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BLACKPINKとハイブランド。これまでの信頼と若者目線 後編

BLACKPINK HPより引用

 前編ではBLACKPINKとJENNIE×CHANELについて語ってきましたが、後編では他の三人ROSE、LISA、JISSOとハイブランドについて掘り下げていきます。


ROSEとSAINT LAURENT

"モードの帝王"SAINT LAURENT

Knowns Biz調べ:サンローランの認知率×好感度×満足率

 SAINT LAURENTはパリのラグジュアリーブランドです。
 1961年に誕生してから快進撃を続け、モンドリアンルック、サファリ・ルック、パンタロン・スーツなど代表作をたくさん世に発表しました。

 サンローランが確立した女性のファッションスタイルは"ニューモード"と呼ばれ、まさに時代を席巻したブランドのひとつです。
 「モードの帝王」という異名を持っています。

Knowns Biz調べ:サンローランの顧客分布

 サンローランの顧客は25~29歳の女性が多く、ROSEが26歳なので等身大のアイコンとなっていることがわかります。

Knowns Biz調べ:サンローランのイメージ分析
Knowns Biz調べ:サンローランの口コミ

 イメージ分析の上位にある"ラグジュアリー・贅沢""上品・優雅""ステイタス・優越感"についてはTHEハイブランドといったイメージ"トレンディー・憧れ""カリスマ性がある"に関しては、憧れの対象になっていることの表れだと言えます。

Knowns Biz調べ:サンローランの口コミ

 Knowns Bizに寄せられた口コミにも、憧れというワードがたくさんありました。

Knowns Biz調べ:サンローランの口コミ

 ROSEについて言及された口コミもありました。

ROSEのInstagramより
ROSEのInstagramより

 女性らしさとクールさが共存したサンローランがROSEにとても似合っていますね。

 先ほど、サンローランがサファリ・ルックやパンタロン・スーツを流行らせたと述べましたが、共通しているのはパンツスーツという点です。
 その頃女性の洋服はスカートが一般的でしたが、パンタロンスタイルのパンツを女性の普段着へと落とし込んだり、男性用の洋服だったサファリジャケットを女性にも似合うシルエットへと昇華させて世間を驚かせたり、時代の常識にとらわれない服作りをしてきたのがサンローランなのです。

人気デザイナーとアンバサダーの参入による転機

 そんなサンローランですが、何度か経営の危機を経験しています。
 転機と言われているのはエディスリマンのクリエイティブディレクター就任です。
 ブランド名の変更をはじめ、広告写真をエディ自身が完全プロデュース+撮影するなどサンローランに様々な改革をもたらしました。

 クリエイティブディレクターが何人も変わりながら、ブランドの売上の波を乗り越え現在まで歩んできたサンローランは、その経験から広告、ビジュアル戦略の重要性を学んでいます。

 そんななか、2020年にアンバサダーに就任したのがBLACKPINKのROSEという流れです。
 サンローランはモードでグランジなイメージがあるブランドですが、ROSEのハイトーンのヘアカラーや細身のスタイル、クールなイメージがブランドと相性がいいと感じます。

 インスタフォロワーは
ROSE 7281万人(2023.07.22現在)
YSL    1179万人(2023.07.22現在)

 これだけでも単純に考えて約7倍のPR力を得ることができます。

 さらに、雑誌や報道陣が集まるパーティでの着用など、メディア露出の機会も自動的に増えます。

 また、ニュージーランド生まれ、オーストラリア出身のKPOPアイドルというインターナショナルなバックグラウンドも、世界でウケる理由のひとつだと思います。

ROSEのInstagramより
ファッションプレスより サンローラン 2023-24 aw
ファッションプレスより サンローラン 2023-24 aw

 最新コレクションでは、ほぼ無地でカラーパレットも明度・彩度の低い落ち着いたものになっています。
 非常に大人っぽい印象を受けます。

 シルエットはタイトなものが中心ですがパワーショルダーがとても特徴的です。今回のコレクションだけでなく、他のシーズンを見てもイメージが統一されている印象を受けます。

 メンズコレクションも雰囲気は似ていて、かなりフェミニン寄りのコンセプトになっています。(性差があまりない)

