキューパーティーにやってきた。
西の空では、夏の太陽が、本日の仕事を終え
東の空では、夜空がスタンバイしている。
何人いるんだろう?
ざっと100人くらいだろうか?
その場に参加している人は、みなが知り合いというわけでもなさそうだがどこかで誰かが知り合いのようだ。
社交的な同僚は、いつものようにグループの中心にいる。
人見知りの僕には、彼のような真似はで
『終わって始まる』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2022年1月25日(再放送:2022年1月29日)オンエア分ラジオドラマ原稿)
今回の作品は前回の作品「彼女の提案」の続編にあたります。
女「あのバー閉店するんだって」
5年ぶりにきた彼女からのLINEはそんな一言だった。
彼女からのLINEには驚いたが、バーの閉店にはさほど驚かなかった。
マスターは老齢だったし、
5年前に僕らが通ってた頃でも、いつも静かなバーだった。
カウンターに座ってジントニックを飲んで、どこに旅行にいこかとか、今度あの店に行ってうなぎを食べようだ
『彼女の提案』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2022年1月18日(再放送:2022年1月22日)オンエア分ラジオドラマ原稿)
女「猫を飼ったら?」
そう提案してきたのは別れた彼女だった。
別れたあとも僕らは何度かバーで会った。
彼女とカウンターに座ってビールを飲んだりカクテルを飲んだりした。
それは別れるときの約束の一つでもあったから。
女「このバーで会ったら、楽しく飲みましょ」
そう提案してきたのもこのバーだった。
それから僕はこのバーにたまに一人で行くようになった。
彼女に会うこともあれば会わないこともあった。
『次のカクテルまで』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2022年1月11日(再放送:2022年1月15日)オンエア分ラジオドラマ原稿)
男1「マスター、いつもの」
男2「じゃあ、俺も」
マスターはうなずき、道具を手に取り、手際よく作り始める。
僕はスマホを取り出し、アプリを立ち上げた。
その横で、画面をのぞき込んでくる同僚。
男2「マッチング?」
男1「そう」
男2「ハマってるね~」
男1「時間があると、つい見ちゃうんだよ」
男2「で、マッチングの成果は?」
男1「会ったりするよ」
男2「会ってんの?」
男1「まぁ、お茶し
『先輩のお弁当』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2022年1月4日(再放送:2022年1月8日)オンエア分ラジオドラマ原稿)
女「すごーい、それ先輩が作ったんですか?」
男「ああ、うん。いやちょっと恥ずかしいな」
女「え、彼女さんとかじゃなくて?」
男「いや、いないし」
女「え、そうなんですか?」
男「え、うん」
女「へー」
男「いや、哀れみの目になってんじゃん」
女「そういうわけじゃないです。いつも美味しそうなお弁当食べてるなって思ってたんです」
男「え、見てたの?」
女「見てました。すっごい美味しそうだなって。まさか
『クリスマス』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2021年12月7日(再放送:12月11日)オンエア分ラジオドラマ原稿)
男 ごめん、ごめん待った?
女 もう、遅いよ。
男 ごめんね、ちょっと乗ってた電車が遅れちゃって。
女 それはさっきLINEで聞いたけど。
男 なんか好きなスイーツひとつ買ってあげるから。
女 本当? じゃあ許してあげる。あ、ちょっと待ってね。
男 なに? プレゼント?
女 違うよ、こんな着いたばかりで渡さないから。それは後でね。これこれ。
男 え? ビデオカメラ?どうしたの?
女 今日の
『いつものデート』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2021年11月9日(再放送:11月13日)オンエア分ラジオドラマ原稿)
(騒々しい店内の定食屋)
店員「ご注文はお決まりですか?」
男「エビフライとヒレカツランチと、ロースカツとチキン南蛮ランチ」
店員「は、はい」
僕はいつもランチでは2食分頼む。
そして大体いつも、隣に座ったサラリーマンやOLたちに『そんなに!?』と驚いた顔をされる。
少ししたら僕の目の前には大量のカツが並んだ。
僕はベルトを緩めて、今ならひょっとしたら全部食べられるんじゃないかと思ったりする。
『秋を知る』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2021年11月2日(再放送:11月6日)オンエア分ラジオドラマ原稿)
彼女は料理が得意だった。
女「こんなのてきとーよ。クラッカーにマリネサーディンとアンチョビ、ハラペーニョスライスを順番に乗っけて最後にミントを飾っただけ」
男「うまいよ、このスパイシーマリネサーディンのピンチョス」
ブランデーを飲んでいるとお酒にあったおつまみを彼女はささっと作って出してくれた。
ビーフジャーキーとクリームチーズのディップ。
アーモンドとレーズンのポテトサラダ。
女「このコ
『別れるとき付き合うとき』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2021年10月26日(再放送:10月30日)オンエア分ラジオドラマ原稿)
付き合い始めるときに別れることを考える人間はいない。
しかし別れないと思っていても、別れるときは別れる。
女「どうしようツナ」
「ニャー」という泣き声。
男「どうしたいツナ?」
また「ニャー」という泣き声。
ツナは何かを言っているようだが、僕らにはやはり分からなかった。
女「ツナには選べないよね」
男「そうだな」
ツナは保護猫だった。
母猫からはぐれたであろう子猫を河原で見つけて
『秋の恋』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2021年10月19日(再放送:10月23日)オンエア分ラジオドラマ原稿)
女「夏は男を少年に戻し、女を大人にする」
ジャックローズを口して彼女はそう言った。
女「そう思わない?」
彼女の唇はまるでジャックローズで染められたように真紅だった。
女「夏の恋がすぐに終わる理由、分かる?」
男「ひと夏の恋ってやつだね」
女「なぜ夏は恋をしたくなるか。それはみんな薄着だからよ」
男「僕らは肌色に恋をするってこと?」
女「あながち間違いではないわね。薄着だと相手の体型が分か
『告白のタイミング』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2021年9月21日(RE:9月25日)オンエア分ラジオドラマ原稿)
(本作は4月27日放送分「仲良くなりたい」の続編になります)
ゼミで一緒のあの娘に僕は恋をしている。
明るいブラウンだった髪は最近黒くしてショートボブになった。
広いおでこがはっきり分かるくらい前髪は短くしている。
少し目尻の下がった大きな瞳にしっかりした眉毛。
きれいに真っ直ぐ伸びた鼻筋に控えめな小さな鼻。
薄い上唇に反してぷっくりとした下唇。
端っこは常に上がっていて、笑うときは口を大きく
『猫と彼女』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2021年9月7日(RE:9月11日)オンエア分ラジオドラマ原稿)
夜中に一人、部屋でボウモアをロックで飲んでいると飼い猫が話しかけてきた。
猫「最近彼女来ないね」
やれやれ。
このシングルモルトは40度もあるんだ。5杯も飲めば猫が話しかけてきてもおかしくない。
猫「どうして彼女は来なくなったんだい?」
猫は大きな目をしてこっちを見ていた。
「君にまだ言ってなかったね。彼女とはもう終わったんだ」
僕は猫に伝えた。
猫は悲しい顔をした。
猫「つまり彼女