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桜区一家無惨帳

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一体何をどうしようというのか。
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#レビュー

おまえが胎界主を読む時がきたことを意味する平成の終わり

おまえが胎界主を読む時がきたことを意味する平成の終わり

 よくきたな。おれはロジオン・”マトリョーシカ”・ゴンブローヴィチだ。空前絶後にして真の男のためのWeb漫画『胎界主』・・・・これまでおれはその魅力を伝えるために世界各地を渡り歩いてきた。スラム街で育った身寄りのないきょうだいや、GUN以外に語る言葉を持たない男たちにも伝わるよう、平易な言葉使いで、時には身振り手振りを交えて何度も何度も・・・・そして今日、ついにおれはおまえの元をおとずれたという寸

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偏った4000文字:映画の話2018

偏った4000文字:映画の話2018

 昨年の暮れ公開の映画は『スイス・アーミーマン』(ファンタスティックなヒューマンドラマ。無人島に漂着した男が死んだダニエル・ラドクリフに飛び乗って無人島から帰還を果たす)や『シンクロナイズド・モンスター』(ファンタスティックなヒューマンドラマ。酔ったアン・ハサウェイの自意識が怪獣と化しソウルの街を破壊する)など、地獄から来たみたいな有象無象のオンパレードでしたが、年明けからはビッグバジェット/話題

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お前らはぺイヴメントでも聴いてろ

お前らはぺイヴメントでも聴いてろ

 この曲はどうやって作ったんだ? バンドを漁っているとそう思わされる曲に出会うことがある。具体的には展開がトチ狂っていたり、およそ作為の感じられないようなゴチャゴチャしたノイズが挿入されたり、ちょっと信じがたいくらい冴えた即興演奏があったりする曲がそうだ。出来の良し悪しはこの際脇に置いておくとして、そうした曲はどれも何かしら訴えかけてくるものがあって捨てがたい。

 ペイヴメントはそんな曲の宝庫だ

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Webコミック『胎界主』がお前を前人未到の荒野へみちびく

Webコミック『胎界主』がお前を前人未到の荒野へみちびく

 よくきたな。おれはロジオン・ロマーヌイチ・ゴンブローヴィッチだ。おれはまずお前にこう言わねばならない、やったな。なぜならお前はこの記事を読み、その後http://www.taikaisyu.com/で胎界主を読む。するとどうだ、PCの前でノミ同然に丸まったお前の背中はシュワルツェネガーさながらに天を突き、目にはアントニオ・バンデラスのような危険な光が宿るだろう。言わば胎界主はお前を真の男にするた

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『スプリット』を見た。シャマランの語る童話、それから多重人格の意味するところとは。

『スプリット』を見た。シャマランの語る童話、それから多重人格の意味するところとは。

 5月12日公開の映画『スプリット』を見たので簡単な紹介ののちネタバレ有りの感想を垂れ流したいと思います。監督であるM・ナイト・シャマランの過去作『ヴィジット』(2015)、『シックス・センス』(1999)、『アンブレイカブル』(2000)にも触れつつ、シナリオ全体について考察めいたものもできればいいなといった感じです。

・あらすじと見どころ お話の核心に繋がりそうな感想は後にして、まずはあらす

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決定!この忍者映画がすごい '83『ニンジャII 修羅ノ章』襲い来る真の忍者の世界。

決定!この忍者映画がすごい '83『ニンジャII 修羅ノ章』襲い来る真の忍者の世界。

 去る20世紀、アメリカ全土を二つの武術が席巻したことがありました。一つはカンフー、そしてもう一つは忍術です。前者は『燃えよドラゴン』(1973)、後者は『燃えよNINJA』(1981)を通して、その名を広く世に知らしめました。このうち『燃えよNINJA』は公開されるや否や一大忍者ブームを巻き起こしたわけですが、こうして見るとカンフーブームから10年弱が経ち、どこぞで燻っていたマーシャルアーツ需要

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お化け屋敷を半狂乱で駆け抜けるようなホラー映画、それにひどい邦題『地下に潜む怪人』

