木爾チレン

小説家。 ✏︎新潮社R18文学賞を受賞し「静電気と、未夜子の無意識。」でデビュー。 最新…

木爾チレン

小説家。 ✏︎新潮社R18文学賞を受賞し「静電気と、未夜子の無意識。」でデビュー。 最新作は「神に愛されていた」 Web:http://1000ve.her.jp/

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    小説家・木爾チレンの、新刊情報や掲載情報ほか、お仕事のお知らせです。

記事一覧

小説を書き続けてくれて、ありがとう

誕生日と新刊発売のときに更新される私のnoteです。 37歳になりました。 37歳ってもう、そこまで死が迫ってるやん。と、生きること自体に焦りを覚えています。 夫が九月で2…

木爾チレン
4か月前
83

新刊と新婚の話――あるいは才能と嫉妬の話

先週、最新作となる『神に愛されていた』が発売になった。 今作は珍しく「あとがき」があるので、この小説を書いたときの思いは、ぜひ本編とともにそちらで読んで頂きたい…

木爾チレン
11か月前
93

好きな人ほど、会いたくない

私のすきなひと、尊敬するひと。 よしもとばななさん。 川上未映子さん。 凪良ゆうさん。 新海誠さん。 ヒカキンさん。 他にも、たくさんいる。 すきなひとほど、だいす…

66

上京と状況について

  今年は正直、生きているのか、死んでいるのかわからなかった。 九月に「みんな蛍を殺したかった」に続く、黒歴史ミステリシリーズとして書いた「私はだんだん氷になった…

48

重版を持たない作家と、蛍の巡礼の旅

「みんな蛍を殺したかった」を書き始めるまえ、私はほとんど死ぬことだけを考えて生きていた。  ――というのは、村上春樹著の「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の…

56

みんな誰かを殺したいほど羨ましい

この小説を書くために、私は黒歴史を過ごしたのかもしれない。 暗闇から見つめる光はあまりにも眩しくて、羨ましくて、憎くて、そして、美しかった。 ミステリ小説『みん…

96

私の人生なんてぜんぶ黒歴史だけど、誕生日おめでとう

34歳になりました。 今の私にとっては信じられない数字だけど、歳を重ねたらあの頃はまだまだ若かったなあとか思うのかな。 ちょうど昨日、一つの作品が校了して、執筆中は…

72

鬼滅の刃が流行る世界は優しい

映画「鬼滅の刃」を見た。 執筆中、LISAさんの「炎」をリピートしていて、最高すぎる歌を劇場で聞きたいと思ったのと、どうせ生きているなら、流行りにはできるかぎり触れ…

43

小説と私の無意識

 小説家になって十年が経った。私は、小説を書いて暮らす日々が好きだ。  少女の頃からずっと小説を書き続けてきて、小説はもはや私の皮膚であり臓器だ。  小説を書かか…

25

受賞|この梅酒が漬かる頃には

お知らせです。集英社コバルト編集部さん主催の『青木祐子の がんばるorがんばらない女性小説賞』大賞を受賞しました。 短編「この梅酒が漬かる頃には」 ↑のURLから無料…

19

LINE恐怖症と死にたい世界

Lineがこわい。 とてつもなく、こわい。 既読つけるのもこわいし、なんなら内容を見るのすらこわい。 返事を書くのは、心と体が元気なときしか無理だ。 きっとそれは私が、…

122

100人中、99人に嫌われる私

高校生のとき、同学年が300人、教室には40人のクラスメイトがいた。 クラスメイトの名前はほとんど覚えていない。 顔がぼんやりと思い出せるくらい。 別に上から目線の発言…

47

彼女が拗ねた徴

 私の一日は、猫の飲み水を変えることから始まる。  そのとき、飲み水に猫のおもちゃが浸かっているときがある。  カレン(一歳になったばかりの雌猫)の仕業だ。  彼…

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好きと充電の関係性

 近頃、何をしていても、何かをしているという感覚がない。なにもできない時も多い。  とにかく眠い。眠くて、漠然と、こわい。  もしかしたら、充電中なのかな。そん…

22

猫と人間についての散文

人間は嘘を吐く。 人間は自分をよく見せようとする。 人間は誰かを傷つける。 猫は嘘を吐かない。 猫はいつも自然体で。 猫は誰も傷つけない。 「あなたを傷つけないから、…

20

SNSはすき・なくなれ・すき

 大好きで大嫌いで。  生きたいし死にたいし。  頑張りたいし眠りたい。  私の世界は、いつだって極端で、何かを感じるたびに心が痛い。産まれた頃からずっとそうだし…

