JW198 各地に伝わる陵
【孝元天皇編】エピソード1 各地に伝わる陵
紀元前215年、皇紀446年(孝霊天皇76)2月8日、孝霊天皇(こうれいてんのう)が崩御(ほうぎょ)した。
そして、ヤマトの一行は帰還を果たしたのであった。
ここは、黒田廬戸宮(くろだの・いおど・のみや))。
日嗣皇子(ひつぎのみこ)の大日本根子彦国牽尊(おおやまとねこひこくにくる・のみこと)(以下、ニクル)は、一行の報告を受けていた。
ニクル「左様か・・・。思い出深き地で、逝きたいと・・・。」
ニクルに対面する形で、彦狭島(ひこさしま)(以下、歯黒(はぐろ))たちが報告をおこなっている。
歯黒「日嗣皇子には、長きの間、御心配をお掛け致しもうした。面目次第もござりませぬ。」
ニクル「歯黒兄上・・・。そのようなこと、気になさらずとも良い。それよりも、もそっと聞かせてくだされ。父がこと・・・会うこと叶わなんだ、妹(福姫)がこと・・・。」
芹彦「ニ・・・ニクル・・・。想えば、汝(いまし)が、一番つらいのやもなぁ・・・。おお! 父上ぇ! 大后(おおきさき)ぃ! ふぅちゃぁぁん! (´;ω;`)!」
ニクル「と・・・ところで、先代の亡骸(なきがら)は何処(いずこ)に?」
タケ「先代は、葬(ほうむ)って参りもうした。」
ニクル「なっ!? ヤマトに陵(みささぎ)を築かず、彼(か)の地に葬られたと?!」
ぐっさん「皇子の言いたいことも分かるで。『記紀(きき)』に書かれた陵(みささぎ)のことは、どうすんねん・・・ってことやろ?」
ニクル「左様じゃ。辻褄(つじつま)が合わぬこととなるではないか・・・。」
大目「作者が、何とかしてくれるはずなんじゃほい。」
ニクル「そ・・・そのようなことで、まことに良いのか?」
みなお「せやけど、伝承では、伯伎(ほうき:現在の鳥取県西部)に葬られたことになってるんですわ。先代も、それを望んではるんやないですかね?」
ニクル「して、どこに葬られたと申すのじゃ?」
ユミ「お隠れになられた地に埋葬致しました。」
大目「二千年後は、樂樂福神社(ささふくじんじゃ)の境内になっているんじゃほい。」
ぐっさん「鳥取県伯耆町(ほうきちょう)の宮原(みやばら)っちゅうことやな。」
ニクル「たしか・・・先代と鶯王(うぐいすおう)の兄上が祀(まつ)られておったな?」
ユミ「その通りです。きっと、鶯王様も一緒に葬られてるんじゃないですかね。っていうか、そう思いたい。」
ニクル「父上と兄上の古墳(こふん)と見ることもできるわけか・・・。」
歯黒「ただ・・・そこ以外にも、葬られたとされる地が有るようで・・・。」
ニクル「なんと・・・諸説有りと申されまするか?」
芹彦「その通りじゃ! それがしの吉備(きび)に、父上を葬った陵が有るのじゃ!」
タケ「いつから、汝(なれ)のモノになったのじゃ!」
ニクル「して、詳しく、お聞かせ願えませぬか?」
芹彦「語って進ぜようぞ! 広島県の庄原市(しょうばらし)に有るのじゃ!」
みなお「詳しい地名を申しますと、高野町(たかのちょう)は高暮(こうぼ)という地に有るみたいですなぁ。」
芹彦「有るみたいではない! 有るのじゃ!」
タケ「その名も、船山神社(ふなやまじんじゃ)と申す。」
ニクル「陵そのものが、神社になっておると?」
ユミ「神社の裏山が、古墳っぽいのよね。」
ニクル「確証はないのか?」
ユミ「作者が言ってたんだけど、詳しい史料が見つからなかったみたい・・・。」
ニクル「左様か・・・。されど、なにゆえ、吉備に葬られたのであろうか・・・。」
芹彦「父上が御存命なら、こう仰られていたはず! 『これぞロマンであるな』!」
ニクル「こ・・・これもまた、ロマンにござりまするか?」
歯黒「陵とされる地は、そこだけではないぞ。」
ニクル「なっ!? まだ有ると申されまするか!?」
ぐっさん「せやで。広島県府中市(ふちゅうし)にも、先代の陵が有るんですわ。」
ニクル「こ・・・こちらも吉備(きび)か・・・。」
ぐっさん「せやで。そこの栗柄町(くりがらちょう)っちゅうところに、孝霊塚(こうれいづか)っちゅうモンが有るんですわ。」
大目「南宮神社(なんぐうじんじゃ)の境内に有るんじゃほい!」
歯黒「ちなみに、南宮神社の御祭神は、先代であるぞ。」
ニクル「まことに不思議な話じゃ・・・。伯伎で、お隠れあそばされた先代が、吉備に・・・。」
みなお「帰る途中で葬ったんかもしれまへんなぁ。」
芹彦「なにゆえじゃ?!」
みなお「そ・・・それは、ロマン?」
芹彦「結局、分からんのではないか!」
ニクル「どちらにせよ、ヤマトにも陵(みささぎ)を築くぞ。遠き伯伎や吉備では、祭祀儀礼(さいしぎれい)に支障をきたす。」
歯黒「そうじゃな。」
ぐっさん「せやけど、各地に陵が有るっちゅうことは、それだけ、先代が、多くの人に慕われてたっちゅうことなんやろな。」
ニクル「我(われ)も、そう思いたい。」
大目「ちなみに、ヤマトの陵については、後日、紹介するんじゃほい!」
ニクル「なにゆえじゃ?」
大目「これには順番が有るんじゃほい。」
ニクル「そういうことならば、致し方ないのう。」
タケ「では、存分に、伯伎のことを語りましょうぞ。」
ニクル「おお、聞かせてくだされ。父や母、鶯王の兄上、そして『ふぅ』がこと・・・。」
こうして、報告会は遅くまで続いたのであった。
つづく
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