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好きな人ほど、会いたくない

私のすきなひと、尊敬するひと。

よしもとばななさん。
川上未映子さん。
凪良ゆうさん。
新海誠さん。
ヒカキンさん。

他にも、たくさんいる。
すきなひとほど、だいすきなひとほど、会いたくない。
会ったら、嫌われるかもしれないし。
そしたら、好きでいるのがこわくなってしまうかもしれない。
だったらそっと、ずっと、遠くから、好きなままでいたい。

でも、ほんとうにそれで、いいのだろうか。
だいすきな人に、だいすきだと伝えることで、はじまる運命もあるんではないだろうか。

明日発売の、『そして花子は過去になる』は、そんなお話でもある。

この小説が文庫化する予定はたぶんなかった。
読者さんからの人気は熱かったが(文フリなどでも「花子がいちばん好きです」という声をよくもらう)、単行本の初版部数が、今思えば「大丈夫?」と思うくらい多かったのもあり(発売前重版した『私はだんだん氷になった』より多い)、採算がとれなかったはずだった。
おそらく『みんな蛍を殺したかった』のヒットを受けて、文庫化してもらえることとなった。
蛍ちゃん、ありがとう。

『これは花子による花子の為の花物語』というタイトルを改題したのは、蛍がミステリ小説だったことを受けて、ミステリに寄せたいと編集部から言われたためだ。
こだわったタイトルではあるが、長すぎるため、手に取ってもらうためには変えたほうがよいとも思っていた。(タイトルの仕掛けは残したが、もっといいタイトルがあったのではと、今も無駄に考えている)
文庫化されないより、されたほうが絶対いいので、その方向で帯なども考えて頂いたが、本来は泣ける恋愛小説として書いたので(勿論ミステリ要素はある)、noteを読んでくれた方は、恋愛小説としても楽しんでくれたらうれしい。

五年前『花物語』は文庫書き下ろしで、さらにループものじゃなくて誰も病気になったり死なないけど泣ける恋愛小説で! という依頼だった。
それまで、純文学チックな小説かノベライズしか書いたことのなかった私には(どんな経歴なのか)、難題だった。
私は、同じ宝島社さんから出版されていて、さらに京都が舞台の『ぼくは明日、 昨日のきみとデートする』(など)を読み込んで、エンタメ恋愛小説の書き方を勉強した。
わりと淡々と書かれて、とにかく読みやすかったし、めっちゃ感動した。
そして、エンタメ恋愛小説において、少女漫画と同じように、台詞はくさすぎるくらいでちょうどいいのだと学んだ。
なので花子の文体や台詞は、だいぶその影響を受けている。
書いている最中、とてもむず痒く発狂しそうだったので、やはり私にはブラックな小説のほうが向いているのかもしれないと思うが(メンヘラを患っているせいか、闇のほうが生き生き書けてしまう)、エンタメ恋愛小説を過剰に捉えすぎていた一面もあるだろう。(今ならもっといいバランスで書けた気がする)

改稿はゲラで行ったのだが、昔の自分の文章を修正するというのは、恥ずかしさのあまりのたうち回りたくなる作業であった。
――何この洗練されてない文章。何この比喩。なにこのふわふわきらきらお花畑描写!
ダメだ。全部直したい。
当時は全力を尽くしたし、それはそれで愛しいものがあるが、当時の自分の能天気ガール具合が全て抽出されたような文章だった。
でも、構成としてはよくできていて、正直ミステリとして考えたわけではなかったが、ちゃんと大きな「謎」が物語を引っ張っていき、伏線回収のターンは自分で読んでも面白かったし、感動もした。
というわけで、文章は大幅に治したけれど(あともう一回治したかった)、物語としては『花物語』と変わっていない。
本屋さんで発見された際には、ぜひ引きこもりの花子をお家に持って帰ってあげて、私が生まれてはじめて書いたエンタメ恋愛小説を、温かい目で楽しんで頂けたらと思います。

とても可愛い表紙は中村佑介さん。物語の要素がすべて詰まっています!


――そしていまは、夏頃刊行予定の新作を書いている。
花子のゲラ作業を経たこともあり、現在の自分の文章がかなり洗練されてきているのがわかる。
物語も、ミステリ要素に加え、ヒューマンドラマとしても、これまでにない展開のストーリーになっているので、是非期待してくれたらうれしい。
今後、発売されていくであろう(私がちゃんと書き上げれば)、各社に提出しているプロットは、どれも自信作なので、楽しみにしてくれている読者さんのためにも、集大成を更新し続けるためにも、頑張ります。


それでは明日〆切の、新作の執筆に戻るとしましょう。(死)

学生時代のトラウマで引きこもっている花子。バイト先のコンビニと家を往復する虚しい日々を送る蓮。花を育てるだけの地味なスマホゲームで出会った二人は次第に惹かれ合い、現実でもデートを重ねるようになるのだが……花子にはその記憶がない。なぜなら家から出ていないのだから。だが蓮からは毎回、デートをしたことを裏付けるメッセージが送られてくる。――デートに行っている「私」は一体誰なのか?

京都と4.7インチの世界を舞台に描かれる切なく温かい青春ミステリー。タイトルの意味がわかったとき、きっとあなたの運命の一冊になる。

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