ボランティア団体あずまやこぼれ

高松在住。趣味は創作。小説やRPGのストーリーなど。ボランティアはじめました! ホーム…

ボランティア団体あずまやこぼれ

高松在住。趣味は創作。小説やRPGのストーリーなど。ボランティアはじめました! ホームページhttps://kobore-azumaya7.jimdofree.com/ お問い合わせはこちらkobore.azumaya@gmail.com

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香川で不登校の子を対象にしたボランティアをはじめました!

はじめまして。主は元不登校、高校中退、高松市在住のゲーム好きです。子どもたちの孤独な時間が少しでも減ればと思い、この活動をはじめました。 対象は香川県在住、18歳以下の方。 つながりがほしい方、ゲームが好きな方、しゃべるのが苦手でも大丈夫。お気軽にお問い合わせください。 Discordでつながり、のんびりお話しながらゲームをしましょう。プレイするゲームはスプラトゥーンやヒューマンフォールフラットなどオンラインでできるもの、子どもたちが希望したものを考えています。 この団

    • ボランティアをはじめた理由

      ぼくはこれまでいくつかのボランティアに参加し、子どもと関わってきました。不登校の子とボードゲームをしたり、特に目的もなく雑談をしたりしました。積極的に話しかけてくれる子もいました。 ですが自分の幼少期を思い返してみると、ぼくはそんなふうに大人と関わることはできなかったと思います。大人を信用できず、大人たちが所属している社会も信用できませんでした。自分から同級生に話しかける余裕もなくて、前を向いて歩くこともできず、下ばかりをみていた気がします。 このボランティアをはじめたの

      • 【小説】ミヤマ 8

         8  美術の授業。ミヤマとライとユズの三人は同じ机につくのが習慣になっていた。もともとはひとりでいたのに、どうしてこうなったのかと、ミヤマは時々不思議に思う。ここは彼の場所だった。ほかの二人は部外者だった人間だ。遠く隔たった大陸から船に乗ってこの島へやってきた。その理由を、ミヤマはよく知らない。  けれども終わりが近づいている。胸に空いた空虚さは埋まらない。 「よかったらきみのペンを貸してよ。エメラルド色のペンって、わたし持ってないんだ」  ミヤマは無言で隣のユズに

        • 【小説】ミヤマ 7

            7  ライの住むアパートは中野のさびれた住宅街にあった。住民の自転車は乱雑に駐輪され、雨風にさらされている。部屋の扉の前にはそれぞれ洗濯機が設置されていて、ホースが排水溝へと繋がっていた。建物は二階建てで、廊下を照らす電灯はところどころ点滅している。  ライのあとにつづいてミヤマは錆びた鉄の階段をのぼった。バイト終わりに誘われたのだ。足音が夜の静けさによく響いた。ライの背中からはわずかに汗のにおいが漂ってきた。 「ここがおれの棲み処だ」  ライが指し示したのは二階

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        香川で不登校の子を対象にしたボランティアをはじめました!

          【小説】ミヤマ 6

            6  美術館にはいつものようにひとがいなかった。例の絵画の前に辿り着くと、そこにはこの美術館のオーナーであるグレーのスーツを着た老人が立っていた。 「こんにちは。なんとなく、今日は会えると思っていましたよ」  老人が話し出すと、彼の全身から甘い果物の香りが放出され、ミヤマの鼻に届いた。少年は老人の隣で立ち止まり、かつては夢だった、いまは色褪せた絵画を見上げた。 「ここしばらく、あなたのことを案じていました」老人は言った。「あなたが初めてこの美術館を訪れてから、ここ

          【小説】ミヤマ 5

           5  それからしばらくの間、ミヤマはバイトをつづけた。お金ほしさからではなく、単にそうすることが正しいと思えたからだった。回数を重ねていくにつれ、腰まわりの筋肉が肥大していくのを少年は意識していた。若い肉体はすぐに労働へと適応し、最適な形に変化した。  学校が休みの日には、決まってユズが働く店でランチをとった。ミヤマがいやだと首を振ればそのような習慣は生み出されてなかっただろうが、少年にそんなことはできるはずもなかった。彼は秩序を壊すことを極度に恐れていたからだ。小さな

          【小説】ミヤマ 4

            4  彼女は夏の桜に似ていた。青々とした葉を揺らし、風にうららかな歌を乗せる。花びらは裏に表にひるがえり、ひとつ前の季節に散ってしまったけれど、季節が巡ればまた咲く。  ミヤマは彼女の足元で休んでいた。広がった白いワンピースの裾に包まれ、揺り籠に揺られるように。風が草原を吹き抜ける。草花はこすれあい、弦を弾いて悠久の記憶を奏でる。そこには少年と彼女の二人しかいない。鳥も獣も、雲の影さえ存在しない。  ミヤマは語りかけた。鏡のような水面をなでるように。彼女は踊っている

          【小説】ミヤマ 3

            3  新宿のビル群に埋もれた一画に営業している『ピンクパイナポー』という店は、午後の五時になってから開店する。ウィンドウにはセクシー女優が卑猥なポーズをとるポスターが貼られ、看板は妖しげな色のネオンで照らされている。古くなった紙や、プラスチックの断面のにおいが、自動ドアの隙間から外に漏れている。  ミヤマが店に入ると、薄暗いカウンターに立っていた店員が視線だけをこちらに向けた。禿頭に潰れた耳。きれいに折り目のついた青いエプロン。店員は何事もなかったかのように視線を戻し