ファッションプレスより
Knowns Biz調べ:サンローランのイメージ分析

 コレクションを見てから再度イメージ分析を見てみると、タイトなスカートやドレープの効いたドレスは、"上品・優雅""フェミニン・大人っぽい"イメージ、落ち着いた色味やカチッとしたジャケットスタイルは"カッコいい・イケてる""深み渋み・落ち着いた"イメージに作用していると分析できます。

ROSEのInstagramより
ROSEのInstagramより

 ROSEはとてもスラッとした体型なのでサンローランのタイトなシルエットや、ドレッシーなルックを素敵に着こなしています。

ROSEのInstagramより

 サンローランの人気アイテムであるライダースもかっこよく着ていました。さすが!(エディスリマンがライダース狂なのでどのブランドに就任しても作っていて、とても人気になる)

LISAとCELINE

苦しい時代を乗り越えたCELINE

Knowns Biz調べ:セリーヌの認知率×好感度×満足率
Knowns Biz調べ:セリーヌのデモグラフィック分析

 CELINEもCHANELやSAINT LAURENTと同様パリの有名ハイブランド。
(それぞれのブランドの始まり:CHANEL 1910年、SAINT LAURENT 1966年、CELINE 1945年、後述のDIOR 1946年

 戦後まもなく誕生し、世界が大きく変わった時代にビッグメゾンまで上り詰めたCELINEも、経営が厳しい時期を乗り越え復活を果たした逞しいブランドです。

 現在は30代後半の女性から最も支持されているという分析結果が出ています。

LISAのInstagramより

 実力派のデザイナーたちが何人もCELINEの立て直しを試みては、うまくいかずといった苦しい時代が長く続きましたが、フィービー・ファイロにクリエイティブディレクター兼取締役に就任し、数々のヒット商品を生み出し見事に建て直しました。

 フィービーが発表したコレクション↓

ファッションプレスより CELINE 2017 aw
ファッションプレスより CELINE 2018 aw

 フィービーの後にクリエイティブディレクターになったのがエディです。

 エディスリマンがサンローランに革命を起こしたと前述したのですが、エディはここでも登場します。
 2018年から彼は、セリーヌのクリエイティブディレクターを務めているんです。(手がけたコレクションは2019ssから)

 エディが発表したコレクション↓

ファッションプレスより 2021 ss
ファッションプレスより 2022aw
ファッションプレスより 2023 ss
ファッションプレスより 2023aw

 「…同じブランドか?」と思いますよね。
 エディはそういう男です。笑

 サンローランやディオールオム(ディオールのメンズライン)などで大ヒットを"かました"ファッション界の革命児として実績があるエディを起用した時点で、CELINEもブランドの方向性が変わることはわかっていたと思うし、エディに求められていたのもこういうことなのでしょうが、フィービー時代のCELINEファンとしてはびっくりですよね。

 エディのコレクションはフィービーの時と比べると全体的に丈が短くなり、ロックテイストが強い印象を受けます。
 エディはどのブランドのクリエイティブディレクターになってもこのロック要素(とその周辺の音楽要素)を前面に出します。
 ブランドに合わせるわけではなく、いつも"エディ感"がぶれません。

 なので、エディのファンはすごく多く、エディの異動と共にファンも動いているといった感じです。

新しいイメージを作る若者の憧れの的

 エディがCELINEのクリエイティブディレクターになって間もない2020年から、LISAがアンバサダーに就任しました。

 エクゾチックな顔とエネルギッシュな雰囲気、クールでかっこいいラップとダンスをするLISAは、多くの若者の憧れの的です。
インスタフォロワー9585万人(2023.07.22現在)

 CELINEの最近のコレクションは、(フィービーの頃と比べるとよく分かると思いますが)ターゲットが若くなったような印象を受けます。
 LISAのもつファン層やアンバサダーになったタイミングも含め、エディスリマンとタッグ組んでCELINEの新しいイメージを築いているのかもしれません。

 特に、ロゴの入ったインナーや帽子などの登場は、ダンサーとしてのLISAととても相性が良く、また近年流行しているストリートやHIPHOPの要素もあり、時代にすごく合っているアイテムだと思いました

 さすがマーケティングの得意なエディスリマンです。LISAとCELINEの”リサーヌ”ケミ爆誕。

LISAのInstagramより
LISAのInstagramより
LISAのInstagramより
LISAのInstagramより

 2023SSでは、テニスコレクションも出していたCELINE。
 (世界でも数店舗限定の展開)

HIGHSNOBIETYJAPANサイトより テニスコレクション
HIGHSNOBIETYJAPANサイトより テニスコレクション
HIGHSNOBIETYJAPANサイトより テニスコレクション

 価格は全くかわいくないですが、とってもかわいいテニスウェア!
 こういう点を見ても、スポーティ路線にシフトしていっているのかもと予想できます。

Knowns Biz調べ:セリーヌのサイコグラ

 Knowns BizによるCELINEのサイコグラ分析を見ると、アウトドア派や健康志向といった項目があるので、スポーティテイストは確かにウケがよさそうですね!

