木爾チレン

小説家。 ✏︎新潮社R18文学賞を受賞し「静電気と、未夜子の無意識。」でデビュー。 最新作は「神に愛されていた」 Web:http://1000ve.her.jp/

木爾チレン

小説家。 ✏︎新潮社R18文学賞を受賞し「静電気と、未夜子の無意識。」でデビュー。 最新作は「神に愛されていた」 Web:http://1000ve.her.jp/

マガジン

  • 作品について

    小説家・木爾チレンの、新刊情報や掲載情報ほか、お仕事のお知らせです。

最近の記事

二人一組になってください

「二人一組になってください」という号令が、恐ろしいと思う側の人間だった。 新刊のタイトルでもある。 今作、デスゲーム小説を生涯に一度くらいは書きたいと思い立ったときに、考えずともこのタイトルが降ってきたのは、ゲームのシステムを思いついたのは、学生時代の私が「二人一組になってください」という号令を、デスゲームのように感じていたからなのかもしれない。 と、新刊に対する思いはたくさんあるのだが、既にインタビューで諸々答えているので、ぜひこちらの記事に目を通して頂けたらと思う。 そ

    • 小説を書き続けてくれて、ありがとう

      誕生日と新刊発売のときに更新される私のnoteです。 37歳になりました。 37歳ってもう、そこまで死が迫ってるやん。と、生きること自体に焦りを覚えています。 夫が九月で26歳なので、三か月ほど、一回りも年上になってしまうのも憂鬱ですが、そんな歳の差があっても、女の子扱いしてくれることに毎日感謝しているし、私がこうして明るく生きれているのは、夫に出会えたからだなと思う。 でも全ては、小説と向き合ってきたからこその今で、誕生日だからこそ今日は、過去の自分を褒めてあげたい。 私は

      • 新刊と新婚の話――あるいは才能と嫉妬の話

        先週、最新作となる『神に愛されていた』が発売になった。 今作は珍しく「あとがき」があるので、この小説を書いたときの思いは、ぜひ本編とともにそちらで読んで頂きたいのですが、本を刊行したときくらいしかnoteを更新しなくなってしまったので、近況をあわせて、今の気持ちを書き連ねていこうと思う。 まず、新刊『神に愛されていた』について。 この作品のテーマを一言で表すのなら、「才能と嫉妬」そして「究極の愛」になるだろう。 最初に言っておくと、実はこの小説は、天才音楽家モーツァルトとサ

        • 好きな人ほど、会いたくない

          私のすきなひと、尊敬するひと。 よしもとばななさん。 川上未映子さん。 凪良ゆうさん。 新海誠さん。 ヒカキンさん。 他にも、たくさんいる。 すきなひとほど、だいすきなひとほど、会いたくない。 会ったら、嫌われるかもしれないし。 そしたら、好きでいるのがこわくなってしまうかもしれない。 だったらそっと、ずっと、遠くから、好きなままでいたい。 でも、ほんとうにそれで、いいのだろうか。 だいすきな人に、だいすきだと伝えることで、はじまる運命もあるんではないだろうか。 明日

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        • 作品について
          4本

        記事

          上京と状況について

            今年は正直、生きているのか、死んでいるのかわからなかった。 九月に「みんな蛍を殺したかった」に続く、黒歴史ミステリシリーズとして書いた「私はだんだん氷になった」を刊行したが、よく一冊書き上げたものだと思う。 帯に「これは私の黒歴史であり、これからの黒歴史になるだろう」という文言を書いたが、その謳い文句通り、学生時代の黒歴史と、この一年の私の異常な精神状態が反映された、まさに絶望のジェットコースターのような一冊となった。 この小説は、東京で一人暮らしをしながら書いた。 東

          上京と状況について

          重版を持たない作家と、蛍の巡礼の旅

          「みんな蛍を殺したかった」を書き始めるまえ、私はほとんど死ぬことだけを考えて生きていた。  ――というのは、村上春樹著の「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」の書き出しを捩った過剰な表現ではあるが、憂鬱の極み乙女だったことは間違いない。  私の小説など誰も待っていない。  私の小説なんていらない。  私なんていらない。  そんな気持ちで生きていたのだ。  でも蛍を書きあげた日、私は不思議なくらい、生きているという感覚に満ち溢れていた。  この世に、蛍より素晴らしい小説は

          重版を持たない作家と、蛍の巡礼の旅

          みんな誰かを殺したいほど羨ましい

          この小説を書くために、私は黒歴史を過ごしたのかもしれない。 暗闇から見つめる光はあまりにも眩しくて、羨ましくて、憎くて、そして、美しかった。 ミステリ小説『みんな蛍を殺したかった』が発売されて、一週間が過ぎました。 これは、多岐に渡るジャンルで少女を描いてきたからこその、私の集大成だと思う。 でもこの作品は「イヤミス(嫌な気持ちになるミステリ小説)を書いてみませんか」というオーダーがあったので、決して性格のいい作品ではない。 前作の「これは花子による花子の為の花物語」を読ん

          みんな誰かを殺したいほど羨ましい

          私の人生なんてぜんぶ黒歴史だけど、誕生日おめでとう

          34歳になりました。 今の私にとっては信じられない数字だけど、歳を重ねたらあの頃はまだまだ若かったなあとか思うのかな。 ちょうど昨日、一つの作品が校了して、執筆中は苦しいときも多いのに、書き終わるといつも、次の物語を考えはじめていて、やっぱり小説の世界が好きなのだなと思う。 きっと小説が、ひとりぼっちだった私を救ってくれたから。 「みんな蛍を殺したかった」の登場人物の一人にも投影したのだけど、高校時代、私は言わずもがなぼっちであり、嵐を応援することと、ネットでBL小説や夢小説

