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JW208 皇女誕生記念

【孝元天皇編】エピソード11 皇女誕生記念


第八代天皇、孝元天皇(こうげんてんのう)の御世。

紀元前207年、皇紀454年(孝元天皇8)2月、孝元天皇こと、大日本根子彦国牽尊(おおやまとねこひこくにくる・のみこと)(以下、ニクル)は、先代の大后(おおきさき)を皇太后(おおき・おおきさき)と尊んだ。

それから数年後のこと・・・。

ここは軽境原宮(かるの・さかいはら・のみや)。

地図(軽境原宮)

ニクルの兄、彦五十狭芹彦(ひこいさせりひこ)(以下、芹彦(せりひこ))が来訪している。

妻の百田弓矢姫(ももたのゆみやひめ)(以下、ユミ)と、夫妻の娘、包媛(かねひめ)(以下、カネ)を伴っての来訪である。

系図(芹彦一家)

芹彦「大彦(おおひこ)! 腕で振るのではないっ! 腹で振るのじゃ!」

大彦「言ってる意味が、よく分からないんだな。」

広い庭では、芹彦が、ニクルの息子、大彦(おおひこ)に剣術を指南(しなん)している。

系図(芹彦と大彦)

それを眺めながら、ニクルたちは語らうのであった。

ニクル「義姉上(あねうえ)。今日は、如何(いかが)なされた? いつもは、芹彦兄上だけが参られるというに・・・。」

ユミ「いやぁぁ、ちょっと大后(おおきさき)に頼まれちゃって・・・。」

その傍には、大后の鬱色謎(うつしこめ)(以下、ウッチー)がいる。

ウッチー「そうだす。私が、義姉上に、お願いしたんだす。」

ニクル「なにをじゃ?」

ウッチー「初めての女の子やさかい、どうしたらええのか、義姉上に聞きたかったんだす。」

ユミ「そうなのよぉ。包媛の時、どうだったのか、いろいろ教えてあげようと思って・・・。」

ニクル「左様で・・・。では、包媛よ。読者に挨拶(あいさつ)致すが良いぞ。」

カネ「私が包媛です。『カネ』と呼んでください。それから、父上は、芹彦殿。母上は、ユミです。」

ニクル「ん? 包媛・・・。親御(おやご)に『殿』を付けたり、呼び捨てしてはならぬぞ。」

ユミ「ごめんなさい。まだ小さいから、変な覚え方しちゃって・・・。テヘペロ(〃ノωノ)。」

そこに、ニクルとウッチーの三男、稚日本根子彦大日日尊(わかやまとねこひこおおひひ・のみこと)(以下、ピッピ)がやって来た。

系図(ピッピ)

ピッピ「ちちうえ! ははうえ! 『カネ』が来ているというのは、まことですか?」

カネ「ああ! ピッピだぁ!」

ピッピ「あっ! カネ! 一緒に遊ぼう?」

カネ「うん!」

ウッチー「ピッピ! 奥で遊んでなさい。宮(みや)から出てはいけませんよ!」

ピッピ・カネ「はぁぁい!」×2

ユミ「ところで、今度、生まれた女の子の名前は、何て言うの?」

ウッチー「倭迹迹姫(やまとととひめ)だす。愛称は『トット』になりました。」

系図(トット)

ユミ「トット?」

ニクル「うむ。我(われ)は『トトト』が良いと申したのじゃが、『ウッチー』が、どうしても『トット』が良いと申すゆえ・・・。」

ユミ「ど・・・どっちも変わらないと思うけど・・・(;^_^)」

そこに、芹彦と大彦が歩み寄ってきた。

芹彦「ユミ! 水をくれい! 一休みじゃ!」

ユミ「はいはい。ちょっと待っててね・・・。」

ニクル「して、芹彦兄上・・・。大彦は、如何(いかが)にござりまするか? 筋(すじ)は良いですかな?」

芹彦「うむ! 『鼻垂(はなた)れ』は、覚えが早いっ! 良き将軍になるであろう!」

ニクル「は・・・鼻垂れ?」

芹彦「大彦にだけ、愛称が無いゆえ、それがしが、付けてやったのじゃ! 喜べ!」

ニクル「あ・・・愛称と申されましても、大彦は、文字が短いゆえ、その儀に及ばずと・・・。」

芹彦「なに!? 気に入らぬのかっ!?」

ウッチー「私は、嫌(いや)だす。そないな愛称、お断りさせていただきますぅ。」

芹彦「なっ!?」

大彦「伯父上だけ、そう呼べば、いいと思うんだな。」

芹彦「なんとぉぉ! その手が有ったかぁぁ!」

ウッチー「ほな、その手で、お願い致しますぅ。」

芹彦「うっ・・・。と・・・ところで、皇女(ひめみこ)誕生を記念して、社(やしろ)を創建するというは、まことか?」

ニクル「聞き及んでおられまするか? 左様にござりまする。」

ユミ「皇女誕生記念で、神社創建って、本邦初じゃない?」

ウッチー「言われてみたら、そうですねぇ。せやけど、大王(おおきみ)と私の・・・初めての女の子やさかい、社を建てても、ええんやないかと思うて・・・。」

芹彦「して、神社の名は、何と申すのじゃ?」

ニクル「千代神社(ちよじんじゃ)にござる。」

ウッチー「鎮座地(ちんざち)は、滋賀県彦根市(ひこねし)の京町(きょうまち)になります。」

ユミ「滋賀ってことは、淡海国(おうみ・のくに)ってことね?」

ウッチー「そうだす。その地に、猿田彦大神(さるたひこ・のおおかみ)と天鈿女命(あめのうずめ・のみこと)の夫妻を祀(まつ)るんだす。」

地図(千代神社・滋賀県彦根市京町)
千代神社(鳥居)
千代神社(拝殿)

芹彦「なに!? 猿田彦と『あめたん』を祀ると申すか!?」

ニクル「さ・・・左様・・・。」

芹彦「なにゆえ、猿田彦と『あめたん』なのじゃ?」

ニクル「そ・・・それは・・・。」

ウッチー「ロマンだす。ロマンということで、お願いしますぅ。」

芹彦「なっ!? ロマン!?」

ニクル「ち・・・ちなみに、扇(おうぎ)の形をした『おみくじ』が有るそうですぞ。」

扇おみくじ

ユミ「扇の形? おもしろぉぉい!」

ウッチー「せやけど、私たちの時代には、無いんですよね?」

ニクル「そ・・・それは・・・仕方あるまい。」

こうして、千代神社が創建されたのであった。 

つづく

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