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リエゾン学級経営 第7章「令和における学級経営:”ふつう”の概念をイノベート」

リエゾン学級経営とは?


中教審答申「令和の日本型学校教育」実現への課題

令和の日本型学校教育は、2020年代を通じて目指すべき学校教育の姿として、中央教育審議会において答申されたものです。
この答申では、全ての子供たちの可能性を引き出すために、個別最適な学びと協働的な学びの実現を重視しています。

個別最適な学びとは、一人ひとりの子供の興味・関心や学習状況に応じて、最適な学びを提供することです。
そのためには、子供の理解度や習熟度を把握し、その結果に応じて指導内容や方法を調整することが重要です。
また、子供自身が自分の学びを主体的に考え、計画・実行・評価できるような環境を整えることも大切です。

協働的な学びとは、子供同士が協力しながら学び合うものです。
そのためには、子供同士が協力し合うためのルールやマナーを身に付け、お互いに尊重し合いながら学び合えるような環境を整えることが重要です。
また、子供たちが主体的に学び合うことができるような課題や活動を設定することも大切です。

令和の日本型学校教育が目指す個別最適な学びと協働的な学びは、いずれも子供たちの主体性を育むことにつながります。
子供たちが自分の興味・関心や学習状況に応じて学び、お互いに協力し合いながら学び合うことで、自ら考え、行動できる力を身に付けることができるのです。

個別最適な学びは、「個に応じた指導」の理念を具体化するものとして位置づけられています。
支援を必要とする少数派の子どもたちは、診断の有無にかかわらず、さまざまな特性や課題を有しています。
そのため、一人ひとりの特性や課題に応じて、学習内容や方法を調整することが重要です。

協働的な学びは、「共生社会」の実現に向けた重要な取り組みとして位置づけられています。
支援を必要とする少数派の子どもたちは、多数派の子どもたちと共に学校生活を送ることになります。
したがって、多数派と少数派が互いに寄り添い合いながら学び合っていかない限り、共生社会の理解や共感力を育むことはできません。

この個別最適な学び・協働的な学びの実現の障壁となる課題が2つあります。
①特別支援教育のスキルアップ。
②多数派と少数派が互いに寄り添いあい、共感しながら学び合うことのできる学級づくり。

この2つを解消しない限り、令和の日本型学校教育は実現は絶対にできないと確信しています。

この2点を解消する学級経営手法が、リエゾン学級経営です。

このような現状や課題をふまえ、多様性を尊重し共に学び成長する新たな教育アプローチとしてリエゾン学級経営を考案しました。

この考え方のベースとなっているのは、多数派が使う「ふつう」という言葉の違和感からです。

多数派が使う「ふつう」には、どんな意味があるのでしょう?
「みんなと同じ」
「多くの人と同じ」
ではないでしょうか?

「ふつう、チャイム鳴ったら座るよね」
「ふつう、発言したいときは手を挙げるよね」
といったような使い方を、多数派の人達は無意識にしています。

そして、みんなと同じであることを「ふつう」としてしまったのが、日本の教育システムです。

ここで多くの人が使う「ふつう」には、おそらく悪意はありません。
「ふつう」であることで居場所を確保し、みんなと同じという安心感を抱きたいだけなのです。
ですが、結果的にみんなと同じようにできない子たちを少数派として追い込み、居場所をなくしていったことも事実です。
同調圧力という言葉は、まさにこの多数派優位の社会の状況が生み出した負の遺産と言えます。

日本は学制以降、一斉指導スタイルを原則として指導をしてきたため、一人の教師が、同じ課題を40人近くの子どもに教えてきました。

それゆえに、
「みんなと同じであること」が強要されてきた歴史があります。
それが積み重なって大きな負の財産となってしまいました。
令和時代の教育においては、この負の財産を払拭すべく、「ふつう」のパラダイム変換をしていかない限り教育の未来はありません。

「ふつう」という概念のパラダイム変換については↓をご覧ください。

リエゾン学級経営とは、
「少数派と多数派が互いに寄り添い合い、共に学び、クラス全員が成長するための教育的なアプローチのことです。」

※少数派とは学級で個別の支援を要する児童
※多数派とは個別の支援を必要としない児童

全員が多様性を尊重し、誰にとっても居心地のよい場、楽しく学びながら互いを認め合う学習環境を築き、目標に向かって努力しながら成長できることを目指します。

学級経営(ゴール設定)×心理的安全性(居場所づくり)×特別支援理解教育(多数派・保護者・職員への理解)=リエゾン学級経営

リエゾンとは、もともとフランス語からきた言葉です。
連携や結びつきを意味していて、医療現場でよく使われています。

これからの学級経営において、多数派と少数派の連携や保護者や校内外の人材との結びつきを強化し、互いの理解を深め合うことが必要不可欠であると感じ、

リエゾン学級経営と名付けました。

次の学習指導要領改訂では、特別支援教育の理解が一層求められる内容となることが予想されます。

そういう意味で、このリエゾン学級経営の理論は、令和時代における学級経営の基本となっていくはずです。

リエゾン学級経営第1章~第6章までの紹介

これまで
第1章:教室で困り感を示す子ども達が増加の原因
第2章:不登校児増加問題
第3章:誰にとっても居心地がよいクラスづくり
第4章:特別支援理解教育
第5章:学級経営論
第6章:特別支援理解教育の2つの実践
について説明してきました。

今回は、

第7章「リエゾン学級経営の可能性」

についてです。

リエゾン学級経営を実現するためには、少数派の子たちが、教室を自分の居場所と思えるようになることが大切です。
実現できないと、トラブルを引き起こしたり、教室から脱走したり、教室に入れなかったり、学校に来ることができなくなったりします。

