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「デザイン論」のオンライン講義- 美大でやってるアレ

私はもうかれこれ10年以上、美術•芸術系の大学で先生(専門は建築とデザイン理論)をしているわけですが、いつも実にもったいないと思うのは「デザインには理論がある」というのをほぼこうした専門教育の場でしか皆さんに伝える機会がないということ。

世の中はデザインで溢れているし、反対にデザインを享受していない人は少なくとも我が国には皆無といっていいでしょう。もっと多くの世代にデザインとは何なのかを、センスで語られてしまうことが多々あるデザインということについて、その本質を正しく理解する機会があってもよいのではと思い、2021年から独自のデザインスクール「デザイン•レッスン」を開講しました。

このレッスンでは、受講生の関心や個性に合わせて独自に課題を設定し取り組んでもらう、いわゆる「ゼミ」形式のスタイルを採用しています。年齢は10才くらいの小学生から60代の方まで、本当の意味で広く多世代に提供をしています。
とはいえやはり、このレッスンに来られているのは創作が好きな人ばかり。実際に手を動かして、建築やらプロダクトやら、パソコンを使ってグラフィックをデザインするやら、そうしたことを好んでする方しかいらっしゃらないわけですね。

それでは私が考える、より多くの方にデザインを知ってもらいたいという想いはなかなか広く伝わらない。たとえば、デザインには関心があるけれども実際に創作するのは難しいという方々もたくさんいらっしゃるのではないかと考え実践してみることにしたのが、デザインレッスンのオンライン講座です。

こんな方たち、いらっしゃるのでは?
①ちょっと気にはなっていたので、この際しっかりと理解しておきたい

②実際に手を動かすのは苦手だけど、講義なら受けられる

③今さら美大に行くほどでもないけれど、気軽に知れるなら

④仕事でスクールにはなかなか通えないけれど、オンラインなら

⑤まだ中学生だけど、そっちの道に興味があって

⑥学校で美術を教える上で知っておきたい

⑦プロのデザイナーを目指している

などなど

どんな工夫が?
デザインは、大変多くの意味合いを含んでいる複合的な概念なので、なかなかひとことで言い表せるものでもありません。色や形がデザインという人もいれば、おしゃれだとか、カッコいい感じだとか、高価そうとか、なんとなく抱いているイメージがそのままデザインという概念のに繋がっているのではないでしょうか。
そこでこのオンライン講義では、3つの視点でデザインについてお伝えしていくということにしました。
どの観点からも、最終的には「デザインで何だろう?」という問いに答えられるように組み立てています。

ひとつ目は、「概説編」です。概説編は、デザインそのものの定義や捉え方に対する概念的な内容について、講師がこれまで経験・思索してきた実際的な事柄を中心に、より日常的で身近な例を挙げながら概説します。
この概説編で、デザインの本質を感覚的に捉えてもらうというのがねらいです。

二つ目は「理論編」。理論編は、秀逸なデザインの具体的な事例を挙げながら、その背後にある構成やルールといった見え隠れする理論的な物的側面に焦点をあて、デザインの特徴について紐解いていきます。
具体的な事例とその成立要因・デザイナーの思考を学ぶことで、これまで漠然と眺めていた身の回りのデザインについても論理的に読み解く感覚を養ってもらおうと考えました。

三つ目は「歴史編」。歴史編は、歴史的な流れに伴う社会変化がもたらしたデザインの事例やその潮流といった時間的側面に焦点をあて、現在当たり前とされている身近なデザインの成立過程について学びます。
長期的なものの見方に触れ、デザインの社会的役割について意識する感覚を養ってもらおうと考えました。

どの内容も、私たちの身近な暮らしを引き合いに出して、「なるほど!」と思えるような内容としています。そして、この三つの見方でもって、本来の正しいデザインの理解を深めるというものです。
この三つの見方の話を、それぞれ20分ずつ、一回で合計60分の講義としています。

たとえば、第一回は、
〈概説編〉デザインてなんだろう?
〈理論編〉キッコーマンのお醤油差し
〈歴史編〉フランス革命と明治維新
という内容です。

中学生くらいからでも飽きずにしっかり理解できるよう、各内容は短い時間でリズミカルに、そして端的にお伝えしていきます。本来であれば美術•芸術系大学で行われる「デザイン論」。それをより分かりやすく構成しています。

どんな内容が?
さて、この講義は全部で11回ありますが、第二回以降の具体的なお話しの内容については次のような構成です。

【第二回】
〈概説編〉料理とデザイン/〇〇デザイナーの〇〇って?
〈理論編〉曲げベニヤの実験室-アアルトの椅子
〈歴史編〉鉄とガラスの新素材-映画「スチームボーイ」と博覧会

【第三回】
〈概説編〉AとBの間って何だろう?
〈理論編〉ラッキーストライクに見る行動原理
〈歴史編〉消費社会の量産デザイン

【第四回】
〈概説編〉つくる目線と使う目線、鳥の目線とありの目線
〈理論編〉Less is moreな合理性
〈歴史編〉植物と機械はどちらが有利?

【第五回】
〈概説編〉情報の整理整頓:関係を考えること
〈理論編〉いけてる紙面の見えないルール
〈歴史編〉SPY×FAMILYの世界観

【第六回】
〈概説編〉必須用語「スタディ」/赤紫問題
〈理論編〉赤•青•黄色に塗り込められた隠された真実
〈歴史編〉100年前からDIY

【第七回】
〈概説編〉レンガ一個の使い方/図と地の関係
〈理論編〉打ちっぱなしのニュージェネレーション
〈歴史編〉100年前からリノベーション

【第八回】
〈概説編〉再現性と時間のデザイン
〈理論編〉ヤクルトの容器とお座布団
〈歴史編〉バービーちゃんと西海岸

【第九回】
〈概説編〉コーディネートとデザイン
〈理論編〉カラフルポップ•アメリカン
〈歴史編〉やってみるっきゃなくね?

【第十回】
〈概説編〉デザインの格差社会/Out of fashionを考える
〈理論編〉リノベーションの方法と変わる価値観
〈歴史編〉自然とともに生きるダイバーシティ

【最終回】
〈概説編〉美大はなにも特殊じゃない
〈理論編〉「カド消し」は現代日本のスーパーデザイン
〈歴史編〉今はいったい何だろう?

ちょっとしたことだけど、知っているのといないのとでは、暮らしの豊かさもちょっと変わってくることでしょう。
もしご興味があればぜひ!

http://www.n-designlab.jp/designlesson_lecture.html

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