Knowns Biz調べ:セリーヌのイメージ分析

 CELINEのイメージ分析では優雅やラグジュアリー、ステイタスなど高級感のあるイメージが多いですが、カリスマ性やトレンディー、イケてるなど時代を引っ張る存在と言ったイメージも大きいようです。

LISAのInstagramより
LISAのInstagramより
LISAのInstagramより
LISAのInstagramより


JISSOとDIOR

"エレガント"なDIOR

Knowns Biz調べ:DIORの認知率×好感度×満足率

 1946年オープン。毎シーズン全く違う服を生み出したことで、瞬く間にファッションシーンの主役になったDIORは、数々の映画スターにも愛され、今もなお高い人気と知名度を誇っています。

Knowns Biz調べ:DIORのデモグラフィック分析

 顧客の分布図を見ると、20代女性からの人気が高いことがわかります。

Knowns Biz調べ:DIORの口コミ
Knowns Biz調べ:DIORの口コミ

 口コミにはコスメについて書かれたものも多く、比較的手が届きやすいコスメラインの人気が、若い層の顧客が多い理由の一つと考えられます。

 DIORもまた、今までBLACKPINKと共に紹介してきたブランド同様一時代を築いたラグジュアリーブランドであることは共通していますが、4ブランド(CHANEL、SAINT LAURENT、CELINE、DIOR)の中では一番コンサバなイメージがあります。

家庭画報サイトより

 Lady Diorという有名なバッグがありますが、ダイアナ妃をオマージュしているというストーリーからその名前までも、"上品"や"お嬢様"といったイメージ。
 ブランド全体の世界観も、ハイソサエティで上質で女性らしさのある、まさに"エレガント"なものになっています。

ファッションプレスより 2023SS
ファッションプレスより 2023-24 aw

まるで擬人化!?相乗効果を狙うアンバサダー

 そんなDIORのアンバサダーとなったBLACKPINKのJISSOは、DIORというブランドを擬人化したのかと思うほどピッタリで、整った顔立ちや上品な佇まいが、洗練されたハイクオリティなDIORの服と相乗効果を生み、着用画像はどれもとても美しいです。

JISSOのInstagramより
JISSOのInstagramより
JISSOのInstagramより
JISSOのInstagramより
JISSOのInstagramより

 口コミにもいくつか、JISSOのアンバサダー就任に対しプラスの意見が寄せられていました。
インスタフォロワー7424万人(2023.07.22現在)

Knowns Biz調べ:DIORの口コミ

 余談ですが、エディスリマンはDIORでも存在感を放ちます。
 低迷していたメンズラインのクリエイティブディレクターとして「DIOR HOMME」を立ち上げ、大好評のコレクションを発表し再びファンを獲得しました。

ファッションプレスより

 細身のパンツにコンパクトなジャケットたち、、エディ一色です。
 ブランドと就任するデザイナーの関係を対等にし、デザイナーにファンがつくという現象をひとつのビジネススタイルへと押し上げたのもエディの功績と言えます。

JISSOのInstagramより
JISSOのInstagramより

 カジュアルな着こなしのJISSO×DIORも抜け感が絶妙で素敵です。

JISSOのInstagramより

 ↑こちらはDIORの2022ssコレクションをJISSOが着用した画像です。
 このシーズンは鮮やかなカラーがシグニチャーとなっていて、60~70年代のミニスカート旋風を巻き起こしたあのツィギー絶頂期を思わせるようなレトロなコレクションが話題になりました。

ファッションプレスより 2022ss

 ブランドとタレントのイメージが合致していてお互いの雰囲気、世界観を壊さず寧ろ高めるようなペア。
 JISSO×DIOR="ジソール"ケミも君臨といったところ。

まとめ

 ビジネスが絡んでいる以上、BLACKPINKのメンバーのハイブランドアンバサダー就任はwin-winの関係が成り立っているはずです。
 そこを紐解いてきた今回の記事ですが、ここでおさらいしてみましょう。