          私の人生なんてぜんぶ黒歴史だけど、誕生日おめでとう

          鬼滅の刃が流行る世界は優しい

          映画「鬼滅の刃」を見た。 執筆中、LISAさんの「炎」をリピートしていて、最高すぎる歌を劇場で聞きたいと思ったのと、どうせ生きているなら、流行りにはできるかぎり触れたい。 流行るものには流行る理由があり、流行っているものには、絶対に飛びぬけて素晴らしい部分がある。 だからTwitterでバスったレシピは作るし、流行っている映画は絶対に見に行く。 予習でアニメを3話まで見ただけの、ほぼ初見の状態で、映画館に行った。 正直、あまりはまれなかったらどうしようと不安に思っていたけど、

          鬼滅の刃が流行る世界は優しい

          小説と私の無意識

           小説家になって十年が経った。私は、小説を書いて暮らす日々が好きだ。  少女の頃からずっと小説を書き続けてきて、小説はもはや私の皮膚であり臓器だ。  小説を書かかなくなったら、私は何になるのかさえわからない。  けれど、物語を吐き出し続けた私の脳みそはもう、空っぽなのかもしれないなと時々思う。  今年は、春から夏の終わりにかけて、絶望するくらい、何も書けなかった。ふるえる手でSNSをひらいては、きらきらしているだれかが眩しく、自分なんかいらないと劣等感でうめつくされた。私の脳

          小説と私の無意識

          受賞|この梅酒が漬かる頃には

          お知らせです。集英社コバルト編集部さん主催の『青木祐子の がんばるorがんばらない女性小説賞』大賞を受賞しました。 短編「この梅酒が漬かる頃には」 ↑のURLから無料で読めます。 あらすじを、ざっくり一言でまとめると、 自身の過ちによって婚約破棄された女性が、祖母の住む島で、梅酒作りを通して自分を見つめなおす。 という、ストーリーがあるようでないようなお話なのですが、 舞台になっている島のにおいだったり、祖母と過ごす時間だったり、初恋の人との再会だったり、物語にながれる

          受賞|この梅酒が漬かる頃には

          LINE恐怖症と死にたい世界

          Lineがこわい。 とてつもなく、こわい。 既読つけるのもこわいし、なんなら内容を見るのすらこわい。 返事を書くのは、心と体が元気なときしか無理だ。 きっとそれは私が、完璧主義だからなのもあるだろう。(ぜんぜん完璧じゃないのにね) 軽々しく「OK」だけとか、スタンプだけとか送れない。 一行考えるのも、すごく時間がかかる。 だから、億劫になってしまう。 ちゃんとした文章を打たないと、と、感じてしまう。 あと、lineの終わらせかたもわからない。 とにかく幻滅されたくないとか、失

          LINE恐怖症と死にたい世界

          100人中、99人に嫌われる私

          高校生のとき、同学年が300人、教室には40人のクラスメイトがいた。 クラスメイトの名前はほとんど覚えていない。 顔がぼんやりと思い出せるくらい。 別に上から目線の発言とかではない。 私は所謂カースト下位だったし、化粧も知らない地味な学生で、嵐に人生を捧げているオタクだった。 だから向こうも私のことなんて、空気のような、或いはそれ以下の存在だったと思う。 というわけで必然的に、私には友達が少なかった。 でも、(主に)集団行動しているグループの女子とは仲良くなりたいとは、思

          100人中、99人に嫌われる私

          彼女が拗ねた徴

           私の一日は、猫の飲み水を変えることから始まる。  そのとき、飲み水に猫のおもちゃが浸かっているときがある。  カレン(一歳になったばかりの雌猫)の仕業だ。  彼女は、遊んでほしい時に遊んでもらえなかったとき、そのような徴を残す。  最初は、床もおもちゃも水びたしになるし、飲み水にもゴミが入るしで、困った癖だなあと思っていたが、近頃はその癖がどうにも愛しくてたまらない。 「ふん、遊んでくれなかったからだよ」  だってそれは彼女が拗ねた徴。 「ごめんね」  眠っていて気が付かな

          彼女が拗ねた徴

          好きと充電の関係性

           近頃、何をしていても、何かをしているという感覚がない。なにもできない時も多い。  とにかく眠い。眠くて、漠然と、こわい。  もしかしたら、充電中なのかな。そんなありきたりなことを思うけど、充電しても充電しても、溜まる気配もない。  嗚呼、そうか。いっそバッテリーを交換する時が来ているのかもしれない。なんて。  歳を重ねるにつれて、楽しくなるという人もいるが、果たしてそうなのだろうか。私は年を重ねるにつれて、生きやすくはなったが、生きているという実感がわかなくなっている。い

          好きと充電の関係性

          猫と人間についての散文

          人間は嘘を吐く。 人間は自分をよく見せようとする。 人間は誰かを傷つける。 猫は嘘を吐かない。 猫はいつも自然体で。 猫は誰も傷つけない。 「あなたを傷つけないから、猫が好きなの?」 一度、そう言われたことがある。 そうなのかもしれない。 「私は、私を傷つけない猫が好きなのかもしれない」 だってそれって――、すごいことでしょう。 誰も傷つけないなんて、神様にだってできない。 猫にしかできない。 「あなただけは私を傷つけないでくれて、ありがとう」 だから私は、誰かに傷つけられる

          猫と人間についての散文