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JW569 祭祀官と大神主

【伊勢遷宮編】エピソード28 祭祀官と大神主


第十一代天皇、垂仁すいにん天皇てんのう御世みよ

紀元前4年、皇紀こうき657年(垂仁天皇26)。

ここは、纏向珠城宮まきむくのたまき・のみや

地図(纏向珠城宮)

垂仁天皇こと、活目入彦五十狭茅尊いくめいりひこいさち・のみこと(以下、イク)の面前めんぜんひかえるのは、大夫たいふ中臣なかとみ・の大鹿島・おおかしま(以下、オーカ)と、竹田たけだ国造・のくにのみやつこ大若子おおわくご(以下、ワクワク)である。

まず最初に、大連おおむらじ物部もののべ・の大新河・おおにいかわ(以下、ニック)が口を開いた。 

系図(中臣氏:オーカ)
系図(物部氏:ニック)

ニック「此度こたびの使い、どういうことやねん? もしや、倭姫やまとひめこと『ワッコ』様と、わての弟、十千根とおちねこと『ちね』の身に、なんか有ったんか?」 

オーカ「御安心くださいませ。そのようなこと、断じてありません。」 

イク「じゃあ、なにを伝えに来たの?」 

ワクワク「ワッコ様が、夢を見たんだよ。それをしらせに来たよ!」 

イク「夢? どういうこと?」 

オーカ「実は・・・天照大神あまてらすおおみかみが夢に現れ、此度こたび、求めていたみやは、間違いなく、この地にあらしゃいますと・・・。」 

ニック「おすみきをもろうたっちゅうことやな?」 

オーカ「そうですぅ。」 

イク「なんだ・・・。そういうことか・・・。よろしくないことが起きたのかと思っちゃったよ。」 

ワクワク「ビックリしちゃうよね?」 

するとそこに「イク」の息子、五十瓊敷入彦いにしきいりひこ(以下、ニッシー)と、大足彦忍代別尊おおたらしひこおしろわけ・のみこと(以下、シロ)が乱入してきた。

系図(二人の皇子)

なぜか二人とも、つるぎたずさえている。 

ニッシー「そこの人! ワッコにつかえる、ワクワクさんと見た! 覚悟かくごぉぉ!」 

シロ「私怨しえんはござらねど、国がため、おいのち頂戴ちょうだいつかまつるっ。」 

ニッシー「左右同時にされる突き、めれるかな?!」 

イク「ちょっと! なにやってるの!?」 

ワクワク「こんな子供の突きなんて、つるぎくまでもないよ!」 

ワクワクが、身体からだ半身はんみだけ後ろに移動し、さやで二人の剣をたたとす。 

ニッシー「なっ! す・・・すごい!」 

シロ「御見事おみごとにござる!」 

イク「だから、なにやってるの!?」 

ニッシー「父上? なにって、見れば分かるじゃないですか。」 

シロ「左様さよう。ワクワクさんが、可愛かわいい妹を守れるだけの御仁ごじんなのか、ためしていたのでござる。」 

イク「そんな『記紀きき』にも『倭姫命世記やまとひめのみこと・せいき』にも書かれてないこと、やっちゃダメでしょ!」 

ニッシー「だってぇぇ。」 

シロ「大王おおきみは、ワッコのあんじておられませぬのか?」 

イク「案じてるけど、それは、ちょっと違うと思うよ。」 

そこに、若日子建吉備津日子わかひこたけ・きびつひこ(以下、タケ)がやって来た。 

系図(タケ)

タケ「大王、申し訳ござりませぬ。めたのじゃが、皇子みこたちの足にいてけず・・・。」 

イク「タケじい・・・。」 

タケ「二人とも、まろうどに対し、無礼であるぞ。」 

ニッシー「でも、タケ先生。ワクワクさんの武勇を聞けば、どれほどの人なのか、気になっちゃうでしょ?」 

シロ「左様さよう。ワッコを守れるだけのが有るのか、兄として、知っておくべき事柄ことがらぞんずる。」 

タケ「おのれを確かめたかっただけであろう? 無闇むやみ宮中きゅうちゅうつるぎくでない!」 

タケのゲンコツが、二人の頭上に落ちる。 

ニッシー・シロ「も・・・もう、しません・・・(´;ω;`)ウッ…」×2 

タケ「こまった弟子でしたちじゃ。」 

イク「タ・・・タケ爺、これからも皇子のこと、よろしくね・・・(;^_^A」 

タケ「かしこまりもうした。」 

ニック「と・・・ところで、ワッコ様には、なんと、返事かえりことします?」 

イク「そ・・・そうだね。オーカを祭祀官まつりのつかさにんじ、ワクワクをみわ国造・のくにのみやつこと共に、神宮じんぐう大神主おおかんぬしにんじよう。」 

オーカ・ワクワク「かしこ、かしこまりまして、かしこ!」×2 

こうして、二人は、伊勢いせへと戻っていったのであった。

つづく

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