ＪＷ６３１　話が進まぬ件

【景行征西編】エピソード2　話が進まぬ件

第十二代天皇、景行けいこう天皇てんのうの御世みよ。

西暦82年、皇紀こうき742年（景行天皇12）7月。

ここは、纏向日代宮まきむくのひしろ・のみや。

地図（纏向日代宮）

景行天皇こと、大足彦忍代別尊おおたらしひこおしろわけ・のみこと（以下、シロ）は、大連おおむらじや大夫たいふなど、臣下しんかが集つどう中、筑紫ちくし行幸ぎょうこうに加わる人員じんいんを発表した。　

人物一覧表（大連、大夫たち）

シロ「此度こたびの御幸みゆきに加わる者は、まだまだ居おるぞ。我わが息子むすこ、小碓皇子おうす・のみここと『リトル』じゃ。」　

ちね「は？　何なに、言ゆうてますのや！　まだ赤ん坊でっせ？！」　

系図（リトル）

シロ「されど、伝承を紹介するには『リトル』が居おらねば、話が進まぬ件くだりが有るのじゃ。」　

ちね「そ・・・そないなこと言われましても、大后おおきさきの播磨稲日大郎姫はりまのいなひのおおいらつめこと『ハリン』様が、何なんと仰おっしゃるか・・・。」　

シロ「それについては、説とき聞きかすほか有るまい。」　

カーケ「ところで、赤ん坊の傅役もりやくは、誰になるのかね？」　

シロ「それについては『ハリン』の父、若日子建吉備津日子わかひこたけ・きびつひここと『タケ』先生と、『ハリン』の兄である、武彦たけひここと『たっちゃん』に御願いするつもりにござる。」

系図（ハリン、タケ、たっちゃん）

オーカ「これで、全てにあらしゃいますか？」　

シロ「いや、あとは、犬の『真白ましろ』と猿の『ルフィ』も連つれて参まいる。」　

くにお「な・・・何なんのために、獣けものを連れて行ゆかれるのです？」　

シロ「まあ、何なんと言うか・・・慰なぐさめじゃ。」　

ちね「ほな、これで全てですな？」　

シロ「いや、あと、長き旅となるゆえ、妃きさきを連れていこうと考えておる。」　

カーケ「誰を連れていくのかね？　大后おおきさきは、身身みみ（出産のこと）から間まもないんだぜ？」　

シロ「左様さよう。それゆえ、八坂入媛やさかいりひめこと『やぁちゃん』を連れて行ゆこうと思うておりまする。」　

系図（やぁちゃん）

くにお「されど、戦いくさとなるやもしれぬ御幸みゆきに、妃きさきを連れて行ゆくべきとは、思えませぬが・・・。」　

シロ「戦いくさとなるやもしれぬからこそ、妃きさきが要いり様ようなのじゃ。ムラムラしては、正しき考えが下くだせませぬからな・・・。」　

くにお「な・・・なるほど・・・。」　

シロ「では、出立しゅったつは、8月15日とする。それまで、各々おのおの、支度したくに取り掛かるように！」　

こうして、行幸参加者が決定したのであったが・・・。　

ハリン「なにゆえ『リトル』を連れて行ゆかねばならぬのです！　『日本書紀にほんしょき』に、そのような文言もんごんは有りませぬぞ！」　

シロ「汝なれの申もうす通とおり『日本書紀にほんしょき』には書かれておらぬが、伝承に登場してしまうのじゃ。致いたし方かたなかろう。」　

ハリン「そんな・・・(´；ω；`)ｳｯ…。産まれて、すぐに離はなれ離ばなれになるだなんて・・・。」　

咽むせび泣なく「ハリン」の傍かたわらで、「ハリン」の妹で、「シロ」の妃でもある、伊那毘若郎女いなびのわかいらつめ（以下、イナビー）が吼ほえる。　

系図（イナビー）

イナビー「それに『やぁちゃん』を連れていくとか？　どういうことです！？」　

シロ「どういうこと？　何なにを申もうしておるのじゃ？」　

イナビー「姉上に代かわって、付き従うとなれば、私を措おいて、他ほかにおりますでしょうか？！」　

シロ「い・・・いや、汝なれは『ハリン』の傍そばにいて、支ささえてやって欲ほしいのじゃ。」　

イナビー「支ささえる？」　

シロ「此度こたびの御幸みゆきでは『タケ』先生も『たっちゃん』も出陣することと相成あいなった。汝なれまで、筑紫ちくしに行ってしもうたら、『ハリン』の傍そばにおるのは、大碓皇子おおうす・のみここと『メジャー』だけになってしまう。それでは、心細こころぼそかろう？」　

系図（メジャー）

イナビー「そ・・・そう言われると・・・。」　

ハリン「『イナビー』・・・。ごめんなさいね。私の所為せいで・・・(´；ω；`)ｳｯ…。」　

イナビー「姉上は、悪くありませぬ。悪いのは、大王おおきみです！」　

シロ「なっ！　なにゆえ、そうなるのじゃ！」　

イナビー「姉上の体が、良くなってから、出立しゅったつすれば、よろしいではありませぬか！　それとも、急ぐ理由わけが？」　

シロ「うむ。急がねばならぬ。熊襲くまそは、輩ともがらを高千穂たかちほに送おくり込こんでいるようなのじゃ。」　

地図（南九州の情勢）

イナビー「えっ！　もう戦いくさになっているのですか？！」　

シロ「どうも、そのようじゃ。」　

イナビー「そ・・・そういうことなら、仕方しかたありませんね。口惜くちおしいですが『やぁちゃん』に譲ゆずりましょう。うん。口惜くちおしいですが、姉上を支ささえて参まいりまする。」　

ハリン「イナビー？」　

するとそこに、告つげの首おびと（以下、スズム）が駆け込んできた。　

スズム「大王おおきみ！　御兄弟ごきょうだい様方さまがたが、参まいられもうした。」　

シロ「お・・・おう。参まいられたか・・・。」　

ハリン「大王おおきみ？　浮うかぬ顔かおをなされて、如何いかがなされました？」　

シロ「うん？　だ・・・大事だいじない。で・・・では、参まいるとするか・・・。」　

次回につづく