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第二回絵から小説 作品集

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2022.2.14.20:00~2022.3.15開催「第二回 絵から小説」作品集です。スゲー作品がいっぱい増えるといいな!
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#短編小説

第二回「絵から小説」作品集 目次と企画概要

当記事は、自主企画「第二回絵から小説」マガジンの目次です。 企画「第二回絵から小説」内容は以下の記事をご覧ください。 タイトル/作者の順です。※制作・創作が対等な立場であることに敬意を示すために、お名前に「さん・様」は付けない表記にしております。 気になるタイトル、気になる作者、選ぶも自由、読むも自由。どうぞご覧くださいませ。 A1.水色の果実と滴る涙/Haruka.•* 2.あおい/志麻/shima 3.はなちるさんどう/へいた 4.盲目の君は何を憂い/shin 5.

【総括】第二回絵から小説を終えて

こんにちは、清世です。 忙しくてネットから離れてました。更新が遅くなりすみません、生きてます! 2月~3月まで、第二回「絵から小説」という企画をしておりました。ご参加いただいた皆様ありがとうございました。今日は企画総括と終了宣言をします。 第二回「絵から小説」はこちら 1.数字マガジンに入れた作品数は109点!なんとスリップノットが約1ダースという結果に。ありがとうございます! 2.やってみたこと・気づいたこと①省いてみた 前回はタグ付けして頂いたものは全てマガジン

【小説】 月逃 【#第二回絵から小説】

 私は自ら犯した過ちから目を背けておきながら、焼け野原となった庭先から一台の車が出て行くのを見届けている。いや、これは過ちではない。自らこの結末を選んだのだから、これは罪なのだ。神は見ておられるだろう。いつか私に罰が下され、この身は地獄の業火に焼かれた後、魂をも滅ばされるだろう。それでこの罪を清算出来るのなら、それで良い。その時にはアイリーン、君も一緒だ。それならば、地獄の入口に立つ私には何の後悔も無くなるだろう。  農園を営む私達夫婦は、一人息子のライアンを遠いベトナムの

画廊喫茶マヨヒガ:Special act レヴィアタン 〜汝は吾なり〜

 ひと通り投稿をチェックしてリアクションとコメントを送り、女はノートパソコンを閉じた。終わった。これで見なくて済む。これでもう、あの忌々しい女の投稿を読まなくてもよいのだ。心が軽くなるに違いない。軽くしなければ。  そんな思いとは裏腹に、女はつい先程まで舐めるように貪り読んでいた「忌々しい女」の投稿した時事ニュースについて語るエッセイの内容を反芻し、咀嚼を繰り返しては胸の内に冥い熱を滾らせていた。頭の中にすっかり刻み込まれてしまった、あの女独特の言い回しや顔文字が終わりの無

ショートショート#2 禁じられた遊び

 僕は朝夏(あさか)の目が好きだった。 真っ白で陶器のような肌が。 「ねぇ、『禁じられた遊び』っていう映画。」  朝夏は、学童からの帰り道、歩道の白線に沿ってバランスをとりながらそう言った。  僕は、朝夏の肩に付くくらいの長さに揃えられた髪が揺れるのを、横目で追いかけながら 「知らないけど。」  そう答えた。 僕たちの家は、それぞれ共働きだった。学校を終えるとすぐ、地元の公民館の一角にある学童に通っていた。帰りは、だいたい夕方の5時を回るくらいだった。

遠い、記憶の先で。

ふわり、カーテンが揺れる。生ぬるい空気と痒くなる目元に、春の訪れを感じられた。 午前の仕事を終えた私は、日差しが差し込むソファの上でゆっくり、入れたばかりのハーブティを傾ける。暖かな液体が喉を伝う感覚を、丁寧に味わった。 ふと、今住んでいるところの近くに、昔少しだけ住んでいたことを思い出す。 小さな庭がついた賃貸住宅。細かい砂利が敷き詰められた遊び場で、ざくざくと地面を掘り起こしていたら、ふと柵の向こうにも自分と同じぐらいの歳の男の子が遊んでいることに気がついた。 じー

そして彼女は彼方へと消えた【短編小説】

一ノ瀬あかりが手紙で示していた住所までの時間は、電車で約一時間掛かった。 頭の中で、あいつが暗い、山の奥へと消えていく姿が頭から離れない。 荷物は何も持たず、背負っているものをすべて脱ぎ捨てて。まるで舞うように。 そのイメージを否定するように首を横に振る。 電車に乗っているこの時間が、煩わしかった。 ようやく最寄り駅に着き、携帯のマップ案内で山のスタート地点まで来た。 「おいおい、ここを登るのか」 山の頂上までの道のりは、約2㎞。時間にして90分と書かれていた。

