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JW252 鏡を祀りし神社

【疫病混乱編】エピソード4 鏡を祀りし神社


第十代天皇、崇神天皇(すじんてんのう)の御世。

ここは磯城瑞籬宮(しきのみずかき・のみや)。

疫病の流行は収まらず、窮余(きゅうよ)の策であった、日本大国魂神(やまとのおおくにたま・のかみ)を祀(まつ)る作戦も失敗した。

溜息を吐く、崇神天皇こと、御間城入彦五十瓊殖尊(みまきいりひこいにえ・のみこと)(以下、ミマキ)。

そこに、妃の尾張大海媛(おわりの・おおあまひめ)(以下、オー)と、ミマキとオーの間に生まれた子たちがやって来た。

すなわち、大入杵(おおいりき)(以下、リキ)。

八坂入彦(やさかいりひこ)(以下、ヤサク)。

十市瓊入姫(とおちにいりひめ)(以下、にぃにぃ)である。

皇室系図(ミマキとオーと子供たち)

オー「大王(おおきみ)! これはどういうことだがね! なんで、私の娘、渟名城入姫(ぬなきいりひめ)こと『ナッキー』が、あんな目に遭(あ)わんといかんのです?」

ミマキ「ゆ・・・許せ・・・。」

リキ「おとん! 許されへんで! どこをどう見積もっても、許されへんで!」

ミマキ「リキ! それが大王に対して、父親に対して言う言の葉かっ?!」

リキ「せ・・・せやけど・・・。妹が、妹が・・・。あんまりやで!」

ミマキ「わしとて、好きで『ナッキー』を、あのような目に遭わせたわけではないぞ! これも国がため・・・。」

ヤサク「大王・・・。それは重々承知しておりまする。されど、我々の想いも分かってくださりませ・・・。」

にぃにぃ「そうさぁ。本当に悲しいさぁ。姉上は、心の病で、クランクアップになったわけさ。」

ミマキ「汝(いまし)ら・・・。す・・・すまぬ・・・(´;ω;`)ウッ…。」

ヤサク「泣いている時ではありませぬぞ。疫(やく)は収まっておらぬのです。疫を退散させるため、神社を建てましょう!」

ミマキ「じ・・・神社じゃと?」

にぃにぃ「だからよ。神様に御願いして、疫を収めてもらうんさぁ。」

リキ「その名も、鏡作坐天照御魂神社(かがみつくりにますあまてるみたまじんじゃ)やで。」

鏡作坐天照御魂神社(鳥居)
鏡作坐天照御魂神社(拝殿)

オー「祭神は、天照国照彦火明命(あまてるくにてるひこほあかり・のみこと)と石凝姥命(いしこりどめ・のみこと)だがね。」

ミマキ「鏡? 鏡を作りし、石凝姥命(いしこりどめ・のみこと)が祀られておるのであれば、天照大神(あまてらすおおみかみ)を祀るのが妥当(だとう)ではないか?」

ヤサク「別の太陽神ではないかと言われておりまするな。」

ミマキ「べ・・・別の?」

オー「天照国照彦火明命(あまてるくにてるひこほあかり・のみこと)は、天火明命(あめのほあかり・のみこと)とされとるんだがね。」

ミマキ「ま・・・待て! 天火明命(あめのほあかり・のみこと)と申せば・・・。」

オー「その通りだがね。『先代旧事本紀(せんだいくじほんぎ)』において、私の御先祖様、饒速日命(にぎはやひ・のみこと)と同一とされとる神様だがね。」

系図(尾張氏)

ミマキ「そうであったな。そして、天照大神の孫(まご)とされる御方・・・。されど、なにゆえ、鏡なのじゃ?」

リキ「おとん! 宮中で祀るため、天照大神の代わりに作った鏡は、覚えてはりますか?」

ミマキ「お・・・おう。前回の解説で漏れておったが、そのようなことがあったな?」

にぃにぃ「そのとき、試作で作った鏡が有るわけさ。」

ミマキ「な・・・なに!? 試作の鏡が有ったのか?」

オー「その鏡を祀ったのが、鏡作坐天照御魂神社(かがみつくりにますあまてるみたまじんじゃ)なんだがね。」

ミマキ「さ・・・左様か・・・。」

ヤサク「ちなみに、鎮座地(ちんざち)は、奈良県の田原本町八尾(たわらもとちょう・やお)にござりまする。」

地図(鏡作坐天照御魂神社)

リキ「今年の紀元前92年、皇紀569年(崇神天皇6)9月3日に創建されたんやで!」

ミマキ「も・・・もう9月になっておるのか?!」

オー「どうしたんです?」

ミマキ「今月の下旬には、天照大神を祀った神社も創建されるのじゃ。」

ヤサク「ああ、前回、豊鍬入姫(とよすきいりひめ)こと『きぃ』義姉上が祀ることになりましたな。」

皇室系図(豊鍬入姫)

ミマキ「その通りじゃ。天照大神の方は、つつがなく事が進んでおるぞ。あとは、日本大国魂神(やまとのおおくにたま・のかみ)をどうするかじゃ。」

オー「やはり、日本大国魂神(やまとのおおくにたま・のかみ)が疫(やく)の原因なんかね?」

ミマキ「話の流れからいって、そう考えるのが自然であろうな・・・。」

にぃにぃ「じゃあ、日本大国魂神(やまとのおおくにたま・のかみ)こと『おっくん』の怒りを鎮(しず)めれば良いってことね?」

ミマキ「鎮まれば・・・の話じゃが・・・。」

にぃにぃ「それじゃあ、みんなで御祈りしようね。」

ミマキ「お・・・おっくんに祈ると申すか?」

にぃにぃ「そうすれば、疫(やく)が収まるんでしょ? それしかないさぁ。」

ミマキ「そ・・・そうじゃな。良し。祈るぞ! おっくん、怒りを鎮めてくれぇ!」

オー「おっくん、御願いだがね!」

にぃにぃ「おっくぅぅん! おっくぅぅん!」

ヤサク「よろしく御願い致しまする!」

リキ「頼むでぇ!」

にぃにぃ「うっ!」

ミマキ「ん? にぃにぃ・・・如何(いかが)致した?」

にぃにぃ「な・・・名のみの登場だから、作者の陰謀で、疫(やく)に罹(かか)ったみたい・・・。」

ミマキ「なっ!?」

にぃにぃ「大王・・・。お許しください・・・ガクッ。」

ミマキ・オー・リキ・ヤサク「に・・・にぃにぃぃぃぃ!!!」×4

こうして、崇神天皇の皇女(ひめみこ)まで、疫病というか、作者の陰謀で命を落としたのであった。 

つづく

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