北村正裕

文学芸術論ライター、シンガーソングライター。著書に『エヴァンゲリオン解読』(2001年…

北村正裕

文学芸術論ライター、シンガーソングライター。著書に『エヴァンゲリオン解読』(2001年)、『「かがみの孤城」奇跡のラストの誕生』(2023年)等。 ウェブサイト=https://masahirokitamura33.wixsite.com/masahirokitamura

記事一覧

『かがみの孤城』、3つのおすすめポイント&あらすじ紹介

学校に居場所を失くした少女の前で鏡が光る。 通り抜けると謎の城。 集められた七人に見つかる共通点。 しかし、新たな謎が解けないまま事件は起こる…… (以上は短く一言…

北村正裕
7か月前
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花火

【あらすじ】 花火大会の夜、僕は、屋台の店の前で見知らぬ少年が怪しい男にチケットのようなものを渡して花火のようなものを受け取るのを目撃する。不審に思った僕は、少…

北村正裕
10か月前
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『かがみの孤城』、リオンの記憶と二つの「奇跡」

2月25日(23年)に投稿したエッセイ「映画『かがみの孤城』、原作と比べると」の中で、原作のラストが、映画ではラストにならず、リオンの転校シーンの前におかれていたこ…

北村正裕
11か月前
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『かがみの孤城』文庫版で削除された一文の意味

小説『かがみの孤城』(辻村深月作)の21年発行のポプラ文庫版では、17年発行の単行本から、喜多嶋先生とこころの初対面シーンでの「それ以降、会話が途切れた」の一文が削…

北村正裕
1年前
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「伏線回収」より「伏線加筆」、改作の決断が生んだ傑作『かがみの孤城』

『「かがみの孤城」奇跡のラストの誕生』(北村正裕著、2023年1月、彩流社刊)の第一章では、小説『かがみの孤城』(辻村深月作)が、2013年~2014年の「asta*」連載では完…

北村正裕
1年前
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映画『かがみの孤城』、原作と比べると

映画『かがみの孤城』は、原作小説と比較し違いに着目して、アニメ映画という表現手法の特徴をうまく生かせた部分、そして、約600ページの大作を2時間にまとめなければなら…

北村正裕
1年前
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「夕焼け雲」(北村正裕作詞・作曲・歌・絵)

「夕焼け雲」(北村正裕作詞・作曲・歌・絵) 2011年8月25日、御茶ノ水KAKADOでのライブ音源使用。 アルバム「宝石の作り方」収録の音源とは別の音源です。

北村正裕
2年前

最後の夏

その年の夏は、特別な夏だった。「悪い病気が流行っているから」と、どこにも遊びにいってはいけないと言われていた。でも、特別だったのは、それだけではなかった。 僕は…

北村正裕
2年前
1

「まどマギ」「かがみの孤城」と「シンエヴァンゲリオン劇場版」を比較(考察・研究解説本紹介)

『夢の中の第3村-「エヴァンゲリオン」「まどかマギカ」と「かがみの孤城」の芸術論』(北村正裕著、2022年1月、Kindle版電子書籍)は、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』…

北村正裕
2年前
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「かがみの孤城」連載版から十七年版への大改作を検証

小説『かがみの孤城』(辻村深月作)は、雑誌「asta* 」の二〇一三年一一月号~ 二〇一四年七月号と二〇一四年九月号~二〇一四年一一月号に連載された後、大改訂されて二…

北村正裕
2年前
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『かがみの孤城』、3つのおすすめポイント&あらすじ紹介

『かがみの孤城』、3つのおすすめポイント&あらすじ紹介

学校に居場所を失くした少女の前で鏡が光る。
通り抜けると謎の城。
集められた七人に見つかる共通点。
しかし、新たな謎が解けないまま事件は起こる……
(以上は短く一言だけの簡潔版のあらすじ。もう少し詳しい長めのあらすじはこのページの下の方にあります)

小説『かがみの孤城』(辻村深月作)については、すでに、作品論『「かがみの孤城」奇跡のラストの誕生』(2023年1月、彩流社刊)を出版していますが、『

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花火

花火

【あらすじ】
花火大会の夜、僕は、屋台の店の前で見知らぬ少年が怪しい男にチケットのようなものを渡して花火のようなものを受け取るのを目撃する。不審に思った僕は、少年を追って、テントの中の不思議な街に入り込み、懐かしい駄菓子屋さんや「さやちゃん」の姿を見る。少年が落としたチケットはテントの街の駄菓子屋さんのチケットでもあり、病院の外出許可証にもなり、テントの中のステージの上では、僕は、いつのまにか出演

