JW441 生まれてない娘
【崇神経綸編】エピソード16 生まれてない娘
第十代天皇、崇神天皇(すじんてんのう)の御世。
紀元前38年、皇紀623年(崇神天皇60)秋。
ここは、磯城瑞籬宮(しきのみずかき・のみや)。
崇神天皇こと、御間城入彦五十瓊殖尊(みまきいりひこいにえ・のみこと)(以下、ミマキ)の元に、二人の女性が参内(さんだい)していた。
その二人とは、豊鍬入姫(とよすきいりひめ)(以下、きぃ)と、倭姫(やまとひめ)である。
きぃ「大王(おおきみ)・・・。本日は、大事なことを、お伝えせねばなりませぬ。」
ミマキ「だ・・・大事の前に、一つ、聞いておきたいことがある。」
きぃ「なんでしょうか?」
ミマキ「汝(なれ)の傍におる、可愛らしいオミナ(女の子)は、誰じゃ?」
きぃ「倭姫にございます。私の姪(めい)で、大王の孫にございます。」
ミマキ「待て、待て。わしは、そのような孫を持った覚えは無いぞ? どこかの神に誑(たぶら)かされておるのではないか? 一体、誰の子と申すのじゃ?」
きぃ「日嗣皇子(ひつぎのみこ)の活目入彦五十狭茅尊(いくめいりひこいさち・のみこと)こと『イク』ちゃんの娘にございます。倭姫ということで『ワッコ』と呼んでくださりませ。」
ワッコ「お初にお目にかかりまする。私が『ワッコ』にござりまする。」
ミマキ「い・・・いや、待て、待て。じゃから、聞いたことが無いと申しておるであろう?」
するとそこに「イク」がやって来た。
その傍(かたわ)らには「イク」の妃もいる。
イク「大王! 僕の娘なんだって!? ってことは、僕の妃、狭穂姫(さほひめ)こと『さっちん』との間に生まれたってことだよね?」
さっちん「読者のみなさま、覚えておいででしょうか? エピソード233以来の登場にございます。此度(こたび)、日嗣皇子の妃となりました。私の父は、彦坐王(ひこいます・のきみ)こと『イマス』にございます。ですので、皇子と私は、従姉弟婚(いとここん)になりまする。」
ミマキ「そのようなことは、あとで良い。それより『さっちん』が、皇女(ひめみこ)を産んだなどと、わしは聞いておらぬぞ。一体、どうなっておるのじゃ!?」
イク「僕も、その辺を詳(くわ)しく知りたいんだよね。義姉上? どういうことなの?」
きぃ「実は・・・。『ワッコ』は、本来なら、まだ生まれておりませぬ。」
ミマキ・イク・さっちん「えっ?」×3
ワッコ「そうなのです。されど『倭姫命世記(やまとひめ・のみこと・せいき)』では、この年から、私が『きぃ』伯母上に代わって、天照大神(あまてらすおおみかみ)の御杖代(みつえしろ)になったと書かれておるのです。ですから、ここで登場しないわけにはいかぬのです。」
ミマキ・イク・さっちん「ええぇぇ!!」×3
きぃ「そういうわけで、大変心苦しいのですが、私は、今回で引退となりまする。」
ミマキ「そ・・・そんな・・・。わしより先に、引退すると申すか?」
きぃ「エピソード251にて、渟名城入姫(ぬなきいりひめ)こと『ナッキー』と、お別れして、五十有余年・・・。ようやく『ナッキー』に会うことが出来ますので・・・。」
ミマキ「そ・・・そうか・・・。そうなるのか・・・(´;ω;`)ウッ…。」
涙に暮(く)れる「ミマキ」。
世代交代は、刻一刻と進むのであった。
つづく
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?