磯野研(Isono Revitalizing Office合同会社代表・中小企業診断士)

びわ湖のほとりで伝統工芸や地場産業の作り手と使い手をつなげる企画室を夫婦で経営| 伝統…

磯野研(Isono Revitalizing Office合同会社代表・中小企業診断士)

びわ湖のほとりで伝統工芸や地場産業の作り手と使い手をつなげる企画室を夫婦で経営| 伝統工芸を世界へ広げるため、金継ぎ作品の越境ECサイトを運営中| 世界に地場産業を発信したい方におすすめです| https://www.isono-revitalizing-office.jp/

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特別編:ロンドン紀行 その1 ~ロンドンでの金継ぎ蒔絵ワークショップ~

前回、自分たちでネットショップを作るお話を書きました。今回は特別編として、2022年10月1日(土)、10月2日(日)と、2日間にわたってイギリス・ロンドンのパンテクニコンという施設で行った、金継ぎ・蒔絵のワークショップについて書きます! パンテクニコンは日本と北欧の飲食と工芸をテーマにした、おしゃれな高級商業施設です。 1. 何をしたのか?ロンドンで蒔絵ワークショップと金継ぎ作品の展示販売を行いました。展示販売は合計13点で、来年1月末まで続きます。 とっておきの大鉢金

    • 特別編:ロンドン紀行 その2 お金・ミュージアム ~大英博物館で金継ぎを想う~

      前回、ロンドンでの金継ぎワークショップと販売のお話を書きました。 1週間でも海外に行っていると、対面のお仕事がたまりますね・・・10月終わりになって、ようやく正常化してきました。 大分時間が経ってしまいましたが、今回も特別編です。 1. 日本人がイギリスを旅するということ皆さま、イギリスのイメージってどんな感じですか?産業革命とか、大英帝国とか、エリザベス2世とか、競馬とか、人によっていろいろあると思います。私の場合、中学高校の英語の先生がイギリス出身だったこともあり、なん

      • 第9章:自分たちでネットショップを作る

        前回、デザイナーさんの話をきっかけに、金継ぎに出会った話を書きました。今回は仮説を元に、実際のビジネスを始めたお話です。販売できなければ意味がないため、手を動かしながらネットショップを作ってみました。 1. ネットショップの進化ここ5年間の大きな変化として、ネットショップ型クラウドサービスの充実が挙げられます。よくCMで流れているBASEやSTORESなど、10年前よりも格段に扱いやすく、安く自前の店舗が持てるようになりました。ネットショップ型のECサイトは自分のお店を持つ

        • 第8章:特徴を強みにできるビジネスを考える

          前回、金継ぎ作品を海外に販売するビジネスを始めようと決めました。今回は実際にビジネスを始める際の経営戦略です。経営の中核は「創る(開発)→作る(生産)→売る(販売)」と言われます(出典:『V字回復の経営』 三枝匡 日経ビジネス文庫)。 それぞれを誰が受け持つべきでしょうか・・・ 1. 創るまずは価値を創る部分です。この部分は私と妻で一緒に考えました。日本ではSDGsと呼ばれますが、欧米ではサステイナブル、環境と調和した形でのビジネスが強く求められています。 こういった新し

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        特別編:ロンドン紀行 その1 ~ロンドンでの金継ぎ蒔絵ワークショップ~

          第7章:デザイナーさんからヒントをもらう

          前回、工芸品の価値を高めるには背後にある文化が重要だと書きました。今回は金継ぎという工芸品のヒントをデザイナーさんからいただき、それについて仮説を立てる話です。 1. 金継ぎの存在を知るある日、いつもお世話になっているデザイナーの乾さんから「金継ぎって知ってる?」と話を振られました。 金継ぎは日本独自の工芸で、割れた器を漆を使ってつなぎ合わせ、金で加飾した工芸品です。トップ画像のような器ができあがります。 機能面から見ると、陶磁器と漆器の悪い部分を併せ持っています。電子レ

          第7章:デザイナーさんからヒントをもらう

          第6章 何を売るのかが決まらない

          世の中には成功事例が溢れていますが、むしろ大切なのは失敗事例。成功は独自の要素や運があるため、再現が難しい。一方で、失敗は条件が揃えば確実に同じように再現ができます。小さな失敗を記録することで、後々の役に立てば良いなと思っています。 1.おもしろいだけではだめ職人さんを訪ねると、とりあえず作ってみた試作品がたくさん眠っています。例えばこの作品! 器の内側に塗った漆が、木の導管を伝って外にしみ出しています。この模様は1点ずつ異なっており、眺めていると結構おもしろいのです。透明