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小説を書き続けてくれて、ありがとう

誕生日と新刊発売のときに更新される私のnoteです。 37歳になりました。 37歳ってもう、そこまで死が迫ってるやん。と、生きること自体に焦りを覚えています。 夫が九月で26歳なので、三か月ほど、一回りも年上になってしまうのも憂鬱ですが、そんな歳の差があっても、女の子扱いしてくれることに毎日感謝しているし、私がこうして明るく生きれているのは、夫に出会えたからだなと思う。 でも全ては、小説と向き合ってきたからこその今で、誕生日だからこそ今日は、過去の自分を褒めてあげたい。 私は

新刊と新婚の話――あるいは才能と嫉妬の話

先週、最新作となる『神に愛されていた』が発売になった。 今作は珍しく「あとがき」があるので、この小説を書いたときの思いは、ぜひ本編とともにそちらで読んで頂きたいのですが、本を刊行したときくらいしかnoteを更新しなくなってしまったので、近況をあわせて、今の気持ちを書き連ねていこうと思う。 まず、新刊『神に愛されていた』について。 この作品のテーマを一言で表すのなら、「才能と嫉妬」そして「究極の愛」になるだろう。 最初に言っておくと、実はこの小説は、天才音楽家モーツァルトとサ

好きな人ほど、会いたくない

私のすきなひと、尊敬するひと。 よしもとばななさん。 川上未映子さん。 凪良ゆうさん。 新海誠さん。 ヒカキンさん。 他にも、たくさんいる。 すきなひとほど、だいすきなひとほど、会いたくない。 会ったら、嫌われるかもしれないし。 そしたら、好きでいるのがこわくなってしまうかもしれない。 だったらそっと、ずっと、遠くから、好きなままでいたい。 でも、ほんとうにそれで、いいのだろうか。 だいすきな人に、だいすきだと伝えることで、はじまる運命もあるんではないだろうか。 明日

上京と状況について

  今年は正直、生きているのか、死んでいるのかわからなかった。 九月に「みんな蛍を殺したかった」に続く、黒歴史ミステリシリーズとして書いた「私はだんだん氷になった」を刊行したが、よく一冊書き上げたものだと思う。 帯に「これは私の黒歴史であり、これからの黒歴史になるだろう」という文言を書いたが、その謳い文句通り、学生時代の黒歴史と、この一年の私の異常な精神状態が反映された、まさに絶望のジェットコースターのような一冊となった。 この小説は、東京で一人暮らしをしながら書いた。 東

重版を持たない作家と、蛍の巡礼の旅

「みんな蛍を殺したかった」を書き始めるまえ、私はほとんど死ぬことだけを考えて生きていた。  ――というのは、村上春樹著の「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」の書き出しを捩った過剰な表現ではあるが、憂鬱の極み乙女だったことは間違いない。  私の小説など誰も待っていない。  私の小説なんていらない。  私なんていらない。  そんな気持ちで生きていたのだ。  でも蛍を書きあげた日、私は不思議なくらい、生きているという感覚に満ち溢れていた。  この世に、蛍より素晴らしい小説は

みんな誰かを殺したいほど羨ましい

この小説を書くために、私は黒歴史を過ごしたのかもしれない。 暗闇から見つめる光はあまりにも眩しくて、羨ましくて、憎くて、そして、美しかった。 ミステリ小説『みんな蛍を殺したかった』が発売されて、一週間が過ぎました。 これは、多岐に渡るジャンルで少女を描いてきたからこその、私の集大成だと思う。 でもこの作品は「イヤミス(嫌な気持ちになるミステリ小説)を書いてみませんか」というオーダーがあったので、決して性格のいい作品ではない。 前作の「これは花子による花子の為の花物語」を読ん

私の人生なんてぜんぶ黒歴史だけど、誕生日おめでとう

34歳になりました。 今の私にとっては信じられない数字だけど、歳を重ねたらあの頃はまだまだ若かったなあとか思うのかな。 ちょうど昨日、一つの作品が校了して、執筆中は苦しいときも多いのに、書き終わるといつも、次の物語を考えはじめていて、やっぱり小説の世界が好きなのだなと思う。 きっと小説が、ひとりぼっちだった私を救ってくれたから。 「みんな蛍を殺したかった」の登場人物の一人にも投影したのだけど、高校時代、私は言わずもがなぼっちであり、嵐を応援することと、ネットでBL小説や夢小説

鬼滅の刃が流行る世界は優しい

映画「鬼滅の刃」を見た。 執筆中、LISAさんの「炎」をリピートしていて、最高すぎる歌を劇場で聞きたいと思ったのと、どうせ生きているなら、流行りにはできるかぎり触れたい。 流行るものには流行る理由があり、流行っているものには、絶対に飛びぬけて素晴らしい部分がある。 だからTwitterでバスったレシピは作るし、流行っている映画は絶対に見に行く。 予習でアニメを3話まで見ただけの、ほぼ初見の状態で、映画館に行った。 正直、あまりはまれなかったらどうしようと不安に思っていたけど、

