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2021年11月の記事一覧
芥川龍之介の恋文と性的嗜好
芥川龍之介の恋文と言えば女性にあてたものが有名だが、男性に向けたものの方が強烈である。
あゝ 僕は君を恋ひ候 君の為には僕のすべてを抛つを辞せず候 人は僕の白線帽を羨み候へども君に共にせざる一高の制帽はまことに荊もて編めるに外ならず候 笑ひ給はむ嘲り給はむ 或は背をむけて去り給はむ されども僕は君を恋ひ候 恋ひせざるを得ず候 君の為には僕は僕の友のすべてにも反くんをも辞せず候 僕の先生に反く
サバイバーズ・ギルトのない風景
芥川龍之介が直接的に戦争について書いた作品は『首が落ちた話』と『将軍』のみであると言って良いであろうか。「東西の事」を書いた『手巾』が戦争に関して書いたのではないとしたら、そういう理屈になるのではなかろうか。
しかしこんな残酷な風景はむしろ付け足しである。芥川にとって戦争とは単なるプロットに過ぎない。芥川は『将軍』でも『首が落ちた話』でも戦争を材料にはするが、戦争そのものを云々する意図は見
芥川龍之介のヒーロー 芸術的気質を持った青年の「人間の悪」を発見するのは誰よりも遅い
芥川龍之介がヒーローとして、自分にはないものを持ったキャラクターとして『羅生門』の下人を描き得た事を得意としていたことはほぼ間違いなかろう。かなう事なら芥川は下人の太さが欲しかった。
この『木曽義仲論』にも「男らしき生涯」という芥川の理想が現れていると見て良いだろうか。しかし木曽義仲を論じるにも芥川の弱さが現れていようか。「蒼生鼓腹して治を楽む」とはなんたる阿りか。無論学生の作文である。平場
芥川龍之介と動物的エネルギイ 抜けば祟る刀を得たり暮れの秋
芥川龍之介から斎藤茂吉に宛てた手紙に表れるこの「動物的エネルギイ」は、どうにかして芥川を死の門から遠ざける筈のものだった。しかしか程に希求される程度に枯れていたものであり、『羅生門』では確かに下人の中に見られたものである。しかし、それはそもそも芥川自身の中に備わっていたものだったのだろうか。
これは殆ど漫画の世界観である。ここには芥川の生活もなく、芥川の精神もない。寧ろ芥川でないところがあり