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第7章:デザイナーさんからヒントをもらう

前回、工芸品の価値を高めるには背後にある文化が重要だと書きました。今回は金継ぎという工芸品のヒントをデザイナーさんからいただき、それについて仮説を立てる話です。

1. 金継ぎの存在を知る

ある日、いつもお世話になっているデザイナーの乾さんから「金継ぎって知ってる?」と話を振られました。

金継ぎは日本独自の工芸で、割れた器を漆を使ってつなぎ合わせ、金で加飾した工芸品です。トップ画像のような器ができあがります。
機能面から見ると、陶磁器と漆器の悪い部分を併せ持っています。電子レンジは使えず、強度も弱くなる。
一方、情緒面から見ると、本来は捨ててしまう器を再び使えるようにするわけで、思い出をよみがえらせるようなこともできます。

乾さんから「アメリカの知人から、金継ぎってどこで買えるの?、という質問をもらったんだ。日本では金継ぎって、壊れた器を修理する文脈ばかりなんだけど、外国では金継ぎの器そのものを購入したいというニーズがあるようなんだよね。金継ぎの器を作って売れば、うまく行きそうなんだけどなー。あ、磯野さんがこれを言った5人目ね。先に相談した人は手を付けようとしないんだけど。ちょうど割れた新品の器を買って欲しいという窯元さんもいるので、よかったら挑戦してみては?」というコメントをもらったのでした。

ただ、なぜアメリカの方が金継ぎ作品を買いたいと思うのかがわかりません。その理由を調べなければと思い立ちました。

2. 金継ぎについて調査する

割れてしまった器を金継ぎして、再び使えるようにする行為をアップサイクルと呼びます。再び使うという意味ではリサイクルも同じですが、リサイクルは前後の価値が基本的に変わらないのと比べて、アップサイクルは後の方が前よりも価値が高まるところに特徴があります。

まず、金継ぎがどのように文化と結びついているのかを調べることにしました。日本では茶の湯の伝統と結びついており、金継ぎ教室がブームになっていることがわかりました。伝統的な漆を用いたものから、接着剤を用いた簡易なものまで、様々なスクールがあります。
ただ、完成品の金継ぎを売っている事業者さんは本当に少なく、あったとしてもどうやって器を直しているのか、器自体をどこから仕入れているのかがわからないものばかりでした。

次に、アメリカでどのように金継ぎが受け入れられているのかを調べることにしました。手っ取り早いのはAmazon.comでkintsugiと入力して、どのようなものがあるのかを調べることです。
まず出てくるのが大量の金継ぎキット!どれも接着剤を使用しており、とても安いです。

Amazon.comでkintsugiを調べた結果

そして、どのような本が出版されているのか見てみました。意外なことに、結構たくさんの本が出てきます。試しに1冊、Kindleで購入してみました。いやー、すぐに洋書が手に入る時代になって、本当にすばらしい・・・

Amazon.comでkintsugiの本を購入しました

読んでみたところ驚きました。金継ぎという存在が、割れてしまったものを再びつなぎ合わせる、すなわち、近代文明の完全性に異議を申し立てる文脈で、一種のヒーリングとして語られていました。そもそも論として、完全性を重んじる西洋文明の中にあって、ある種のオリエンタリズムとして金継ぎの思想が受容されているのだとわかりました。マインドフルネスがIT企業の間で話題になっていることは知っていましたが(Apple Watchにも標準でアプリがついていますね)、こういうムーブメントがあるのですね。

その上で、日本のCreemaに相当する、手作り品が販売されているEtsyでkintsugiを検索したところ、非常にたくさんの作品と修理キットがヒット!確実にニーズがあることがわかりました。

Etsyでkintsugiを検索した結果

ただ、どの作品も本当に安い!1個1万円しないくらいで、しかも接着剤を普通に使っています。日本では漆を用いた金継ぎ修理がそれなりに一般的ですが、そういった高価な手法はほとんど知られていないようでした。

3. これは行ける!?と仮説を立てる

そう、アメリカでは金継ぎといっても接着剤で接合された簡易なものばかりで、伝統的な手法で作られた金継ぎ作品には出会えない可能性が高いのです。しかもEtsyやeBayといったネットショッピングのモールでは接着剤でくっつけたものも、そうでないものもいっしょくたに販売されており、品質がまったく担保されていません。

アメリカの方がわざわざ日本で金継ぎを買いたい!と発言する場合、マインドフルネス的な精神文化が価値を決める背景にある。そうであれば高価であっても、器の出所がしっかりしていて、しかも漆で作られた伝統的な技法で作られた作品だと確信できるお店から買いたいのではないか?と仮定しました。もしこの仮定が正しいのであれば、以下のような条件を満たす作品を販売すれば購入につながりそうです。

  1. サステイナブルな文脈に対応するため、漆で修理した伝統的な作品であることを明らかにする

  2. 器の入手先を明らかにする。器自体も価値があるものが望ましい

  3. 金継ぎの精神を大切にするため、故意に割っていない器であることを明確にする

なぜ仮説にとどまっているかというと、同じ内容の事業を行っている方が英語・フランス語圏で見当たらなかったためです。ごく少数、フランスで完成品の販売をされている方がいらっしゃいましたが、器がどのようなものかがわからないので微妙に違う。

ひょっとすると、超ニッチな領域ではありますが、世界一になれるのではないかと感じました。

【夫婦が得た教訓】

今の段階では売れるかどうかがわからない、仮説の段階です。高価なものが売れるのか心配なのは確かですが、これからはいよいよ実践!仮説の正しい点・間違っている点を検証して、お客様に価値を提供できる=お金が儲かって継続できるビジネスを目指します。

いよいよ新しいビジネスの立ち上げです!でも、どのように最初の一歩を始めれば良いのでしょうか・・・

次回に続きます!

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滋賀県のびわ湖のほとりでコンサルティングと伝統工芸のお仕事をしています。今後もnoteを通して皆様と交流できれば幸いです。

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