小説と私の無意識

 小説家になって十年が経った。私は、小説を書いて暮らす日々が好きだ。  少女の頃からずっと小説を書き続けてきて、小説はもはや私の皮膚であり臓器だ。  小説を書かかなくなったら、私は何になるのかさえわからない。  けれど、物語を吐き出し続けた私の脳みそはもう、空っぽなのかもしれないなと時々思う。  今年は、春から夏の終わりにかけて、絶望するくらい、何も書けなかった。ふるえる手でSNSをひらいては、きらきらしているだれかが眩しく、自分なんかいらないと劣等感でうめつくされた。私の脳

受賞|この梅酒が漬かる頃には

お知らせです。集英社コバルト編集部さん主催の『青木祐子の がんばるorがんばらない女性小説賞』大賞を受賞しました。 短編「この梅酒が漬かる頃には」 ↑のURLから無料で読めます。 あらすじを、ざっくり一言でまとめると、 自身の過ちによって婚約破棄された女性が、祖母の住む島で、梅酒作りを通して自分を見つめなおす。 という、ストーリーがあるようでないようなお話なのですが、 舞台になっている島のにおいだったり、祖母と過ごす時間だったり、初恋の人との再会だったり、物語にながれる

LINE恐怖症と死にたい世界

Lineがこわい。 とてつもなく、こわい。 既読つけるのもこわいし、なんなら内容を見るのすらこわい。 返事を書くのは、心と体が元気なときしか無理だ。 きっとそれは私が、完璧主義だからなのもあるだろう。(ぜんぜん完璧じゃないのにね) 軽々しく「OK」だけとか、スタンプだけとか送れない。 一行考えるのも、すごく時間がかかる。 だから、億劫になってしまう。 ちゃんとした文章を打たないと、と、感じてしまう。 あと、lineの終わらせかたもわからない。 とにかく幻滅されたくないとか、失

100人中、99人に嫌われる私

高校生のとき、同学年が300人、教室には40人のクラスメイトがいた。 クラスメイトの名前はほとんど覚えていない。 顔がぼんやりと思い出せるくらい。 別に上から目線の発言とかではない。 私は所謂カースト下位だったし、化粧も知らない地味な学生で、嵐に人生を捧げているオタクだった。 だから向こうも私のことなんて、空気のような、或いはそれ以下の存在だったと思う。 というわけで必然的に、私には友達が少なかった。 でも、(主に)集団行動しているグループの女子とは仲良くなりたいとは、思

彼女が拗ねた徴

 私の一日は、猫の飲み水を変えることから始まる。  そのとき、飲み水に猫のおもちゃが浸かっているときがある。  カレン(一歳になったばかりの雌猫)の仕業だ。  彼女は、遊んでほしい時に遊んでもらえなかったとき、そのような徴を残す。  最初は、床もおもちゃも水びたしになるし、飲み水にもゴミが入るしで、困った癖だなあと思っていたが、近頃はその癖がどうにも愛しくてたまらない。 「ふん、遊んでくれなかったからだよ」  だってそれは彼女が拗ねた徴。 「ごめんね」  眠っていて気が付かな

好きと充電の関係性

 近頃、何をしていても、何かをしているという感覚がない。なにもできない時も多い。  とにかく眠い。眠くて、漠然と、こわい。  もしかしたら、充電中なのかな。そんなありきたりなことを思うけど、充電しても充電しても、溜まる気配もない。  嗚呼、そうか。いっそバッテリーを交換する時が来ているのかもしれない。なんて。  歳を重ねるにつれて、楽しくなるという人もいるが、果たしてそうなのだろうか。私は年を重ねるにつれて、生きやすくはなったが、生きているという実感がわかなくなっている。い

猫と人間についての散文

人間は嘘を吐く。 人間は自分をよく見せようとする。 人間は誰かを傷つける。 猫は嘘を吐かない。 猫はいつも自然体で。 猫は誰も傷つけない。 「あなたを傷つけないから、猫が好きなの?」 一度、そう言われたことがある。 そうなのかもしれない。 「私は、私を傷つけない猫が好きなのかもしれない」 だってそれって――、すごいことでしょう。 誰も傷つけないなんて、神様にだってできない。 猫にしかできない。 「あなただけは私を傷つけないでくれて、ありがとう」 だから私は、誰かに傷つけられる

SNSはすき・なくなれ・すき

 大好きで大嫌いで。  生きたいし死にたいし。  頑張りたいし眠りたい。  私の世界は、いつだって極端で、何かを感じるたびに心が痛い。産まれた頃からずっとそうだし、死ぬまでずっとそうなんだろう。  つまるところ私は痛い。  作家としてTwitterをはじめた頃からだろうか。SNSに触れるといつも魂を吸い取られるような気がしているし、事実、吸い取られているのだと思う。  いつだってトレンドの言葉を含んだタイムラインには、共感を貰うための、着飾った言葉が散らばる。美化された素直