 ブランド側はSNS周りのPR力のUPができることが一番大きいと思います。
 それに加え、若者のブランド離れが指摘される近年において、もう一度若者の注目を取り戻すこともできます。

YouTubeより(@k.universeo)

 実際に、YouTubeではJENNIEがSOLDOUT QUEENと呼ばれ動画が出されていたりと、BLACKPINKが着用したアイテムはすぐに売り切れるということなので、インフルエンサーの力はすごいです。

 ちなみに、BLACKPINKとハイブランドのインスタフォロワー数をまとめると
JENNIE 8023万人 CHANEL 5722万人
ROSE    7281万人  YSL        1179万人
LISA     9585万人     CELINE    629万人
JISSO   7424万人     DIOR     4463万人

 (上記フォロワー数は全て2023.07.22時点の数字)

Knowns Biz調べ:SNS利用分析

 Knowns BizのSNS利用分析でも、全ブランドでインスタとYouTube の利用割合が高く(LINEは今回は例外とします)多くの人がInstagramとYouTubeをメインに情報収集していることがわかります。
 SNSに強いBLACKPINKが与える影響は計り知れないと思います。

 BLACKPINK側としては、自分たちのブランド力を強化できる
 ハイブランドとの結びつきに関してBLACKPINKはK-POPガールズグループ最強と言えますから、他のグループと差別化もできますし、カリスマ性も上がりさらなる憧れの的へとどんどん階段を登っています。

 ファッション業界のみならず、ビジネスシーンではこういったようにタレントなど著名人が広告塔に起用されることがとても良くありますよね。
 どういった人を起用しているかみると、そのブランドやサービスがどの層をターゲットに展開しているのか、またはこれからどんなところを狙っていくのか。そういうことが見えてきます。

 そういう視点でPR広告やCMを見るのも、奥が深く面白いかもしれません。

筆者のひとこと

 K-POPアイドルがブランドアンバサダーになるのはもう珍しくない話ですが、注目したいのはそれがどんどん若年化していることです。

 アイドルのデビュー年齢が低くなっている影響や、韓国のアイドル事務所の成長によりプッシュ力が高くなった可能性ももちろんあると思いますが、デビューしたからと言って誰もがハイブランドのアンバサダーになれるわけではありませんから、他にも理由があると私は感じています。

New JeansのInstagramより

 最近だと、平均年齢16歳のNew Jeans(以下ニュジ)というグループのメンバー5人が全員ハイブランドアンバサダーに就任して話題になりました。

ミンジ CHANEL

New JeansのInstagramより

ハニ GUCCI

New JeansのInstagramより

ダニエル Burberry

New JeansのInstagramより

ヘイン Luis Vuitton

New JeansのInstagramより

ヘリン DIOR

New JeansのInstagramより

 今まで若い世代に訴えかける力があるからとBLACKPINKのアンバサダー活動について話してきましたが、ニュジはさらに10歳ほど若いわけですから、一体何が起きてるんだ?となってる方々も多いと思います。笑

 結論、話題性と映えなのかなって。
 ニュジはデビューからずっとバズり倒しています。

 癖になるメロディ、真似しやすいダンス、Y2Kファッションのリバイバルファッション、TikTokのトレンドはニュジから始まっていると言っていいほど世界中の若者がニュジに注目しています。

 その彼女たちがアンバサダーになったら必然的に大きなニュースとして扱われるし、若くてぴちぴちの子たちはいつだって美しい。笑
(ランウェイモデルの若年化も一時期話題になった)

 そしてこれは完全に私が考えているだけなのですが、昔よりお金を持っている若者が多いのではないのかと。

 YouTuberやTikToker、Instagramer、起業家などがハイブランドを持っている姿は毎日のように見かけるし、その中には10代、20代もたくさんいます。

 そしてまた、その子達に憧れる子もたくさんいます。

 メルカリやブランド物のレンタルサービスを利用してハイブラ品を身につけることもできます。
 ハイブランドバッグを持ったからって服もハイブラにしないといけなかったのは遠い昔の話で、今はCHANELにユニクロを合わせる時代です。

 そういう意味では、若い子たちにとってラグジュアリーブランドは決して手の届かないものではなく、全世代に潜在顧客がいるのかなって思ったりしてます。

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