【小説】 35.6716486 139.6952259 【#第二回絵から小説】

 今朝も留置施設を出て、同じバスに揺られている。六人で暮らす檻の中から出されると、話すこともなく他の男達と一緒に黙々とバスに乗り込む。搭乗中に誰かと喋ることもなく、入口付近に立つ兵隊に俺達は監視されながらいつもの作業場へ向かう。  窓の外の景色はどこもかしこも爆撃や砲撃で傷付いていて、壊れたアスファルトの振動が嫌でも尻から伝わって来る。作業場へ着く頃になると振動のせいですっかり尻が痒くなってしまう。  少し前までは街の隅から黒煙が昇っていたが、それすらも今はもう無くなってしま

第二回「絵から小説」:B 『花弁の城』

またまた参加させていただきます。 築き上げられた花弁の城は、四月の香りを多分に含んだそよ風に撫でられながらも、君の足元に毅然とそびえていた。足元に広がる無数のなりそこないたちが、城に羨望の眼差しを向けているようだった。七歳の子供が持てるすべてを使って作り上げたその城に、僕は君の強さを見出していたのかもしれない。 城は崩れた。自分を作り上げてくれた主に、喜びと感謝の意を込めて、その姿を誇らしげに披露していた時の事だった。自分で作り上げたその城を、君の裸のつま先はいとも簡単に壊

「少女の肖像」~探偵事務所への厄介な依頼/#第二回「絵から小説」(お題絵C)

古びたアパートの一室。 カチャリ、と部屋の外から鍵穴にキーを挿す音が響き、やがてドアが開く。 「うわ、やっぱり少しカビ臭いな!こりゃ、早く何とかしなきゃダメだ」 高齢の男性がズカズカと部屋に上がり込み、六畳間のカーテンを乱暴に開けた。部屋の中では細かい埃が舞い上がり、差し込んだ日の光に乱反射する。 「・・・何をぼんやりしてるんです。さ、探偵さんも入って入って!」 入り口を振り返りながら、男性は声をかける。 「いやはや、では遠慮なく」 『探偵』と呼ばれた中肉中背、

ニュートンのようには識別出来ない【短編小説】

「ねぇ天野。好きな天気は?」 一ノ瀬あかりは、一緒に砂場で遊んでいる天野ゆずるに声をかけた。 「好きな天気?」 そう聞かれたゆずるは少し考え答える。 「晴れ」 ふーん、とあかりは驚きもせずに返した。 そして、また砂をかき集め、山にしていく。 いつまで経っても、ゆずるからの質問がないので、あかりは自分から話しかけた。 「私はね、雨」 「雨?」 ゆずるは手を止めて、あかりの顔を見る。 「なんで?いやだよ、雨なんか。じめじめするし」 「だってさ、雨は止むじゃ

転校生は魔女

その転校生は先生に促されるまま 聞き取れないほどの小さな声で名前を言い 僕の隣の空いている席へと座った 三学期初めの、あと数か月もすれば中学生になる こんな中途半端な時期に珍しい 全身真っ黒な服を着るその転校生は ほとんどが原色を着るクラスの中で逆に目立つ 長く黒い髪にどこかミステリアスな雰囲気 そして宝石のような青い瞳 ホームルームが終わると 女子たちが彼女の元へと集まって来て 我先にと質問攻めを始めた 「どっから来たの?」 「どこ住んでるの?」 「外国の人なの?

【小説】 輪廻のソナタ 【#第二回絵から小説】

 海原千晴は肩で風を切りながらバレエ教室のレッスンへ向かっている。その傍で彼女に羨望の眼差しを向け続ける金山美宏は通称「金魚のフン」と陰で呼ばれているが、美宏はそんな噂を耳にしても平然としていられた。踊ることでその才能を世に知らしめる千晴の傍にいられることに、同じ教室に通う美宏は悦びを感じていたのだ。 「千晴様、お鞄お持ち致します!」 「……やめてもらえない? 今は下校中だから、あまりにも人の眼が多いわ」 「そんなこと……私は人の眼なんか気になりません!」 「あなたじゃなく

芽生え

気づくと空は真っ黒な雲で覆われ 突然の豪雨が僕らを襲った _ 「この前ね、光る花を見つけたんだ」 そう言って君は学校帰りの僕を 当たり前のように連れ出した ランドセルを玄関に置いて 言われるがまま一緒に入った森の中 自然しかないこの田舎町のいつもの遊び場 僕らにとっては庭みたいなものだった 拾った長い木の枝を振り回しながら ぬかるんだ山道を真っ直ぐ中へと入って行く 「こんな奥まで来たの初めてかも」 「私もこの前初めてここまで来たんだ」 僕らは家が近く幼なじみで 小