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ドイツ一人旅_味噌汁_16_05【海外旅行】

前の話  プロローグ  16日目01

1999年冬 16日目 日本

「読める、読めるぞ!」

成田空港の到着ロビーに出るとありとあらゆる日本語の文字が目を通して脳に直接飛び込んでくる感覚だった。電車の案内、売店やトイレの場所だって一瞬で理解できる。文字とはこんなにもすごいものだったのか。

ジブリアニメ『ラピュタ』に出てくるムスカ大佐が石板に書かれた古代ラピュタ文字を興奮して読んでいたときの気持ちがよくわかった。

そしてそれ以上にすごいと思ったのは、この果てしなく広い地球の中に自分の帰るべき家がポツンとあるということだった。それは奇跡に近いものを感じた。戦争や紛争、災害などで帰るべき家がない人のことを思うと居たたまれない。家があるということは、もうそれだけで安心できるものなのだ。

電車を乗り継ぎ、実家の最寄りの駅に到着した。駅には父が迎えに来てくれた。

「どうだった?」
「疲れた…」

相変わらず会話は単語のみだった。どうして親子同士だと無愛想になってしまうのだろう。実家に着くと夕飯の準備が整っていた。

「おかえり。楽しかった?」
「疲れた…」

まったくもって無愛想だ。食卓につくと夕飯を食べ始めた。メニューは何だったか覚えていないが、味噌汁の具は僕が一番大好きな豆腐と油揚げであったことは今でも覚えている。


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0日目 きっかけと準備(日本)
1日目 初めての海外(フランクフルト)
2日目 初めての散策(カッセル)
3日目 初めてのビール(ケルン)
4日目 初めてのサッカー(ドルトムント)
5日目 長い長い一日(ベルリン)
6日目 ドナウの旅人(パッサウ)
7日目 ドナウの風景(レーゲンスブルク)
8日目 スタジアムでの出会い(ミュンヘン)
9日目 白亜の城での出会い(フュッセン)
10日目 酔っ払いとの出会い(ハイデルベルク)
11日目 最後のサッカー(シュトゥットガルト)
12日目 ドナウの泉(ドナウエッシンゲン)
13日目 銀河鉄道(インターラーケン)
14日目 山頂での出会い(ユングフラウヨッホ)
15日目 ホームシック(フライブルク)

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