神戸_デザイン_NDL2

「子どもから大人まで、広い世代にデザイン教育を」 をモットーに、建築・インテリア・家具・プロダクト・グラフィックの実務をしつつ、美大教員をしながら、独自のデザインスクールを神戸市垂水区で運営しているデザイン学博士、料理好きの2児の父です。http://n-designlab.jp

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「子どもから大人まで、広い世代にデザイン教育を」 をモットーに、建築・インテリア・家具・プロダクト・グラフィックの実務をしつつ、美大教員をしながら、独自のデザインスクールを神戸市垂水区で運営しているデザイン学博士、料理好きの2児の父です。http://n-designlab.jp

    最近の記事

    超私的デザイン論④-リートフェルトへの素朴な疑問・研究の種とデザイン思考-

    第三回では、デザインとその再現性についてのお話をしてきました。今回はオランダの家具職人でデザイナー、そして建築家とも呼ばれるヘリット・トーマス・リートフェルト(Gerrit Thomas Rietvelt, 1888-1964)について、数回にわたり話を進めていこうと思います。 前衛芸術運動「デ・ステイル」 今から100年ほど昔になりますが、ロシアも含むヨーロッパ各地で新しい芸術を目指す運動が興っていました。イタリア未来派、ドイツ工作連盟、ゼセッション、ロシア構成主義など、

      • 超私的デザイン論③-デザインと再現性-

        今回、デザイン論の第3回はデザインは理論で説明ができること、つまり、理論的に優れたデザインは読み解くだけの深さがあり、その背後には再現性が見えがくれしているというお話です。 ブロックと再現性 就学前の息子が自宅でよくブロック遊びをしていて、車やら家やら、そうしたものをつくっては私に見せにきます。ブロック遊びですから、組み立てたものを壊してまた別のものをつくるということが前提のもの。とはいえやはり本人なりによくできたと思っているものは壊したくないし、ましてや他者に壊されるのは

        • 超私的デザイン論②-図と地の関係-

          前回はリノベーションを皮切りに、新たな価値観の創出とそのために視点を自由に切り替える意識と頭の使い方について論じました。さて、超私的デザイン論の第2回は「図と地の関係」という、デザインを学ぶ者に対して私が必ず伝えるお話をからスタートしていきます。 図と地の関係 建築をデザインするときでも、グラフィックを考えるときでも、私は常にこの「図と地の関係」を考えます。目線を切り替える=ものを見る意識の持ち方を切り替えるといって差し支えないでしょう。 分かりやすい例でいうと、1915年

          • 超私的デザイン論①-鳥の目線と蟻の目線-

            これまで15回におよび、超私的デザイン概論として、私の経験をもとにデザインのアウトラインについてお話をしてきました。ここからは少し解像度を上げて、テーマを絞ったお話をしていこうと思います。 内容としては大学2年生くらいに向けたデザイン論というイメージですが、なるべく分かりやすいお話になるように心がけていきます。 本題に入る前にひとつおことわりをしておきます。少なくとも私が勤務してきた(している)美大のデザイン系・建築系の学科では、義務教育で使うような共通した教科書はなく、教

            デザイナーズライフスタイル ー日本のバウハウスをー

            この超私的デザイン概論も今回で15回目となります。概論としてはいったんここまでとしますので、今回がひとつの区切りとなります。 さてここでは、デザイナーとしての私の(不思議な)ライフスタイルのお話となります。デザインを長年学んできたことで、自ずとそのライフスタイルも試行錯誤を繰り返しながら独自の性の高いものになっているのではないでしょうか。もちろん私はデザイナーですので仕事の内容はデザインの実務とデザイン教育が中心にはなりますが、仕事内容がデザインだからできるというライフスタイ

            椅子はデザインの教科書

            今回は「デザインとは?」というお話しをスタートしてから14回目になります。大学の授業回数にならい、15回でこの超私的デザイン概論もいったん終わりにする予定です。残すところ今回とあと一回となります。その後は、今のところですが、概論ではなくより具体的な〇〇論とした少し専門的な内容をお話ししていきたいと考えています。 取り組みやすいが難しい さて今回は、椅子のデザインについてお話しをします。現代に生きる皆さんのほとんどは、椅子のある生活をされていると思います。自宅には食事をするた

            分解することと、デザイン

            デザインについてこれまでお話をしてきて、今回で第13回となります。これまでデザインについての概説ということで進めてきましたが、イメージとしては、子どもさんから大人まで、わりと初めてデザインに触れる方たちへ向けて講義をさせて頂くつもりで筆を進めています。もちろんすでに勉強をされてい方もご覧になって頂き、何か参考になるところがあれば良いと思っています。 「使う目線」と「つくる目線」 私のデザインレッスンの課題のひのつに、置き時計のデザインがあります。なんてことはない、安価な既製

