特別編:ロンドン紀行 その2 お金・ミュージアム ~大英博物館で金継ぎを想う~
前回、ロンドンでの金継ぎワークショップと販売のお話を書きました。
1週間でも海外に行っていると、対面のお仕事がたまりますね・・・10月終わりになって、ようやく正常化してきました。
大分時間が経ってしまいましたが、今回も特別編です。
1. 日本人がイギリスを旅するということ
皆さま、イギリスのイメージってどんな感じですか?産業革命とか、大英帝国とか、エリザベス2世とか、競馬とか、人によっていろいろあると思います。私の場合、中学高校の英語の先生がイギリス出身だったこともあり、なんとなく親しみを感じていました。
ただ、島国と言うこともあって、「ドイツ訪問のついでにフランスも訪れよう!」ということになりにくい面があります。あと、明治時代の日本から見たイギリスのイメージ、特に夏目漱石がイギリスでとても微妙な日々を過ごしたという話がどうしてもつきまといます。
加えて、イギリスの食事がおいしくない!という良く聞く話もあって、「ヨーロッパを訪問するときにまずイギリスに行きたい!」ということには、なかなかならないのではないかと感じています。
今回旅行したのはロンドンだけですので、イギリスという連合王国の中のほんの少ししか経験できていません。ただ、ロンドンを少しだけ訪問しただけでも、また行きたい!という気持ちになりました。
2. お金のこと
私たちがロンドンを訪問したのは、トラス政権下で急激なポンド安が進行していた時期。1ポンドがほぼ1ドルになっていました。ただでさえ対ドルの円安で厳しい日本の旅行者にとって、これは助かります。
ちなみに、11月3日時点で、1ポンド168円まで戻しています。以下のレートは11月最初の値で計算し直しました。
スーパーでのコーラ1本の価格は、ほぼ日本の2.5倍程度です。サンドイッチに至っては、全然おいしくないのに1個500円くらいします。現地の賃金は日本よりずっと高いとは言え、これは厳しい・・・
現地のおいしいイタリアレストランだと、以下のランチで1人6,000円以上です。シンプルにドル高ですごいことになっているハワイ旅行と比べるとマシとはいえ、それでも高いですよね。
物価が高い一方、とても便利なこともあります。ロンドン市内ではほぼ現金を使いませんでした!東京都23区内との違いは、Suicaのような様々な規格に分かれているキャッシュレス決済が、全てVISAかmasterのタッチ決済に統一できていること。鉄道やバスに乗るときもVISAタッチで済みます。
細かいことを言えば、Suicaの方がコンマ数秒の関係でピッとゲートが開くのが早いため、後ろの人がつかえなくてすむなどのメリットはあります。ただ、そんな細かなメリットより、VISAタッチで全てが済むというメリットの方が上回っていたのでした。
ちなみに、チップも請求に載せられているため、現金で別途チップを払う必要はありません。例外はテムズ川クルーズやホテルのクリーニングの方に支払うチップだけでしたが、本当にこれ以外はキャッシュレスでした。ヒースロー国際空港で5,000円くらいをポンドに替えれば、チップも十分です。
3. ミュージアムのこと
ナショナル・ギャラリー(国立美術館)や大英博物館は無料です。もちろん寄付のお願いはあるのですが、無料で入れるあたり、グレートブリテンのグレートさを世界中に知らしめる効果がありそうです。
ナショナル・ギャラリーは私の大好きな本である『会計の世界史』に出てくる、ターナーの『雨、蒸気、速度-グレート・ウェスタン鉄道』を見に行きました。うん、実際に実物を目の前にするとすばらしい。『会計の世界史』では減価償却という概念をイギリスの鉄道会社が会計に入れ込んだ点を、革命として描いていました。イギリスという国は形のないものをお金に換える技術が本当にすごいと思わざるを得ません。
後日、エコテロリズムでトマトスープをかけられてしまったゴッホ「ひまわり」もありましたし、見所たっぷり。ちなみに、ガラスの入った額で守られていたため、絵自体は無事だったようです。
いずれにしても、さすがの規模と内容です。ヨーロッパの田舎だったイギリスがイタリアのような文化先進国に追いつくため、植民地で覇権を握った後に文化政策に大いに力を入れた結果がよく理解できたのでした。
大英博物館は今更感がありますが、やっぱりすごい。世界最大のミュージアムといわれるだけのことはあります。三菱商事から貸し出されている日本館の品々は、正直微妙・・・ただ、金継ぎ作品も置いてあります。
特にエジプト・地中海の品々は世界史の教科書に出てくるものばかりで、あまりの多さに目がクラクラします。南米の美術館とのワークショップでも感じたのですが、本当に人類の歴史と共に焼き物って存在しますね。漆器はアジア限定なので、妙に凄さを感じます。
そう考えながら焼き物を見ているうち、金継ぎのワークショップをするにしても、世界各地の焼き物を作られている、プロの陶芸作家さんを対象にした方がおもしろいと感じました。プロの方なら工芸に関する大変な状況も共通しているはずだし、アマチュアの方よりもお金についての話をしやすい。きちんと採算を取れる事業にするために、大英博物館でのひらめきが役に立ちそうです。
4. まとめ
イギリスは自動車産業も廃れてしまったし、どうしても過去の栄光に、現在がかすみがちなところがあります。ただ、実際にロンドンを訪問すると、「なんだか偉そうで、周囲の国も話をなんとなく聞いてくれる」感じがうらやましく感じました。これは一朝一夕には実現できませんね・・・
かといって、過去の膨大な植民地支配の負の遺産を引き継ぎたいとは到底想いませんけれども。
イギリスは、法学部的にはマグナカルタや権利章典といった、目に見えないものを成文化することで有名な場所です。実はこれって、金融を始めとするシステムの考え方とそっくりなんですよね。
世界の標準は自分たちだ!という気概が、国の随所に現れていると感じました。
次回は通常の投稿に戻ります。
お楽しみに!
↓↓↓ぜひtwitterのフォローもよろしくお願いします!↓↓↓
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?