          【小説】ミヤマ 2

            2  太陽の光が瞼の向こうを照らすとともに、少年は目を覚ます。なんの衒いもない、穏やかな浮上だ。内側から寝袋のファスナーを下ろし、体を起こすと、今日一日、これから起こるであろう未来が少年の脳内を駆け巡った。予想通りの定式化された未来。しばしベンチの上でたたずむ。  同じく園内に寝泊まりしていた人々も一日のはじまりを迎えつつあった。ブルーシートのテントから顔を出す老人。もぞもぞと身動きする段ボールの塊。ひとの気配は少ない。時折、朝のランニングで公園を訪れた人間がミヤマの

          【小説】ミヤマ 1

            1 「わたし、てっきりあの男のひとが死んでるもんだと思っちゃった」女生徒はそう言って、水道の蛇口を捻った。「だって、頭が切れて、傷口からシャワーみたいにどばどばと血が流れていたんだもの。だれだってそう思っちゃうでしょ?」  パレットの上の乾いた絵の具を水にさらしながら、その声が自分に向けられているものと、ミヤマは認識した。かつお節みたいに乾いた筆を水のたまったパレットに押しつけ、毛が少しずつほぐれていくのをじっと見守った。 「バイクに乗ってたひとは、一時停止の標識に

          【小説】オールトの海でまた 🦅

          One time, however, we were near quarreling. He said the pleasantest manner of spending a hot July day was lying from morning till evening on a bank of heath in the middle of the moors, with the bees humming dreamily about among the bloom, a

          【小説】オールトの海でまた 🦅

          【小説】オールトの海でまた 🌕5

          🌕12  寮に着いた頃には全身がずぶ濡れで、体の芯まで凍えていた。着替えてから部屋を出て、雨の降りそぼる道路を横切り、大浴場に向かった。  チェックインがはじまってまもないこの時間、客の姿は少なかった。軽くシャワーで体を洗い、外へと繋がる扉に手をかけた。当然ではあるが、露天風呂にひと気はなかった。ぼくは全裸に雨粒を浴びながらゆっくりと敷石の上を歩き、手すりに体重をかけて湯の張った浴槽へ身を沈めた。首から下はあたたかいけれど頭部は冷えた。骨に噛みついていた氷が少しずつ解けて

          【小説】オールトの海でまた 🌕5

          【小説】オールトの海でまた 🌕4

          🌕8 《今日、中庭の散策から帰り、部屋の扉を開けようとしたところで、背後から声をかけられました。振りかえってみると、斜向かいの病室から、体を半分のぞかせた長谷川さんがわたしを手招いていました。長谷川さんはあなたもわかるでしょう? ほら、よくあなたが訪ねてきたときに、手書きのメッセージとともに和菓子をお裾分けしてくれる、あのおばあちゃんです。入院生活がこうも長引くと、同じような患者さんでも顔見知りくらいできます。わたしは喜んでお茶の招待に応じました。わたしは彼女のことが好きな

          【小説】オールトの海でまた 🌕4

          【小説】オールトの海でまた ☀️3

          ☀️ 6  耳からイヤホンを抜きとり、膝の上に置いてため息をつく。つぶやきが口から漏れた。それは言語という形をとるまでもなく、行き場のない靄となって消えた。ベンチの背もたれに体重を預け、暮れてゆく空を眺めた。雲は素早く空を横切り、瞬く間に形を変えながら駆け抜ける。地上のわたしには目もくれない。ここはそういう世界。わたしなんかに。わたしごときに。  中庭ではわたしの半分くらいの背丈しかない子供たちが、黄色い声ではしゃぎまわっていた。彼らは飛び跳ねるように走り、そのたびに土

          【小説】オールトの海でまた ☀️3

          【小説】オールトの海でまた 🌕2

          ⭐️  ようやくここまで辿り着いた。太陽はとっくに沈んでいて、空には星々が瞬いている。ほんとうなら、陽が昇っていないうちに、この場所へ到着するつもりはなかったのだけれど。  だが、目的地に向けて一歩ずつ進む以外の、なにがぼくにできたというのか?  とにもかくにも背負っていたリュックを投げ捨て、腰を下ろした。お尻の下で、土がひやりと冷たい。疲れた。立っている気力も残ってない。足の裏ではマメが潰れて、どくどくと脈打つたびに疼く。じきにこの痛みも薄まっていく。ここ何日も繰りか

          【小説】オールトの海でまた 🌕2

          【小説】オールトの海でまた ☀️1

          ☀️ 1  いまよりずいぶん前のことになるけれど、体を壊して病院で寝泊まりしなければならなくなったことが一度だけある。当時わたしは十七歳で、小田原市内の高校に通う三年生だった。倒れたのは昼休みが明けた授業でのことだった。体育の授業は男女に分かれ、二クラス合同でおこなわれた。わたしたちは校庭のどまん中に膝を抱えて座り、教師が甲高い声でリレーのバトンの受け渡しについて説明しているのを聞いていた。そのときだって、自分の体に異変が起きてるとか、いつもと調子が違うとかは感じなかった

          【小説】オールトの海でまた ☀️1