お化け屋敷を半狂乱で駆け抜けるようなホラー映画、それにひどい邦題『地下に潜む怪人』

 昔大学の講義で教わったんですが、アジアのホラー映画とアメリカのホラー映画とではその恐怖の出どころに最大の違いがあるのだとか。曰くアジアのホラーは共同体の中に紛れ込んだ異質なものを恐怖の対象としていて、アメリカのホラーは未だ踏み込んだことのない場所に待ち受けるものを恐怖の対象としている場合が多いのだそうです。

 もっとザックリとアジアの恐怖は自分のテリトリーに踏み込まれる恐怖であり、アメリカの恐

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青空文庫で見る江戸川乱歩、同時代の和製パルプ作家たち。

青空文庫で見る江戸川乱歩、同時代の和製パルプ作家たち。

「早くしろ」
 と刑事は為吉を小突こうとした。其の手を払って為吉は叫んだ。
「何をしやがる! Damn You」

――牧逸馬『上海された男』(大正14年)

 少し前に書いた『東京少年D団』の紹介記事で乱歩の活躍した時代の小説作品は現代の娯楽作品に引けをとらないくらいエキサイティングなのだとぶち上げた覚えがあるんですが、その割に具体的な作品名を挙げるでもなく、全体的になんかフワフワした言説に終始

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『東京少年D団』を読んで思ったこといくつか。キネマの時代、現代の巌窟王。

『東京少年D団』を読んで思ったこといくつか。キネマの時代、現代の巌窟王。

 先日発売された小説作品『東京少年D団 明智小五郎の帰還』を読んだので感想やら気づいたことをとりとめもなく書いていこうと思います。今回は映画でなく小説。江戸川乱歩『怪人二十面相』のリメイクであり、スチームパンク及びもっとショッキングで形容しがたい何かとのマッシュアップです。ネタバレはなし。

・とにかく速い マッシュアップを標榜する本作の筋は、『怪人二十面相』(1937)とおおむね似通っています。

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もはやモキュメンタリーは低予算映画の専売特許ではない。ノルウェーに巻き起きる現実対虚構。『トロール・ハンター』

もはやモキュメンタリーは低予算映画の専売特許ではない。ノルウェーに巻き起きる現実対虚構。『トロール・ハンター』

 去る20世紀の中ごろ、アメリカ全土が侵略者の脅威に晒された事がありました。ニュージャージーはレントンに突如として奇怪な円柱が降り立ち、中から現れた火星人が殺人光線を放って一帯を蹂躙しだしたのです。ラジオを通して事態を知った人々は恐慌状態に陥りました。民衆は家財を放り出して逃げ惑い、町には「大阪ではトライポッドを何体か倒したらしい」という噂がまことしやかに流れたそうな。

 言うまでもなく1938

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知られざる最強最悪飲酒映画を見よ。オーストラリアが生んだカルトの傑作『荒野の千鳥足』

知られざる最強最悪飲酒映画を見よ。オーストラリアが生んだカルトの傑作『荒野の千鳥足』

 年末年始、皆さんはどれくらいお酒を飲みましたか?

 映画の中の外国人はよく酒を飲みます。イギリス人であれば夜ごとパブへ繰り出してエールを飲み、ロシア人ならベッドサイドの小棚からウィスキーの瓶を取り出して飲む。ドイツ人なら仕事の後でビールを飲むし、フランス人にしてみてもそれがブランデーに変わるだけのこと。脆弱な肝機能を持つ我々にしてみれば画面を見ているだけで酔いかねないほど、彼らは日常的に飲酒を

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『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』を見た。一つのパンドラの箱、もう一人のベイダー卿。ギャレス!!!!!

 公開中の映画『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』を見たので簡単な紹介ののち感想を垂れ流したいと思います。監督であるギャレス・エドワーズの過去作『モンスターズ/地球外生命体』、レジェンダリー版『ゴジラ』にも触れつつ。以上3作のネタバレがあります。

・ローグ・ワン まずどういった作品であるか概略をサラっていくと、『ローグ・ワン』はスターウォーズのスピンオフ映画です。シリーズ1作目であるE

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