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<連載小説>昨日のような、明日を生きよう

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連載小説のまとめです。 1話あたり2、3分で読めるようになってます。 ほのぼの家族の代わり映えしない日常の、ほんの少しずつの変化を描いていきます。
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#創作

<連載小説>昨日のような、明日を生きよう<12>

綾が得意なこと「チチ、チチ、これやろ」
 綾が何やら持ってきた。板みたいなものだった。
「何やるの?」
 昨日仕事が珍しく遅かったのでちょっと横になっていた。起き上がって綾の手元を見ると、やはり、パズルだった。
「これ、やりたい」
「どーぞ」
 一人で遊べるものだけど、綾は僕と一緒にやりたがる。出来上がった時に褒めてもらうためだ。
 今も僕の目の前でパズルを睨みつけるようにして取り組んでいる。いく

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<連載小説>昨日のような、明日を生きよう<11>

<連載小説>昨日のような、明日を生きよう<11>

僕がいないときの日常 普段、僕はプログラマーとして働いている。
 とはいっても世間で思われているほど帰りが遅くなることもなく、定時に近い時間には帰れているので非常にありがたい。
 では、僕がいない日中、宮子と綾が何をしているかという話をしよう。

 まだ幼稚園に入っていない綾は、普段は自宅で過ごしている。
「ハハ、お腹すいた」
「えー? 朝ごはん食べたばっかりだよ」
 綾の言葉に宮子が叫ぶ。
「だ

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<連載小説>昨日のような、明日を生きよう<10>

<連載小説>昨日のような、明日を生きよう<10>

チチと呼ばれて「チチ、だっこ」
「また? ちょっとは歩きなよ」
 そういいながらも抱っこする僕は甘いんだろうか。ニコニコと笑顔を見せる綾は僕の首に手を回しながらほっぺたをつねったりしている。
「ちょ、痛いよ」
「チチのほっぺ、いたーい」
 そう言って笑った。午後も遅くなり、髭が伸びてきたらしい。昼過ぎから綾の退屈地団駄が始まり、見かねて公園に遊びに来たのだった。
 まだ二歳の綾は、滑り台を上るのを

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<連載小説>昨日のような、明日を生きよう<9>

<連載小説>昨日のような、明日を生きよう<9>

そして…… 今日、とうとう綾がつかまり立ちした。
 宮子とハイハイ競争をしていたおかげか、足腰も丈夫、体も良く動く。運動たっぷりなので離乳食もよく食べる。
 本当に産まれたのが昨日のような気がするのだけど、目の前の彼女はすでに立派な子供だ。
 一年早かったなぁ。
「綾ちゃん、お誕生日おめでとう!」
 まだロウソク吹き消すのはできないので、僕と宮子で代わりに。
 いつもより豪華な食事内容に、心なしか

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