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高岡紀美子エッセイ集♪

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ピアノ講師・高岡紀美子先生のエッセイをまとめました。クラシック音楽にまつわるエピソードが盛りだくさんです🎶
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#クラシック音楽

音楽エッセイ『半年後、弟たちは…』ピアノ講師・高岡紀美子作品

音楽エッセイ『半年後、弟たちは…』ピアノ講師・高岡紀美子作品

19世紀。ドイツの作曲家メンデルスゾーンは“4歳年上”の姉ファニーと仲が良く、ピアニストである彼女にいつも音楽的助言を仰いでいた。書きかけの草稿を手渡しながら、弟は言う。「このつづきは、姉さんが作曲してください。あなたの作り出す旋律はとても美しく、気品があり、その才能は僕の誇りです」。彼の代表作である『春の歌』や『ヴェニスのゴンドラの歌』など、48曲の“無言歌”の多くが、実は、姉の作曲だったとか

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音楽エッセイ『さて、診断は?』   ピアノ講師・高岡紀美子作品

音楽エッセイ『さて、診断は?』 ピアノ講師・高岡紀美子作品

モーツァルトは「豚カツを食べて死亡?」。2001年6月、そんな珍説がアメリカの医学誌に発表されたが、発熱、発しん、手足のむくみなど、彼の病気が豚肉の寄生虫による感染症に酷似しているとのこと。 潜伏期間は約50日。モーツァルトは発病の44日前、妻への手紙に「豚カツって、なんてうまいんだ!」と書き残しており

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音楽エッセイ『また、引っ越し?』ピアノ講師・高岡紀美子作品

音楽エッセイ『また、引っ越し?』ピアノ講師・高岡紀美子作品

「居所不定」。天保7年(1836)に刊行された『諸家人名録』に、浮世絵師・葛飾北斎の住所だけが、こう記されている。住所不定である。北斎については数々の奇行が伝えられているが、一ヶ所にとどまることを嫌う“転居癖”も、その1つであった。 「幕府の表坊主・寺町百庵と言う人が、引っ越し100回を目ざしているらしい」。

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音楽エッセイ『やきもちは、いかが?』ピアノ講師・高岡紀美子作品

音楽エッセイ『やきもちは、いかが?』ピアノ講師・高岡紀美子作品

35年の短い生涯のなかで、600を超える名曲を残したヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト。この200年間、多くの人々から愛され、賛美されてきた彼の作品は、同時代の音楽家の心にも強烈な印象を焼きつけたようである。 18世紀後半、それまで名声を欲しいままにしてきたウィーン宮廷音楽家・サリエリは、この若き天才の出現に、激しい嫉妬の炎を燃やした。モーツァルトの才能をいち早く見抜き、

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音楽エッセイ 『月光』                 ピアノ講師・高岡紀美子作品

音楽エッセイ 『月光』 ピアノ講師・高岡紀美子作品

ある満月の夜。男が散歩していると、一軒の家からピアノの音が聞こえてきた。「おや?」。そっと、窓から覗き込んでみる。薄明かりの中で、盲目の少女が鍵盤をさぐるように演奏していた。男は家に入ると、少女に優しく声をかけ、やがて、静かにピアノを奏で始めた。叙情的な調べ、荘重な和音。柔らかな音色が少女の心を包み込んでいく。…と、天空から一条の月光が…。白い光は輪を広げながら、男の姿をくっきりと照らし出してい

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