今回はドラマの紹介をします。
永野芽郁さん主演の「ユニコーンに乗って」というドラマがありました。
なぜドラマの紹介??
と思う方もいるかもしれませんが、しばらくおつきあいください。

海斗君という、ASD特性があり、かつプログラミング能力、空気の読めなさや対話能力の低さが半端ない子です。その子がドリームポニーというスタートアップ企業で働いています。
おそらく一般企業では、対人関係がうまくいかなくて働くことができない子という設定だと思います。
海斗君は、いわゆる2Eと呼ばれている子です。

2Eとは、twice-exceptional(二重に特別)の略で、何らかの優れた才能と発達障害等の障碍を併せもつ子どもを指します。

具体的には、知能、創造性、知覚、運動など、特定の分野で優れた能力を発揮する一方で、学習障害、自閉スペクトラム症、注意欠陥・多動性障害など、何らかの障害を抱えている子どもが該当します。

2Eの子どもは、才能と障害の両方によって、学習や生活に困難を抱えることがあります。そのため、才能を伸ばす支援と、障害による困難を補う支援の両方が必要となります。

2Eの子どもの例としては、以下のようなケースが挙げられます。

①数学や理科、芸術などの分野で優れた能力を発揮する一方で、読み書きの障害や自閉スペクトラム症を抱えている子ども

②運動能力が抜群で、スポーツで活躍する一方で、注意欠陥・多動性障害を抱えている子ども

③創造性豊かで、芸術や音楽などの分野で才能を発揮する一方で、発達性協調運動障害を抱えている子ども

2Eの子どもの支援については、まだ十分に研究が進んでおらず、支援の形態は子どもによって異なります。しかし、2Eの子どもの才能を伸ばし、社会で活躍できる人材に育てるために、早期発見と適切な支援が重要です。

なお、2Eの子どもは、必ずしも障害の症状が顕著に表れているわけではありません。そのため、周囲の大人や学校が、2Eの子どもの可能性に気づき、適切な支援を提供する必要があると言えます。

海斗君は、①に該当しています。

ある日、海斗君はスタディーポニーキャンパスというアプリの特許技術を、ゲームアカデミアという業界大手企業に横流しした疑いをかけられ、居場所がなくなり退社します。
ですが、ドリームポニー社員小鳥さんのおかげで海斗君は再びドリームポニーに復帰します。
その復帰のために、ドリームポニーに面接に来た海斗君の会話を紹介します。

「僕の名前は、ミン・ソヌです。日本名は森本海斗。両親の影響で日本語と韓国語が離せます。僕はいつも気づいたらみんなから嫌われていました。直したくても直し方が分かりません。それで高2の時、テストの解答用紙がハッキングされ、ネットにばらまかれるという事件が起きました。居場所がどこにもなくなって、学校に行けなくなりました。家でゲームしている時だけが本当の自分でいられました。でもある日、成川CEOの記事をネットでたまたま見かけて、学校という環境に合わない僕みたいな人間でも勉強できる場所があるんだと知りました。僕のニーズが詰まったアプリでした。僕もいつかこんなアプリがつくりたい、気付いたら好きだったプログラミングの勉強をまた始めていました。御社がつくったスタディーポニーが僕をまた外の世界に連れ出してくれました。社会に戻してくれました。ここで出会ったみんなは、僕を一人の人として扱ってくれました。僕の居場所はここしかありません。僕はまたドリームポニーで働きたいです。ここにいるみんなと年齢も性別も国籍関係なく、勉強できる場所をつくりたいです。よろしくお願いします。」

「ユニコーンに乗って」第8話より抜粋

なぜこの会話を取り上げたのか?
それは
「ネットにばらまかれるという事件が起きました。居場所がどこにもなくなって、学校に行けなくなりました。」

という1文を紹介したかったからです。

海斗君が学校に行けなくなった理由は、多数派にはめられ、さらに先生からも疑いをかけられたからです。
自分がやってないことを信じてもらえず、誰からも寄り添ってもらうことがなかったのです。
そんな理由で不登校になってしまうなんて悲しすぎます。
もちろんドラマなので、感情移入しすぎるのもどうかと思いますが、
右肩上がりに増え続ける不登校児童のことを考えると、似たような状況が教育現場にも起きているのではないかと危惧しています。
親や先生やクラスの子がもっと早く海斗君の困り感に気づいて支援していれば、こんなことにはならなかったことでしょう。

またもし、多数派の子たちが海斗君の気持ちに寄り添うことができていたら、この事件の真相を暴くこともでき、学校をやめる必要などそもそもなかったはずです。

リエゾン学級を実践していれば、このような事態を避けることができたはずです。

不登校児童数が増え続ける一番の原因は、担任による多数派優位の学級経営にあります。
この多数派優位の学級経営を改善し、リエゾン学級経営を実践していけば、不登校問題を解消することができます。
第3の居場所をつくることも大切ですが、それよりもまずは、学級経営をイノベートして学校を変えていかないといけません。

リエゾン学級経営とは、
「少数派と多数派が互いに寄り添い合い、共に学び、クラス全員が成長するための教育的なアプローチのことです。」

全員が多様性を尊重し、誰にとっても居心地のよい場、楽しく学びながら互いを認め合う学習環境を築き、目標に向かって努力しながら成長できることを目指します。

少数派と多数派が共に成長する学級での可能性は無限大です。
未来の社会を担う子どもたちが、多様性を受け入れながら共に進化成長し、共に学び合う未来への扉を開くために、リエゾン学級経営を取り入れていくことをおススメいたします。

一人でも多くの方がこのリエゾン学級経営に賛同し、実践していただけることを願います。
すべての子どもの幸せを祈って!

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