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短編小説集

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いずれ長編になるかもしれない物語たち。
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#超短編小説

【ショートストーリー】残酷な男

【ショートストーリー】残酷な男

「結婚したんだってね。おめでとう」

電話口。少し声が震えてしまったけれど、平静を装えていたと思う。

かつて、本気で愛してしまったセフレは、どうやら結婚するらしい。

私が初めて家に行って、シャワーを浴びたとき、女性物のケア商品が浴室にあったので、他にも女がいることは知っていた。

だから、この人には本気になっちゃだめだと自分に言い聞かせていた。

それでも、好きになってしまった。好きといってほ

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【ショートショート】ビターな香り

「バレンタイン、一緒に過ごせないのなら、ホワイトデーは私にちょうだい」

あなたは仕事だからと言っていたけれど、他の女性と約束をしていることなんて、わかってた。

あなたは嘘をつく時、三秒見つめるのよ。

「いいよ。ホワイトデーは一緒にいよう」

「約束?」

「ああ。約束」

クロワッサンを食べる手を止めて、三秒の間の後、あなたは言った。

わたしは、これで最後なのかもしれないと悟った。けれど、

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【短編小説】風の音

【短編小説】風の音

女は銀座に立つ料亭の裏で煙草を吸っていた。
いつもはどんなに最悪な機嫌をも直し、心を落ち着かせるものであるそれが、ここ最近は、心を乱すものになっていた。

「そろそろ辞め時かしらね」

火が消えたことを確認し、料亭の中へと戻る。

二階と一階に、常連の団体客。二階の客は都々逸やさのさを嗜むのが好きで、この女でなければ相手ができない難客だった。

「〽憎らしい 憎い仕打ちは虫が好く 花を愛して嵐を憎

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【ショートショート】夫の変化

【ショートショート】夫の変化

月曜日。夫のスーツに、銘柄の違う煙草が入っていた。
私はセックスのあと、夫が放つバニラの香りが好きだった。
今はただただ臭いだけ。

火曜日。鏡台に並べた香水が減っていることに気がついた。
ジュエリー販売の仕事をしていたとき、あえて男性向けのシャネルをつけていた。
もう何年もつけていない。

水曜日。子供が「おかあさん、これなぁに?」と聞いてきた。
手に持っていたのはショッキングピンクのダサい紐パ

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