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『かがみの孤城』、リオンの記憶と二つの「奇跡」

『かがみの孤城』、リオンの記憶と二つの「奇跡」

2月25日(23年)に投稿したエッセイ「映画『かがみの孤城』、原作と比べると」の中で、原作のラストが、映画ではラストにならず、リオンの転校シーンの前におかれていたことと、映画のラストになったリオンの転校シーンでリオンにかなりはっきりとした城の記憶が残っているようにしたことについて、「残念な点」、「賛成できません」と書きましたが、この2点について、もう少し、書き加えておきたいと思います。
まず、映画

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『かがみの孤城』文庫版で削除された一文の意味

『かがみの孤城』文庫版で削除された一文の意味

小説『かがみの孤城』(辻村深月作)の21年発行のポプラ文庫版では、17年発行の単行本から、喜多嶋先生とこころの初対面シーンでの「それ以降、会話が途切れた」の一文が削除されていることは、『「かがみの孤城」奇跡のラストの誕生』(北村正裕著、23年1月、彩流社刊)でも触れましたが、その一文の削除の意味について、少し、書いておきたいと思います。

まず、『「かがみの孤城」奇跡のラストの誕生』第二章では、次

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「伏線回収」より「伏線加筆」、改作の決断が生んだ傑作『かがみの孤城』

「伏線回収」より「伏線加筆」、改作の決断が生んだ傑作『かがみの孤城』

『「かがみの孤城」奇跡のラストの誕生』(北村正裕著、2023年1月、彩流社刊)の第一章では、小説『かがみの孤城』(辻村深月作)が、2013年~2014年の「asta*」連載では完結せず最初から書き直した上で連載版とは矛盾さえする当初の想定外の結末を持った物語として生まれ変わって2017年の単行本が出版されたという経緯を紹介しましたが、連載という書き方について、『Another side of 辻村

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映画『かがみの孤城』、原作と比べると

映画『かがみの孤城』、原作と比べると

映画『かがみの孤城』は、原作小説と比較し違いに着目して、アニメ映画という表現手法の特徴をうまく生かせた部分、そして、約600ページの大作を2時間にまとめなければならなかったこと故に原作の良さが生かしきれなかった部分もあると思いますが、それぞれ、少しずつ記しておきましょう。

アニメならではのうまい表現ということでは、終盤の光の階段を挙げたいと思います。×マークがこころの手の中にはいったり飛んでいっ

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「夕焼け雲」(北村正裕作詞・作曲・歌・絵)

「夕焼け雲」(北村正裕作詞・作曲・歌・絵)
2011年8月25日、御茶ノ水KAKADOでのライブ音源使用。
アルバム「宝石の作り方」収録の音源とは別の音源です。

最後の夏

最後の夏

その年の夏は、特別な夏だった。「悪い病気が流行っているから」と、どこにも遊びにいってはいけないと言われていた。でも、特別だったのは、それだけではなかった。

僕は、毎年、家族で出かける河原に、ひとりで行くことにした。誰にも言わずに。
「今年は特別だから」
そう言われても、僕は、納得できなかった。
来年の春には、遠くへ引っ越してしまう。
だから、あの大好きな河原でのバーベキューや水遊びも、今年の夏が

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「まどマギ」「かがみの孤城」と「シンエヴァンゲリオン劇場版」を比較(考察・研究解説本紹介)

「まどマギ」「かがみの孤城」と「シンエヴァンゲリオン劇場版」を比較(考察・研究解説本紹介)

『夢の中の第3村-「エヴァンゲリオン」「まどかマギカ」と「かがみの孤城」の芸術論』(北村正裕著、2022年1月、Kindle版電子書籍)は、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』を含むアニメ『エヴァンゲリオン』シリーズ(庵野秀明総監督)と『エヴァンゲリオン』の強い影響を受けて生まれたアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』(新房昭之総監督)、そして、『まどかマギカ』によって定着したパラレルワールドの考え方を土台

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「かがみの孤城」連載版から十七年版への大改作を検証

「かがみの孤城」連載版から十七年版への大改作を検証

小説『かがみの孤城』(辻村深月作)は、雑誌「asta* 」の二〇一三年一一月号~ 二〇一四年七月号と二〇一四年九月号~二〇一四年一一月号に連載された後、大改訂されて二〇一七年に単行本が出版されたという経緯があります(二〇二一年の文庫版は、二〇一七年版とほぼ同じ)。そして、十七年版での感動的なラストは、連載版にはないばかりか、連載版の内容は、十七年版の結末とは矛盾してしまうものになっています。連載版

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