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エッセイ

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#自然

森の中。

私は動物だった。

驚くほど思考をしていなかった。

ただ目の前にある自然を、木を、命を感じるためだけに

目を使い、緑を映した。

耳を使い、風の音を聞いた。

鼻を使い、草のにおいを嗅いだ。

手で触って、その温度と感触を確かめた。

頭が働いていないぶん、

体が私をいろんなところに連れて行った。

見たい。聞きたい。嗅ぎたい。触りたい。

ただその欲望に心を委ねたら、体

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人間やめよ。

最近、土に還りたい欲がどんどん増している。

緑と水がある場所で、ひっそりと暮らして

体ぜんぶ使って心を震わせて生きたい。

未来のことも、過去のことも考えないで

ただ、いまそこに生きている木のように。

妄想爆発させると、

木になりたい。

地球にとってのわたしが

わたしにとっての石ころのように

大きな自然の中でちっぽけなわたしを

ちっぽけな人間を愛でていきたい。

人間、やめようか

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ゴールのないさんぽが好き

ゴールのないさんぽが好き

どこにたどり着くかわからない。

どこへ向かっているのか、どこに行きたいのかもわからない。

ただ、なんとなく体が動くほうに歩いてみる。

それが私にとってのさんぽ。

道路の端にはえてるお花の匂いをかいで、

ちょろちょろ流れる川の水をたどって、

風にゆれる髪の音を聞く。

壮大な景色を眺めながら、ぼやぼやと、とりとめのない思いにふける。

お腹が空いたな、そろそろ帰ろうか。

そう思ったころ

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どこか。

どこか。

「その道はどこに行けるの?」

小道を見つけた。

ふらっとその道へ入ったとき、通りすがりのおばちゃんは言った。

「知らないです」

そう答えたわたしに、おばちゃんは

ふふふっと笑って行っちゃった。

どこへたどり着けるか分からない。

そんな道を歩くのって楽しい。

その小道の先には、竹林があった。

初めて、たけのこが地面に埋まってるのを見た。

たけのこから、たけのせいねんになって、

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