多様性、平和、グローバリゼーション、コスモポリタン
私たちは同じ種族であっても、とても複雑な種族でもあるため、幸福になる方法はそれぞれ違う。
その違いを大切にして、それぞれがそれぞれに干渉せずに社会に参加する。これは多様性の理想的な姿だろう。
しかし現実的には難しそうだ。民族、宗教、文化、思想、土地、財産、名誉、これらの違いを違いとして純粋に受け取って干渉し合わないこと、それができないからウクライナ戦争やパレスチナ紛争は起きたのだと思う。
多様性は個性を尊重し、個人の幸福を追求する一方で不安定である。
アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、ロシア、中国、インド、日本…………さまざまな国が存在するからこそ、争いは起こせる。
しかし、もしアメリカが世界最強のぶっっっっっっちぎりの覇権国で他の国々を支配していれば戦争も紛争も起きない。
では多様性を犠牲に統一することが最善かと言えば、もちろんそんなことはない。犯罪発生率が0%でもその裏で秘密警察が暗躍していれば怖くてたまらない。
幸福のためには多様性を認めるべきで、平和のためには統一を進めるべきだ。幸福と平和は不可分ではなく、戦時中の幸福と血まみれの平和は成り立ってしまう。
旧ユーゴスラビアの大統領チトーは統一によって民族の坩堝たるバルカン半島を治めたが、その裏には民族運動への弾圧があった。
今やその平和は崩れてユーゴスラビアはバラバラになったが、それぞれの民族がそれぞれの利益を追求できるようになっている。
また、政治政策としてもこの二択に迫られている。
性別は男と女の2種類に統一するか、それ以外の性別=多様性を認めるか、というふうに。
そして世界のスタンダードたる民主主義にとっても実際的な問題である。
たとえば、A国はα民族が9割、β民族が1割で構成されているとして、A国ではβ民族の意見が通りにくい。しかし、β民族が9割、α民族が1割の国を作ったとしたら、当然その国ではα民族の意見が通りにくくなる。が、A国に行けばそれは解決され、最終的にはそれぞれの民族がそれぞれの国で容易に意見を通せるようになる。
これは平和だが、民族の多様性を切り捨てている。それに、実際のところ人間には民族性以外にもいくらでも属性があるし、それぞれの国は持ててもそれぞれの世界は持てないから世界規模では多数派や強者の意見が通りやすい。
多様性の典型であるLGBTQをレインボーで表すのはおもしろい。
虹色はそれぞれの色が違うからこそ虹色たりえる。もしぜんぶの色を混ぜたら、真っ黒になる。
しかし黒しかないとなれば絵を描くときに絵の具の使い分けで悩むことはないだろう。
私が解決策として提示することは、多様性と平和を不可分にするということだ。
多様性がなければ平和を作れないし、平和がなければ多様性を守れないということ。
極端な例だが、A国がB国からすべての食品を輸入するとしたら、A国はB国が存在することを認めなければならない。そしてそのような状況でB国が戦争状態になれば輸入は難しく、A国は平和維持に尽力せざるおえない。
つまりグローバリゼーションの促進、相互依存性の上昇である。しかし前述のウクライナ戦争の影響が全世界に広がったことを鑑みると、そのような状況でどこかの国が変なことをしたときに他の国々がとてつもない迷惑を被るということがわかる。
それでも、市民ということはそういうことだ。
なぜ他国民は見捨てて自国民を助けようとするかというと、人間は1人では生きられないから、他の国民もいないと国が成り立たなくて生きていけないからだ。
日本人なら日本人と日本国内で輸入と輸出を行っているわけだし、日本国内の大企業が潰れたら広範囲に影響が及ぶ。
国は一つの世界であり、国民はそのなかで依存しあっている。
その依存の範囲を世界に広めるのは怖いだろうが、軍事技術の発達で他国への干渉は容易になっている。今こそ国内の市民ではなく、世界市民として責任を負い権力を行使するべきではないのか。
そして、そのように国家同士の、あるいは国民間の共依存を強めるためには英語(共通語)教育の推進、国境の自由化、共通通貨の作成、各国の軍隊の削減、海洋資源の共有化、国際研究機関への各国からの投資、外国での居住の自由化などが求められる。
また、そのように世界全体の動きが活発化して個人の力が相対的に弱まる状況で、数十億の人類の中で世界市民として働きかけるためには直接民主主義の強化が必要になる。
多様性を守るためには議員を増やしてより多様な政治的選択を行えるようにすることも必要になる。もちろん議員の増加は会議の鈍化を招くかもしれないが、より少数の迅速な会議は独裁的で戦時にしか有効になりえない。
そして、共依存の進んだ世界で戦争はまず起きない。
追記
我々は地表を分割することはできても、いくつもの惑星を分け合うことはできない。ひとつの地球という統一の下でそれぞれの多様性を共存させなければならない。
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