          第5章 売上1,000万円が分岐点? ~創業融資は呪いに似ている~

          今回は趣向をちょっと変えて独立とお金の話です。いくらくらいお金がいるのか?お金を借りる必要があるのか?など、潰れにくい企業の作り方を書きます。独立にあたって、いろいろ考えた内容をまとめています。 1.創業融資と学資ローンは呪いのようなもの商工会議所で開業相談を受けていると、よくある質問がわかってきます。 大体こんな感じです。 a. 創業に使える補助金はありませんか? b. 公的な融資を受けたいのですが、いくらくらい借りられますか? 一方、開業して数年以内の企業様で不振に陥

          第5章 売上1,000万円が分岐点? ~創業融資は呪いに似ている~

          第4章 最初のプラン ~過去の事例を研究したものの~

          滋賀県・長浜市の漆職人である宗永堂の杉中さんと一緒に、新しい挑戦が始まりました。その中には、トップ画像のように、私のパソコンへ箔押しと蒔絵をしてもらった、なんていうものもあります。最初に行ったのは、日本全国の伝統工芸の面白い事例の共有です。過去の事例を参考にすれば何か思いつくと思ったのですが・・・。 1.印象に残った工芸事業者さん ~坂本乙造商店~私自身が過去に訪問した中で、印象に残る事業者さんがいます。 まず思い浮かぶのは福島県・会津漆器を訪問したときに出会った、坂本乙

          第4章 最初のプラン ~過去の事例を研究したものの~

          第3章 伝統工芸に出会う ~工芸ってなんだ?~

          中小企業支援の現場では補助金など、悩ましい施策も多くあります。 しかし、いよいよ伝統工芸に出会うのです。ようやく記事も本番! 1.伝統工芸を知る滋賀県には3つの国指定伝統的工芸品があります。彦根仏壇・近江上布・信楽焼です。彦根商工会議所でのお仕事の1つに、彦根仏壇の有志で作られたグループ、ナナプラスの支援がありました。 おそらく、読者の皆さまのご自宅でも、仏壇がない方が多いのではないでしょうか。うちの賃貸にもありません。お寺を中心とした信仰が薄れゆく現在、いろいろな祈りの

          第3章 伝統工芸に出会う ~工芸ってなんだ?~

          第2章 コンサルタントが事業者になるメリット・デメリット ~補助金漬けの中小企業支援~

          中小企業診断士の代表的な仕事と言われている補助金支援。中小企業支援の現場にいると、これが結構な矛盾を生み出していることに気づきます。そこから自分のビジネスを始めようと思った経緯を書きました。 1.商工会議所で待っていた仕事中小企業診断士になった私が勤めたのは滋賀県・彦根市にある彦根商工会議所です。商工会議所と商工会、似た組織がたくさんあって区別がつきにくいのですが、こんな感じです。 それなりに大きな街にある:商工会議所 それ以外の地域をカバーする:商工会 どちらも法律に

          第2章 コンサルタントが事業者になるメリット・デメリット ~補助金漬けの中小企業支援~

          第1章 その2 36歳で中小企業診断士になったものの・・・仕事を始める

          学生からいきなり起業というのは難しいものです。 そのため、多くの場合、いったん就職ということになります。自分自身がそんなに立派な勤め人だったかというと、とてもそんなことはありません。確実にできが悪い部下だったのではないかと思います。ただ、会社の居心地が良ければ独立など考えなかったのも事実です。 人生100年時代を迎え、弱みを強みに変える人生設計が必要なはずです。 1. 普通の仕事を始める当時私が働いていた日本電産ってどんな会社でしょう? 創業者である永守重信氏1代で、1兆

          第1章 その2 36歳で中小企業診断士になったものの・・・仕事を始める

          第1章 その1 36歳で中小企業診断士になったものの・・・何がなんでも自分の納得する居場所をつくる

          結局のところ、自分と大切な人の居場所を作るためあれこれ動くことで、道が開けるのではないかと思うのです。余程の天才でなければ、学歴はあった方が人生の修正がききやすい。良く言われるように、点と点が後からつながるような人生にしたいものです。 1. 出身がわからない(大学院まで)出身はどこですか?という質問に結構困ってしまう方っていませんか? 私はそのパターンです。両親が転勤族だったというわけではありません。元々、神奈川県の相模原市という場所に住んでいたのですが、中学と高校は鹿児

          第1章 その1 36歳で中小企業診断士になったものの・・・何がなんでも自分の納得する居場所をつくる

          第0章 夫婦で販路ゼロから始めた小さな越境ECで、ロンドンに出店する話

          1.自己紹介こんにちは。滋賀県で伝統工芸作品の越境ECサイトを運営している、磯野研と申します。 皆さま、金継ぎという工芸をご存じでしょうか?日本でもちょっぴりブームになっていますが、割れてしまった器を接合して、金粉などで割れ目を加飾した工芸品です。日本由来の工芸で、室町時代以降、茶の湯の文脈で発展してきました。伝統的な手法では接合に漆を用います。 私たちはThe kintsugi Labo JAPANという店名で、主にアメリカへ金継ぎ作品を2021年9月から販売しています。

          第0章 夫婦で販路ゼロから始めた小さな越境ECで、ロンドンに出店する話