            発想力を鍛えるデザイン思考-〇〇ってなんだっけ?-

            このタイトルの副題は、私が所有しているある書籍にインスパイアされて利用させて頂きました。後ほどその書籍のご紹介とあわせて典拠を明記致します。 前回は、デザイン教育におけるスタディとは?そしてそれにまつわるちょっとこわい話となってしまいました。発想力がないと、この先淘汰されてしまうのでは、といった内容です。 それを受けて今回は、では発想力はどのようにして鍛えるのかを絵本のようにポップな書籍を紹介しながら進めていきたいと思います。この記事も前回とは異なり明るくほっこりとした内容

            「スタディ」とデザインにまつわるちょっとこわい話

            スタディという英語をご存知の方はたくさんいらっしゃると思います。私などの世代では、中学生の頃に基本の英単語として「勉強する」と習いました。 このスタディという単語、じつはデザイン教育においては少し違ったニュアンスで多用します。 前回は、私が取り組んでいる全世代に向けたデザインスクール「デザインレッスン」についてお話しをしました。その中で、「デザインのプロセスを経て」ということを述べたと思います。デザインのプロセスとは?その一端を今回は「スタディ」をテーマにお話しをしようと思

            誰でも通える小さな美大=デザインレッスン

            これまで、デザインとは?という話、そして主に美術大学と大学院などでどのようなことが行われているのかという、私自身の学びと経験に基づく「今の実際」について話をしてきました。 その中で、デザインはより多くの方に開かれることに越したことはないという内容と、反対に、やはり現実としては大学•大学院という狭いコミュニティの中だけででデザイン教育がなされていることについて述べてきました。 お気づきのように、開かれるべきものが狭い世界に特化されてしまっていること。このことの矛盾を暗にお伝えし

            美大のゼミと大学院

            前回は美大ではどのような学びをするのかということについて、簡単にですがお話をしました。今回はより専門的にに学ぶための場として、四年生で配属をされるゼミと、その延長としての大学院についてお話しをします。 ゼミ -4年生- 前回も簡単に触れましたが、卒業論文や卒業制作といったいわゆる専門的な「卒業研究」を進めていくために、その分野のプロから直接指導をうけるクラスのようなものをゼミといいます。学生は3年間で勉強してきたことの中から、研究のテーマをぼんやりとイメージし、その研究に最

            大学でのデザインの評価-〇〇ではなぜ評価されない?-

            こんにちは、神戸のデザイン学博士、中村です。今回は、前回の記事「美大ってどんなところ?」で触れた美大のデザイン系実習での作品評価に関する話題です。 タイトルからして、多くの関係する方々からなんとも反感を買いそうな内容になるかも知れませんが、それはそれで今の私の所属する美術系建築学科では事実であることから、誤解をうまないよう丁寧にお話をすることを試みようと思います。 家のイメージ タイトルで示した〇〇に入るワードは、実は前回の記事の住宅デザインの課題の件のところで登場させたも

            美大ってどんなところ?

            前回の記事では大学卒業後の選択肢についての話題に触れました。学生の皆さんの多くは4年間で卒業をしてその後会社へ就職をしますが、そもそも美大ってどんなところなのか、どんな勉強をするのかイメージが湧きにくいかもしれません。 そこで今回は美大ではなにをするのか、どのように勉強をするのかということについてお話をしたいと思います。 「特別」は一握りだからご安心を こんなことを言うと本当にできる学生やそうした学生ばかりのハイレベルな大学からは叱られてしまいそうですが、美術大学、とくにデ

            アイデアバンクの美術大学

            ここまで第5回にわたり、溜めに溜めてきたデザインとは?の概論的な内容をお伝えしてきました。わりと漠然とした内容だったと反省しつつも、もう少しだけデザインが世の中にどのようにして貢献できるのか、その新しい貢献の仕方について考えていることをお話したいと思います。 選択肢の「間」にある何か さて、私は選択肢に丸をつけるという形式がたいへん苦手で、選択肢式のアンケートに答えるときにはいつも必要以上に頭を悩ませてしまいます。振り返ればこの苦手意識は、大学院の修士のときにした企業への就

            〇〇デザイナーの〇〇って?

            接頭語が表す専門分野 皆さんご存知の通り、デザイナーにはそれぞれに得意とする専門の領域があることから、その専門を表すためにデザインの前に接頭語がくっついています。 ファッションデザインやグラフィックデザイン、ウェブデザインにプロダクトデザイン。ユーザーインターフェース(UIデザイン)や近年ではユーザーエクスペリエンス(UXデザイン)。そして私の専門のひとつ、建築デザイン。他にもキャリアデザインなど、まるで磁石のように何とでもくっついてしまうのではないかと思うほど多岐にわたって

            ラジオの時間なデザイン論

            美大での授業の様子を、神戸の私のデザイン事務所兼デザインスクール(デザインレッスン)で、小中学生によく質問をされます。 一時期はオンラインで授業を配信していましたが、少しイメージがしにくいので対面での授業の様子を中心に子どもたちには伝えています。受講人数はだいたい100名から多くて160名程度ですから、広い教室にずらりと若者たちが並んで座っていて、そんな光景は皆さんもイメージが湧くことと思います。 さて、まず子どもたちが驚くのは、堂々と居眠りをしていたりスマホでゲームをして